5 昔の俺
「住菱くんはモテていたのですか?」
「俺は…どうだろう?」
自分で判断するのは難しいのであえて言わないでおく。
「住菱はモテてたよ。兄ちゃんと競ってたくらい」
「俺はモテてたのか」
郁助の回答に何度か頷いた。
「そうですよね…住菱くん、かっこいいですもんね」
「俺は昔のほうがかっこいいと思うぞ。今の住菱は変に調子乗ってるから」
「髪型なら飛鳥に言われてやってるだけだからな」
しかし、國元は首を振った。
「髪型もだけどその話し方。俺、イケメンです感が溢れている」
「なんだそれ…」
俺は國元を睨みつけた。
「昔の住菱くんってどんな感じだったのですか?」
瑞穂が緊張した面持ちで声を上げた。
「昔のすしは飛鳥ねーちゃんの真似をよくやってたな〜。瑞穂さん、飛鳥ねーちゃん知ってる?」
「それはもちろん。住菱くんのお姉さんですよね?」
「そうそう。飛鳥ねーちゃん、真面目でかっこいいだろ?みんなの憧れで…」
「昔の話はしなくていいから」
國元の話を止めた。
「特に飛鳥の話は…聞きたくない」
三人が呆けた顔をしたが関係ない。
「反抗期か?飛鳥ねーちゃんのこと大好きだったのに」
俺は拳を握りしめた。
「飛鳥はもう…昔の飛鳥じゃないから」
俺は立ち上がった。
「瑞穂、帰ろう」
「え…は、はい」
俺の後に瑞穂もついてきた。
「飛鳥ねーちゃん、どうしたんだよ…」
「いつか、飛鳥に会ってみるといい」
それだけ残して店を出た。