7 落ちぶれた
「それとも、三井財閥が安田財閥に頼らないといけないくらい落ちぶれたのか?」
俺は唇を噛み締めた。
「落ちぶれたのは俺だ。家のことを悪く言わないでくれ」
「お前が落ちぶれた?ホントかよ」
「瑞穂は両親に紹介された。俺がいつまでも恋人を作らないから心配されたんだ」
國元は大声で笑い出した。
「お前が変にカッコつけるからだろ!顔はいいくせにもったいねぇな!」
俺は顔をしかめた。
「でも、そんな紹介されただけで上手くやっていけてるのか?」
「失礼だな。俺は瑞穂のことが好きだ」
「瑞穂さんはどうよ?」
瑞穂は顔を赤くした。
「私も、住菱くんのことが好きです」
「ホントに〜?証明してほしいなぁ」
國元はにやりと笑った。
「キスしてよ」
「お前に見せるためならやりたくない」
「はぁ?じゃあ、お前は瑞穂さんのこと好きじゃないんだな」
俺は國元を睨みつけた。
「人に言われてすることじゃないだろ」
「じゃあ、お前は結婚式で牧師に言われてもしないのか?」
「お前に言われるのと牧師に言われるのは違うだろ…」
俺はため息をついた。
「お前さ、急に手を引っ張って走ったりして瑞穂さんへの愛が感じられないんだけど?本当に好きなのか?」
「お前から逃げるためだったんだけど?どうせお前は瑞穂を狙っていると思ったから守ろうとしたんだけど」
「とはいえ信じられないな。守ろうとしたのに結局俺に捕まってるじゃん。守るならちゃんと守れよ」
國元に睨まれた。
「何も言えないのかよ。お前が瑞穂さんと結婚なんて許せないな」
俺は唇を噛み締めた。