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「日本三大財閥が集まっちゃったじゃないか」
一時間終わりの休み時間に瑞穂と話した。
「それも珍しいですけどね」
「ほんとだよ。しかも大して金持ちでもない学校に」
俺はため息をついた。
「怖いから瑞穂は三菱に気をつけてほしい。特に二年の兄のほう。あいつ、体も態度もデカいはずだからわかりやすいと思うんだ」
瑞穂は頷いた。
「二組の転入生、財閥の息子らしいぞ」
「三菱って…ほんとにすごい人じゃない?」
「しかも兄弟いるらしい」
クラス中が騒ぎ出した。
「そういや、三井さんと安田さんも名字が…」
その声に目を見開いた。
「瑞穂、どうする?」
手を握って小声で聞いた。
「知られてしまうのでしょうか…私達の家のこと」
瑞穂は息を飲んだ。
「嫌なら聞かれても否定するしかない」
俺も顔をしかめた。
なんとか何も聞かれずに一日を過ごせた。早帰りで良かったと思う。
「瑞穂、早く帰ろう」
俺は瑞穂の手を取って素早く教室を出た。
「おい」
突然、肩を掴まれた。
「住菱か?お前」
俺は振り返らずに手をどかして階段を駆け下りた。
「…女を連れているのに自分勝手なやつだ」
「瑞穂、ごめん!急に走って悪かった」
「だ、大丈夫です」
瑞穂と息を整えながら下駄箱の前で立ち止まった。
「俺から逃げられると思ったか?すし」
「その呼び方…懐かしいな」
俺は諦めて振り返った。
「…まじでデカいな」
見上げれば、筋肉質のガタイのいい体をした男がいた。
「お前は細いし変にカッコつけるなって。その髪型、デコピンしろって意味か?」
「おい、やめろ…!」
俺の額に弾けるような刺激が走った。