2 三菱財閥の息子
「瑞穂ちゃんから聞きましたよ!いや~めでたいめでたい!」
弥生は自慢気に腰に手を当てて言った。
「二人の子どもが楽しみだな~。この世に最強の美男美女の遺伝子を持った人間が生まれるなんて歴史に残る出来事だよ」
「…お前は親かよ」
俺は苦笑いした。
「どうですか?何人その遺伝子を与えてくださるのですか?」
弥生はにやにやしながら瑞穂の肘をつついた。
「え、何人って…そんな具体的には…」
瑞穂は顔を赤くした。
「やめとけよ弥生。そんなこと聞かれても困るよ」
「そうだよね~ごめん」
弥生は手を合わせて笑った。
(絶対反省してないな)
俺は苦笑いした。
「住菱…だよな?」
ホームルーム終わりの休み時間に廊下を出たら突然声を掛けられた。
「ああ。だれ…ってお前…」
振り返って目の前にいた人物に目を見開いた。
「いたのか…?この学校に」
すっかりと忘れていた顔だ。成長してより分からなくなったが声を掛けられたなら間違いない。
「君を追いかけてこの学校に来た。今日転校してきたんだ」
拳を握り締めて俺の目を見つめた。
「あれ、俺殴られる?」
「え?あ、いやそんなつもりじゃ!」
ぱっと手を広げて首を振った。
「久しぶり住菱。覚えててくれてて嬉しいよ」
手を俺の前に出した。
「久しぶりだな。郁助」
俺は差し出されたその手を握った。
彼の名前は三菱郁助。日本三大財閥の一つである三菱財閥の息子だ。
彼は小学生の頃の友達だ。同じ日本三大財閥の息子として競い合うことも多かった。しかし、こいつはとにかく優しい。昔から誰よりも幼い見た目をしていて、年齢を間違えられることなんて日常茶飯事。小さくて優しくて弟みたいなやつだった。しかし、三年生の頃転校したきり会っていなかった。
(それがなぜ…)
六年ぶりに見る彼の姿。背はでかくなったけど相変わらず小さいし幼い。