13 俺のキャラメル
家に帰るなり、瑞穂は飛鳥の部屋に入った。
「住菱くん、口開けてください!」
「えっ、あー…」
俺の部屋に来て突然言われたので戸惑ったが、口を開けてみた。
「ん?キャラメル?」
「飛鳥さんの部屋にあったので…勝手に住菱くんにあげちゃったけど」
瑞穂は申し訳なさそうにした。
「大丈夫だよ、これくらい。ありがとう」
俺は笑顔で言った。
「というか、それ俺のなんだけど」
「えっ!?」
瑞穂は目を丸くした。
「勝手に盗まれてたか。俺のだから瑞穂も食べていいよ」
「では、いただきます」
箱からキャラメルを取った瑞穂の手を掴んだ。
「?」
「ちょっと貸して」
俺はキャラメルを受け取り、中身を出した。
「はい、口開けて」
「住菱くんまで…」
瑞穂は目を閉じて少し口を開いた。
(…無防備だな)
目を瞑っているので少し意地悪しようとおも…
「あたしのキャラメルどこ行った!?」
突然、扉が開かれた。
「は!?ちょっと、なにしようとしているんですの!?」
硝樺が俺達を見て顔をしかめた。
「うるさいな…」
俺はため息をついた。
「…食べる?」
「え、あ、はい」
食べさせるのではなく、手のひらに乗せて渡した。
「もしかして、それキャラメルでしょ!」
飛鳥が俺たちを指差した。
「そうだよ。てか、これ俺のだから」
「え!?…ああ、そうだったな」
飛鳥は目を逸らした。
「あたしたち、着替えてくるから」
「おい!待てよ!!」
部屋を出たら二人の姿はなく、扉が閉まる音がした。
「瑞穂も行ってきな」
俺は頭をかいてため息をついた。
「は、はい…」
瑞穂は苦笑いして部屋を出て行った。