8 浴衣姿
花火の会場に行くため、今度は俺も着替えた。
(やはり三人は長い)
呼ばれるまで扇子で遊んでいる。
「準備できたよ〜」
飛鳥に呼ばれて部屋を出た。
「あ、住菱くん!」
瑞穂が俺のほうに振り返った。
「おお…可愛い」
淡い水色にピンクの花が散りばめられた可愛らしいデザインの浴衣。ふんわりまとめられたアップスタイルの髪に白い花の髪飾りが華やかに彩っている。
「硝樺も可愛いよ」
白い髪や薄いグレーの瞳とは真逆の黒い浴衣だった。しかし、散りばめられた白い花は夜空を彩る星のように輝いている。
「突然なんですの?あなたに可愛いと言われても嬉しくありませんわ」
腕組んで顔を背けるがその顔は赤い。
「硝樺ちゃんは素直じゃないね〜」
飛鳥が笑いながら肩を叩いた。
「そうやって甘い言葉を吐いて乙女心をもて遊ぶなら許しませんわよ!」
「もて遊んでなんかない」
俺はため息をついた。
「硝樺さん本当に可愛いですから住菱くんも褒めてくれているのですよ」
「ほ、本当ですか?瑞穂さん…」
硝樺は頬に手を当てて瑞穂をうっとりと見つめた。
「はいはい。三人とも遅れないように早く行くよ」
飛鳥は硝樺の肩を掴んで歩き出した。
「住菱くん」
瑞穂が俺を手招きした。
「住菱くんもかっこいいですよ」
そっと耳打ちされた。
「ほんとに可愛いね」
俺は瑞穂の手を握って歩き出した。
「あたしと硝樺ちゃんで回ろう」
「え!?」
会場に着いて、飛鳥は硝樺の肩を抱いた。
「住菱と瑞穂ちゃんは二人で楽しんできて。それじゃあねー」
「え、あ、瑞穂さん!またお会いしましょね!」
飛鳥に引きずられながら硝樺は手を振った。
「…真菜さんと合流しますか?」
瑞穂が俺のほうを見た。
「でも、ちょっと二人で回らない?」
俺は瑞穂の手を握った。
「いいですよ」
瑞穂は微笑んだ。