4 忙しい女
「瑞穂さんを泣かせる訳にはいきませんわ。仕方ないですね。あなたのことは殺さないでおきます」
「うん。絶対に殺しちゃだめだ」
俺は苦笑いした。
「それにしても、落ち着かないですわ。この部屋」
硝樺は俺の部屋を見渡した。
「何か隠しているような気がしますわ」
硝樺の目が鋭くなった。
「そういえば、あなたロリコンでしたよね?そういう本を隠しているのではないですか?」
「そういう本はない。あるのは至って健全な原作の漫画だけ。あとグッズが少々」
「ふーん…」
硝樺の目は俺のことを完全に疑っている。
「まあ、そこまで聞けただけ良しとしますわ。あなたも思春期の男子高校生ですし」
「あなたも思春期の女子高校生ですよね?」
硝樺は顔を赤くして俺を見た。
「黙れですわ!何想像しているんですの!?」
「何も想像してねーよ!!」
この会話を傍で聞いている瑞穂の顔がずっときょとんとしていて可哀想だ。
「さっきから俺にばかり話して瑞穂が話についていけないようですけど?」
「み、瑞穂さん…!」
硝樺は瑞穂のほうを向いて真っ青になった。
「二人が楽しそうなので大丈夫ですよ」
「私としたことが!!瑞穂さんを置き去りにしてしまいましたわ!」
硝樺は瑞穂に抱きついた。
(ほんと、忙しいな…)
俺はその姿を見て苦笑いすることしかできなかった。
「硝樺ちゃん久しぶりー」
昼食になり、飛鳥も一緒に食べた。
「飛鳥先輩お久しぶりです」
(なんで俺の名前は忘れられて飛鳥の名前は覚えているんだ…)
飛鳥に礼をする硝樺に苦笑いした。