2 硝樺のために
「住菱くんの家です…」
『住菱?』
硝樺の厳しい声が聞こえた。
『誰ですの?住菱って』
その答えに俺は吹き出した。
「俺を忘れたのか!?」
『その声…!三井さん?』
完全に忘れられていたみたいだ。
『あなた住菱って名前でしたっけ?まあ、そんなこといいですわ…って、良くないですわ!!』
一人で落ち着いたり驚いたり忙しい人だ。
『瑞穂さん、いつの間に名前で呼んで…!しかも隣にいるのですか?』
「いますよ。代わりますか?」
『いえ、結構です。それより、どこに行けば瑞穂さんに会えるのですか?』
瑞穂は俺のほうを見た。
「俺の家だ」
『は?あなたの家に瑞穂さんが居るとでも言うのですか?』
「だから居るんだよ!」
硝樺は息を飲んだ。
『信じられないですわ!瑞穂さん、大丈夫ですの!?』
「大丈夫ですよ」
『瑞穂さんが心配ですわ!ちょっと三井さん!あなたの家はどこですの!?』
瑞穂の話もまともに聞いていない。俺はため息をついた。
「とりあえず六本木ヒルズに来い。迎えに行く」
『六本木…!わかりましたわ』
そう言って電話を切られた。
「硝樺のために行くか」
「そうですね。まさか私の家に来ていたなんて」
瑞穂は苦笑いした。
「硝樺さん!」
銀髪のツインテールに瑞穂は手を振った。
「瑞穂さん!お久しぶりですわ!」
走って駆け寄ってきた硝樺は硝樺の手を握った。
「私の家に行ってくれたのにごめんなさいね」
「瑞穂さんが謝ることではありませんわ。私が勝手に行ったので。それより…」
硝樺は俺を睨みつけた。
「どういうことなんですの?家に居るって」
俺はため息をついた。