神の器の作り方
えっ・・・
いきなり帝釈天の前に攫われた。
正直、神としてどうなんだ?と思った。
人の都合を考えずに、勝手な事ばかり言う
話を聞くまで、僕はそう思っていたんだ。
「古の時代は、神の存在は絶対でした。近年では感謝と祈りどころか、民は神の声を、昔ほど望まなくなった」
困った時の神頼み・・・
勝手な事ばかり言っていたのは人間かも
僕は、恥ずかしくて目を伏せた。
「しかし、神は、人間に求められたら、言葉を届け無ければならないのです」
人間は、勝手で我儘なのに、
見捨てないなんて、神様達は凄いと思う。
でもね、ちょっとで良いから
こちらの都合も聞いて欲しいんだよ
「神代は代々、器を継承し、人と神を繋ぐ家系なんです」
僕が人と神を繋ぐ存在なら
僕は、話を聞いてもらえる関係を
築かなくちゃいけない筈だ。
僕は、自分の役割に背筋が伸びた。
「神代の宮司は古き時代より、神と誓約をしているのです」
家系なら、僕もいずれは
神社を継ぐ事になるのだろう。
僕は、現実の重さに拳を握りしめた。
「如何なる理由があろうとも、その役目を降りる事は出来ないのです」
しっかりしなければならないな。
僕は、皆が幸せになる為なら頑張れる
僕は、逃げたい気持ちを振り切った。
「悠でしたか?器の作り方は知ってるか?」
帝釈天は、名前を覚えてくれた様だ。
器と呼ばれるのは、自分が存在しない様で
気分が悪かったのでホッとした。
「わかりません。何か、特別なのですか?」
儀式などがあるのだろうか?
知らないと素直に答えたら、
帝釈天は頷き
「話すと長くなりますね。ついて来なさい。部屋を移りましょう」
と言って、先に部屋を出て行った。
ついて行っても良いのか、
一瞬迷ったけど、よく考えたら
帝釈天は本来『正義と秩序』の神様だ。
僕に対しての悪意は無い。
帝釈天に通された部屋は、
一見、何の変哲もない部屋だった。
幻世の家と似ているけど、
こちらには、畳の部屋がある。
「こちらに座りなさい」
帝釈天が案内した、畳の部屋のあちこちに、
お札が付いているのは気になるけど、
天界とは、そんな感じなんだろうと
勝手に納得して、座った。
「ふむ、何処から話そうか。天童、居るなら茶と共に、アレをこちらに準備なさい」
帝釈天は、僕の正面に座り、天童という天使に何かを準備させた。
天童は、僕を見てペコリと頭を下げて
お茶を出してから下がって行った。
「悠、とりあえず慌ただしく迎えて、済まなかったですね」
帝釈天の表情が、柔らかくなっている。
僕が、素直について来たからだろうか?
「今から話す事は、人の感情的に少し驚く事もあるでしょう」
器の作り方って、禍々しい事なのかな?
それなら知りたくないかも・・・
僕は、ちょっと不安になった。
「一旦、お茶でも飲んで落ち着いてから話を再開しましょう」
帝釈天に勧められ、お茶を飲んだけど、
普通に美味しい日本茶だった。
お茶を飲んで、少しホッとしたからか
先程感じた不安は無くなった。
「悠も、神代の器、いずれは知る事です」
そう言って、帝釈天は茶を一口飲み、
僕に神代家の継承を語り聞かせてくれた。
「神代の本来の力は、代々、男が強く継ぐ力です。なので男から次世代に繋ぐのです」
そうなのか、歴代最強の母ちゃんは
もしかして特殊なのかな?
「神力が強い者が当主となり、神と誓約を結ぶ事で力を強化し、次世代へと繋ぎます」
神様との誓約って、なんか凄い
どんな内容なんだろう?
「もしも、直系に女性しか生まれなかった場合には、家系の中で、一番神力が強い者が神と誓約を結び、次世代に繋ぎます」
基本的に、女性は神力が強くないのかな?
だとしたら、
やっぱり母ちゃん特殊なんだな
——母ちゃんやっぱりヤバいね
僕は、ちょっと苦笑いをした。
「稀に女性でも、一族の誰よりも強い神力を持つ場合があります」
——あ、それ、母ちゃんの事だ
「先に伝えた様に、神代の力は、神代の男子からしか受け継がれないので、当主が男子ならば気にしなくてもいいのですが・・・」
——え、なら僕は?
母ちゃんから受け継いでいないなら
僕の能力は、誰から受け継いだの?
「女性を当主にして繋ぐ場合は、子に力を繋ぐ為に、一族の男の中で、女当主に次ぎ、神力の強い男に『神を下ろし』子をなします」
——ちょっと待って?
ちょっと・・・待って・・・
「この場合は、器に足りない者に強引に神を下ろすので『混ざり』があり、次代の器としての格は、かなり下がります」
——『混ざり』ってなんだよ
神を下ろすって、どういう事?
母ちゃんの次に強いのは、爺ちゃんだけど
——爺ちゃんは、今も当主だ。
僕の頭の中はぐるぐると回るけど、
全く考えがまとまらない。
混乱する僕をよそに、帝釈天は話を続ける
「器を産んだ女は、その後は神使となって、結婚などはせずに、生涯神と神器に仕える事となります」
母ちゃんが昔、神社を継ぐ事を
爺ちゃんに反対されたって言ってた。
だから、母ちゃんは当主じゃない。
——じゃあ、僕は何で神器なの?
「悠は『混ざり』が少なく、神力もかなり強いです。格が高い『神に近い器』なのです。先代もとても優秀なのでしょうね」
——どう言う事だ?
辻褄が合わない。
母ちゃんは、強いけど、当主じゃない。
母ちゃんからは力を受け継げない。
僕は『混ざり』が少なくて『神に近い器』
「ねえ、帝釈天、男が神器なら、力が繋げるんだよね?」
ちょっと、整理してみよう。
——冷静になるんだ。
「そうですよ。悠は立派な器で、男なので何人でも、子を儲けてください。きっと優秀な器の素養を持つ子が、沢山生まれますよ」
男は、普通にそのままなんだね?
「もし、女から器が生まれるとしたら、その女の相手は、必ず神を下ろしているの?」
僕の質問に、帝釈天は僕が家の事に
興味を持ったと思ったのだろう。
「基本的には、そうなりますね」
帝釈天は深く頷き、何でも聞いて来なさい
とでも言う様な顔をしている。
「だとしたら、一族以外でもあり得るの?」
他にも『神を下ろす』人が居るのかな?
「無いとは言えませんが、一族以外だと、更に器としての、格が下がりますね」
器の格ね・・・
「一族に力が強い女がいたとして、僕以上の神力と器の格を作る事は可能?」
僕は、確信に踏み込んだ。
「ふむ、勉強熱心で何よりですよ。一族存続の為にも素晴らしい探究心です。何にでも例外は有りますので、可能では有りますよ」
帝釈天は、ウキウキしながら答えてくれた
「例外って、どんな事?」
僕は、緊張して息苦しくなってきた。
——知りたい?
——知りたくない
「例えば、女の神力が異常に強く、神を受け入れる器として存在する場合に限りますが」
——-母ちゃん
「神が自ら、子をなす事も可能です」
僕の頭の中に、幾つかの光景が思い出された




