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アマビエに看病されました 

手が6本顔が3つ、誰だったかなぁ?


深い眠りから覚めて、微睡んでいたら



「・・・きて、起きてください」



何やら耳元で小さな声がする。

頬を突かれている?


母ちゃんにしては

随分優しい起こし方だ




「・・・まだ寝る」




「ダメ、オキルニャ!」



ん?知らない声だ


僕は目を開けて見た。

すると、目の前には小さな黒猫がいた


やばい、いつのまに部屋に入った?


僕は慌てて猫を掴み、

勢いよく起き上がった


「ミャッ」


子猫は驚いて鳴いたが、

我が家は、ペット禁止なんだ。



とりあえず、猫を掴んで懐に閉まった。


あれ?懐?


着ている服を見たら、

神社の清掃の時に着る作務衣だ。


何でこのまま寝たんだ?と思った時



「目が覚めたかナ?」



と、声がして


シャッとカーテンが開けられた。



「・・・は?」



そこには、髪が長くてクチバシがある

人とは呼べない、よくわからない者がいた



「どっか痛いとこなイ?大丈夫かナ」



ソレは心配そうに、顔を覗き込むけど、

クチバシが刺さりそうで、ちょっと怖い


「痛い所は・・・イテッなんか頭にでっかいタンコブが・・・」


なんでこんなのあるんだ?


「あー、ソレは転移のトキに、転んデぶつけたのかナ?」


転移?死んだのか?


「あの・・・あなた誰ですか?」

そしてここはどこ?


「あー、説明は後からするネ?とりあえずアタシはアマビエのなみこ。よろシクね」


アマビエ・・・あ!妖怪の?


「アマビエ・・・なみこさんは、妖怪?」

何だっけ?疫病の神?


「あレ?知らなイ?一時流行ったんダヨ?アタシは疫病退散の半魚人の妖怪ダヨー」


アマビエは白衣の袖をまくり


「ホら、鱗あるでシょ?見て!足も3本あるんだヨ!いーでショ?触ってみル?」


なんだろう、彼女?は穏やかなのかな?


「アマビエさんは・・・」

医者なのかと聞くつもりだったのに


「なみこで、呼び捨テでイーヨー」

と、遮られてしまう


「なみこ、ここはどこ?黄泉の国?」

頭打って死んだのだろうか・・・


とりあえず、状況が何も分からない


見ず知らずの、ベッドの上にいる事は、

とりあえず理解した


「ここはね?幻世の病院ダヨ。キミは間違いダッタの」


ゲンセイ?間違い?


「どんな字を書くの?間違いって?」


あれ?妖に字を聞いて分かるのか?


「キミはニホンジンだヨね?それなら分かるヨ!あのね?マボロシのヨだよー」


なみこはちょっと話し方が、

賑やかだから、力が抜けてくる



「幻の世界って事?」


幻って事は、やっぱり死んだのかな?

僕は直前の記憶を思い出していた。



「うんそーダヨ。カミ様が作ったの」


なみこはスゴイでしょーと

僕に自慢して来た。


それじゃあれは・・・お迎えだったのか?

アイツのせいで頭打ったよな?


あの男、もしかして死神だった?


僕は、人生を終えた実感が湧かないからか

目の前のなみこが明るいからなのか?



——なぜか、負の感情は全く湧かなかった



「これ、なみこ、旅の方にちょっかいをかけるで無い」


「そうですよ、倒れたばかりなのに、あまり疲れさせてはダメよ」



部屋の入り口から、なみこに注意しながら

ひと組の男女が入って来た



「翁、媼、丁度良かっタ、この子何も知らないみたイだかラ・・・」

なみこは、2人に場所を譲った


——-人間?翁と媼と呼ぶには若いよな?


2人は雰囲気は、喋り方のせいか、着物姿がしっくりしているせいか、爺ちゃんくらい落ち着いて見える


けど、見た目はかなり若い。

しかも、美男美女だ。


「初めまして、私は『道祖神』の翁だよ」

「私は翁の対の媼です。貴方のお名前は?」


2人は優しく笑みを見せながらくれたけど、


——今、神って言った?


「えっと、僕の名前は、神代 悠です」


神様?今から罪を裁かれるのかな?

悪い事はしてないと思うけどな


「ハルカ君なんだネー」

「なみこ、口を出すでない」


なみこは、翁にまた注意された。

爺ちゃんと僕みたいだ


「悠で、いいか?急に知らない所に連れて来られて不安よな?ちょっと、爺の話を聞いてくれるか?」


翁の穏やかな語り口に、僕は頷いた。


「ここは日本では無い。幻世と言うマボロシに包まれた、そうだな・・・隣の世界なんだ」


幻の世界?あの世とは違うのかな?


「もしかして、僕って、生きてる?」


どっちなんだろう?


「ちゃんと悠は生きとるよ?何で、死んだと思ったんだ?」


生きてた!良かった。

なんだよ、びっくりしたなぁ


「眠る前に、手が6本で、顔が3つある筋肉ムキムキに襲われたから・・・」


あ!母ちゃんあの後、どうなったんだろう

まあ、でも母ちゃんだし、大丈夫かな?


「ああ、そうゆう事か・・・そうか」


翁はひとりで納得して、項垂れている

媼が、背中を撫で慰めている


「あの、僕を襲ったアレもしかして・・・」


死神じゃ無いなら、もしかして

どこかでみたとは思ったけど・・・


「阿修羅様だよ。そうか、悠は神器だったのだな・・・済まなかったな」


翁は酷く落ち込んだ様子だ。


—-やっぱり阿修羅だったのか


頭の中には、何度も仏像がよぎっていた

そんな訳ないと、否定していたけど。


「えっと、僕が神器って何の事?神器の玉なら、うちの神社に奉納されてるよ?」


神庫に収めてあるけど、

僕が神器?なんのこと?


「ん?悠は神社の子か?そうか・・・」


翁は悩ましい顔をして考え込んでいる

何か問題でもあるのかな?


やめてよ、怖いじゃん


「神社は、何か関係あるの?」


代々伝わる能力のせいとか?

爺ちゃんと、母ちゃん強いもんなぁ


「いっぺんに話すと混乱するといかんよな。とりあえず、ここの話世界のをするかな」


んー、理由を知りたい。でも相手は神様だ。

怒ると怖そうだし、とりあえず黙って聞こう



「ここは、古の時代より日本に生息していた妖や神獣、八百万の神が暮らす世界だ」


日本の国限定なんだ?なんで?


「古来、日本人は神々を近くに住まわせて、妖達とも上手く共存していてな?あの頃は平和だった」


翁と媼は穏やかな顔だ。

平和か、今は違うのかな?


「いつからか、欲深い人間が増え、神々は利用される様になり、気づいた時には純粋な祈りは届かなくなった」


うわ、身に覚えがありすぎて

ちょっと耳が痛いな・・・


「信仰を失った八百万の神は、次々力を失い神獣すら弱った。造化三神様の皆様は心を痛め、弱き者が"安心出来る世界"を与えてくださったんだよ」


そうなんだ・・・

神様って世界作れちゃうんだ、凄いな


色々質問したいけど、 

口を挟まない方がいいよね?


「妖共は・・・今の日本は発展したろ?ずっと灯りが灯ってるから"逢魔が時"の結界が上手く働かなくなってな」


『逢魔が時』爺ちゃんから聞いた事ある

日没直前の"妖が現れる時間帯"だっけ?


「妖達は、出れなくなったの?」


だとしたら、困るよね


「たとえ結界から出れても、今の日本じゃ、穏やかな妖は上手く馴染めない」


あー、確かに神様や妖に、都会暮らしは

ちょっと合わなそうだよな


どっちかって言うと、田舎に居そうだもんな



「今だに残ってる妖らは、人にとっては良く無い物が多いのかもしれん」



近頃は人も殺伐としてるけど

何か関係あるのかな?



「八百万の神だけじゃ無く、妖や神獣も、今は幻世に逃げて来ている状態なんだ」



なんか、人間の都合で住み難くしたなら

申し訳無い気分になるな



「ここに来て、皆、元気になれたの?」


皆、弱っていたんだよね?大丈夫かな



「ここは、神力が常に流れているから、今では皆元気になって来たよ。悠は心配してくれたのかい?ありがとうね」


翁は目を細め優しく笑い、

僕の頭を撫でてくれた。


——僕17歳なんだけどな


「それで、僕は、何でここに居るの?」


そろそろ理由が知りたい


「そうだな、話はしたいがここは病室だ。身体に問題ないなら、一旦外に出ないか?」


そうだった、ここ病室だったよな?


「身体は全く問題ないよ。タンコブを触ると痛いくらいだよ」


僕は立ち上がり、腕をぐるぐる回す


「ははは、そうか、元気そうで何よりだ、では行こう。ついておいで」


翁の半歩後に媼は続く。

媼は控えめなのか余り喋らなかったな?


「悠またネー!」


僕は、アマビエのなみこに見送られ

道祖神の翁と媼の後に続いて外に出た。




思っていた以上に、厄介事だと知ったのは



———それから直ぐの事だった


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― 新着の感想 ―
まさか襲ってきたのが阿修羅でだったとわかり、そりゃ強いわと納得しました! そしてコロナの頃からお世話になったアマビエ様が看病ときて、すごくワクワクが止まりません! ほんとここからどうなっていくのか楽し…
まさかあの男が阿修羅だったとは! そりゃ誰でも知ってるよね。 物語の導入部分がテンポ良くていいですね。 面白かったので、ブクマさせて頂きました。
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