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神さまの器〜母ちゃんと僕と、ときどき阿修羅〜  作者: 黒砂 無糖
共に暮らす仲間達の悩みと葛藤
15/60

黒い月  

黒い羽根、カッコいいなぁ



——大至急来てくれ



阿修羅から緊急連絡が届いた。


珍しい事もあるもんだなと

俺は早急に転移し、指定された場所に向かう



「誰もいないじゃないか」



大至急と言うから、急いだのに

指定された場には、当の本人は不在だ


「全く、相変わらず、いい加減な奴だな」


むかついたので帰ろうとしたら


「あ、カラス」


人間の女が寄って来た。

厄介だな、とりあえず逃げるか?


俺は羽を広げ飛び立とうとしたら


「もしかして、黒さん?」


と、名を呼ばれたので、飛び立つのをやめ

目の前まで来た女を確認した


——誰だ?知らんな


「黒さんもしかして忘れた?前に阿修羅が憑依していた善子よ」


善子?その名は聞き覚えがあるが


「お前が善子?えらく変わったな」


見た目も、空気感も全く別人だ。


「さすがに子供がいるからね。もう馬鹿な事はしないよ」


善子は、フッと笑う。


「人とは、随分と変化するものだな」


我々は、長い時間を過ごして居る割に

人と長く、深く関わる事は余りない。


いつだって、一瞬だ。


故に記憶に残らないから、

姿が変化したら、もう分からない


「阿修羅、黒さんだよ。ぐずぐずしないで、さっさと出て来なさいよ」


善子は、ちょっと前に

阿修羅の依代だったから記憶していたが、


ちょっと見ない間に

こうも変わるとは驚きだ


「あー、来たか?」


阿修羅は、善子の背中側から顔を出し、

彼女におぶさる様に頼り切っている。


「阿修羅よ、なんてザマだ」


旧知とはいえ、だらしない

もう少しシャキッとしてくれ


「お前に、頼みがある・・・」


阿修羅から、幻世と帝釈天の話、

それに纏わる今までの、経緯を聞いたが、


「帝釈天は、またなんでそんな余計な事」


彼の方は、正義と秩序を司る筈では?


「さあな?奴にとっては、理に沿わないらしいぞ?他の神に、幻世には"手出し無用"と通達して居るみたいだしな」


阿修羅は、ぐったりと善子に寄りかかるが

すかさず、彼女から殴られていた。


何をやってるんだか・・・


「今し方、善子と共に、手駒の奴らに制裁を加えるために往復して来た所だ」


阿修羅は、殴られた頬を撫でながら、

報告してくるが、なんとも情け無い姿だ


「それで、お前は、ただでさえ弱っているのに、神力を使ってしまったのか」


具現化すら危ういんじゃないか?


「仕方が無かった。コイツの息子が、襲われて、祝詞が聞こえた。連れ帰るつもりだったが、本人の意思で奴は幻世に残ったんだ」


善子の息子は神の器の子だと、

先程、言っていたな・・・強いのだろうか


「先程、回復した神力を使ったから、今すぐは動けないが、善子の中にいれば直ぐに回復するんだが」


阿修羅は、善子をチラッとみて


「心配だから、お前が見守ってやれ」

と、切り出してきた


わざわざ俺が見守るのか?


「ちょっと、阿修羅!黒さんだって、いきなり言われたって困るわよ」


善子・・・相手を慮るとは大人になったな


「神の器・・・悠だったか?本人はなぜ、幻世に残ったんだ?」


見守らなければ、ならない位なら、

連れ帰れば良かっただろう


「詳しくは分からないわ。でも、あの子が残るって自分で決めたんだ。だから私は、母として、息子の決断を信じるだけよ」


善子の握られた拳に、

母としての、不安と迷いが見て取れた。


「分かった。とりあえず様子を見てこよう」




俺は術を発動し、幻世に転移した。


幻世には一度だけ顔を出したが、

いまいちよく分からないので、


とりあえず、阿修羅の力を探ってみた


——見つけた



俺街外れの丘の頂きに、

阿修羅の神力を感じ取れた


俺は、悠のもたれ掛かっている木の

頭上の枝に転移した。


悠を観察するも、ひとりで何か悩んでいる


他には誰もいないのか?

周りを見る限り誰もいない様だ


とりあえず、羽下にあるポケットから

ビー玉を落としてみた。


悠はすぐに気付いたので、

俺は悠の膝上にとまった。


悠は、ビー玉を返して来たが、

俺が見つけるため印なので、押し付けた。


「くれるの?ありがとう」


悠は、平然と俺の存在を受け入れた。

警戒心が全くないのが気になるな


「・・・悩み、聞いてくれる?」


悠の話を聞くが、彼の印象はかなり穏やかだ

思考は前向きで、かなり好感が持てた。


しかし、優しさが勝り、かなり弱そうだ。


「出来ないじゃ無くて、今、やれる事からやってみるよ。聞いてくれてありがとう」


成長途中の若者の悩みは、

儚げで美しく、俺には眩しく感じた、


まだまだ成長過程の悩みだなと、

悠の元から飛び立ち


さて、悠の悩みの一端は、

どこに居るのかと、探す事にした


——見つけた


俺は、力を辿り、九尾の側に転移した

そして人の姿となり、彼に近寄った


「貴方は・・・」


汛が悩んでいた。

九尾が悩むとは、珍しい事もあるもんだな?


汛とは、何度か顔を合わせた事があるが

意気消沈した姿は初めて見た。


情けないな、阿修羅にどやされるぞ?


そうおもったが、まだ、我々よりも

年若いから仕方がないか


彼なりの考えを聞き、


「相手にも、相手なりに考えがあり、思いがある事を忘れてはいけないよ」


俺は、伝えたい事だけ口にして、

悠の元へ向かった。




あの日より、屋根から数日眺めていたが、

二人は、互いに遠慮するのか


微妙に距離がある


仕方がないな。

彼等を安定させるのも、俺の役目だ


俺は、人型となり、

庭で過ごす二人の前に姿を現した



「2人とも、まだぐずぐずしてるのか?」



いきなり現れた俺に、一瞬驚くも


「だれ?汛の知り合い?」


悠は、直ぐに平静に戻った。


先も感じたが、

悠は、得体の知れない者に出会った時に、 どうして平然としていられるのだろうか


「悠、八咫烏だよ」


汛は、俺の存在を伝えたが、

悠は、いまいちピンと来ていないのか、


「八咫烏?」


と首を傾げている。


「この間会っただろ?」


俺はバサっと肩から

漆黒の羽根を出して見せる


「あ、もしかして、3本足の!」


悠は、手をぽんと叩く。

ようやく思い出した様だ


「あの時はありがとう。僕は、神代 悠です

貴方の名前を聞いてもいい?」


悠は、無邪気に俺の名を尋ねて来た


「八咫烏、黒月」


俺は、個体名を名乗った。

この名前は結構気に入っている。


「コクゲツ?どんな字書くの?」


そんな事知ってどうするんだ?


「黒い月だよ」


光が当たらない、影の存在を表した名前だ。


「へー、黒い月か、かっこいいね」


と、にこにこしながら褒めてきた。

平和な奴だな


「そうだ、2人共って、僕と汛の事?汛のところにも黒月は現れたの?」


悠は、俺に尋ねながら、汛の様子を見ている


「そうだ、共に悩み多き若者だからな」


悠は、確かにと頷いている。

若い奴等は、悩みながら大人になるんだよ


「ウチのところには来なかったにゃ!」


猫又が、俺の足元で文句を言う。

小さくて踏みそうだ


「お前には必要ないだろ」


そもそも悩まんだろう?


「そんな事ないにゃ!」


猫又は、俺の足をてしてし叩きながら

不満を訴えていたので


「ほら」


俺は、持参していた煮干しを

猫又にひとつあげた。ま、仲良くなる為だ


「あー!お魚にゃ!黒月ありがとにゃ!」


やっぱり、悩みはなさそうだな


「小梅、良かったね」


悠は、猫又、小梅?の頭を撫でている


「お前、小梅って名なのか?」


小さな猫又によく似合う名だな


「そうにゃ!悠がつけてくれたにゃ!」


そうか、悠が付けたのか


「良かったな」


俺は、少しだけ切なさを感じながら

小梅の頭を撫でてやった。


ふと横を見ると、汛は静かに悠を見ている


まだまだ青いみたいだな


悩み多き若者達は面白いな

折角来たし、このまま共にいるとするか


黒月は、身長は汛より大きくて、着物が似合うイケオジです。阿修羅とは長い付き合いなので、たまに呑んだりもしてます


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