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僕の祝詞が発動すると 

空から降ってきたのは・・・

洗濯物を干し終わった汛が、僕の横に座る。


「そうだね、そろそろ話を付けに行かないと皆が困るよね」


汛は、庭の雑草を刈り取る

かまいたちを見ながらそう呟いた。


「羅刹の手下ってどんな奴が居るの?」


幻世に住む妖とは違うのだろうか?

僕もかまいたちの草刈りを見ながら尋ねた


「鬼火、餓鬼、鬼武者、羅鬼将・・・他にも魔獣になった神獣や、羅刹の小型分体とか」


なんか、名前からして怖そうだな


「他にもいろいろいるけど、今幻世に居るので、確認したのは、初めの4種族かな」


種族って事は、かなりの数が居るのか?


草刈りを終えたかまいたちは、

ぺこりと頭を下げて帰って行った。


「そいつら、どのくらいいるの?」


気になっていた存在が居なくなり

お互いにちゃんと話ができるな様になった


僕の問いかけに、汛は考え答えてくれた


「パッと見た感じ、50体位に見えたけど、勝手に増える奴らが居るから、数は当てにならないかもしれない」


そんなに居るんだ


「そいつらだけなら、何とかなるのか?」


前は、嵌められたみたいだけど


「基本的には低級寄りだから、全く問題ないけど、私が手を貸した事が帝釈天に伝わっているだろうから、もしかしたら格上も来るかもしれないね」


汛は、なんて事無いように言うけど


「負けるかもしれないのに、怖く無いの?」


消滅するかもしれないんだ


「私が消えても、九尾の狐は他にも居るし、減っても信仰で増えるから問題無いよ」


僕は、その言葉に驚いた。

九尾として、一括りの存在?


それを受け入れているのか


「ごめん、理解できない。したくない。だって、他の九尾は汛じゃないだろ?」


神々や妖はそんな感性なのか?


「人には理解し難いかな?私達は分霊体なんだよ。元はひとつなんだ。ぶどうがあったとして、沢山減ったら悲しいけど、一粒減っても気にしないだろ?」


そんな簡単な話じゃない!

・・・けど、価値観の押し付けは違うよな


「僕は、一粒のぶどうが減っても気付くし、悲しいよ。僕のぶどうなら尚更嫌だよ」


汛が受け入れている事だけど、

僕は嫌だよ、認めたく無いんだ


「ごめんね?悠は優しいから、私が消えたらきっと気にしてしまうよね」


汛が優しく謝るから、返って悲しくなる。

消える前提ってなんだよ、消えるなよ


「僕、汛が、消えるのは絶対に嫌だ。ねえ、僕は何が出来る?」


嫌なら、汛を守るしかないよな


「悠も付いてくるつもりなのか?」


汛は驚き、僕を見た。

尻尾がボワって広がっている


「僕自身は弱いよ?でも、穢れを祓う事くらいは出来る。だから一緒に行くよ」


低級なら、数いても浄化なら出来るはずだ。


「ダメだ、危ないからやめた方がいい」


汛は、困り顔で僕を止める。

頭の上耳がぺたんと伏せている


「でも、ひとりよりはマシだろう?」


僕が、笑いながらそう言ったら、

汛は困り顔を維持しながらながらも、

尻尾がフリフリし始めた


「悠に何かあっても、小梅が治すにゃ。悠には傷ひとつ付けさせないにゃ」


膝で話を聞いていた小梅も、参戦するらしい


「2人を守りながら戦うのは大変なんだ。だから・・・」


汛は、何とか止めようとしているけど、

僕と小梅の気持ちが嬉しかったのか


尻尾がブンブン勢いよく振られている


だから、僕は汛の言葉を遮って


「汛、助けなくていいよ。いざとなったら、小梅と逃げるから」


と、言ったら

汛は顔を両手で覆って上を向き


「悠は、1人しかいないだろう?何があったら困るじゃないか!」


と、吠えるように叫んだ


「汛、その気持ちは、僕も一緒なんだ。汛は1人しかいないんだよ。たとえ他に九尾がいても、その九尾は僕の知ってる汛じゃない」


僕は、静かに自分の気持ちを汛に伝えた。

どうか、伝わってくれ


「でも・・・悠の魂はひとつだけじゃないか」


汛はまだ、納得したくないみたいだ

尻尾が下がってしまった


「僕は確かにひとつしか魂は無いよ?僕には汛の魂もひとつだけだって思うんだ。分霊体だか分裂体だか、そんなの関係ない」


汛を、絶対失いたく無い僕は、

キッパリ言い張った。


「だから、汛が反対しても付いていく。無視したら、僕が迷子になって、もっと面倒になるから、ちゃんと連れていけよ?」


僕は、1人でもいくぞと言う気概で

そう言ってやると


「迷子・・・悠、本当にやりそうだな。分かった。連れて行くよ。でも、本当に危なくなったら逃げるんだ。約束してくれる?」


汛は条件付きで、渋々納得してくれた

よし、行ってしまえはこっちのもんだ


「分かった。約束するよ」


多分無理だけどね?


「悠・・・顔に出てるよ」


汛は、はぁとため息をついて項垂れたが

直ぐにパッと顔を上げて


「必ず守るから、2人とも力を貸して」


と、真剣な顔で願ってくれた。


キリッとした顔がイケメンで

余りの格好良さに思わず見惚れたけど


「邪魔するつもりはないから、僕達の事は気にせず、汛が思う様に動いていいからね」


と、何事もなかったかの様に答えた。





その後、数日のうちに旅支度をして

最近、襲われているとの話がある、

近くの村に、3人で向かう途中で


「羅刹は同じ、人ならざる者なのに、なんで幻世の妖や、八百万の神を襲うんだろう」


帝釈天の計画に乗って、わざわざ襲わなくても、幻世で暮らせばいいのに


「考え方が違うからだよ。羅刹の手下は、何も考えてないよ。ただ、暴れたいだけ」


なんだよ、迷惑な奴だな


「人間だってそうだろう?皆が悠みたいに穏やかなら争いは起きないはずだよね?」


それは・・・そうだけど


「帝釈天は、幻世を無くすのは、あくまでも正義だと思ってるんだ。でも、幻世からしたら正義の押し付けだろ?迷惑だよね」


汛は、面倒だと首を振る

幻世は誰にも迷惑かけてないのにね


「気に入らないなら、放置すれば良いのに」


わざわざ干渉するなんて野暮だよな


「正義の押し付けは、傲慢な行為だと思う。ここは、三神より与えられた世界なんだよ。判断するのは他者では無いはずだ。帝釈天は干渉し過ぎなんだよ」


ごもっともだ。

しかもやり方が、神様なのに汚いと思う。


話をしているうちに村に着いたが、

やたらと静まっている


「遅かったか・・・」


汛が悔しそうに呟いた。


「汛、祝詞、唱えてもいい?いい妖も消えちゃうかな?」


僕が消しちゃったら元も子もないよな


「祈る時に、悪事を働く妖だけを浄化したいと願えば、問題無いよ」


そう言われたので


僕は懐から道祖神に書いてもらった

祝詞の紙を取り出し


『高天原に神留坐す、皇親神漏岐神漏美の命持ちて』


まだちゃんと覚えていないから、

願いを込めて読むだけだ。


『筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に』


幻世に悪さをする妖を、消すのは忍びないから。元の世界に戻る様、祈り願った


『禊ぎ祓へ給ふ時、生坐す祓戸の大神等、諸々の枉事罪穢れを』


すると、僕の放つ言葉ひとつひとつが具現化し、増幅して、淡い虹色蝶の様に飛び立ち、村のあちこちに飛び立っていく


「悠・・・この力は・・・」


汛が何が言ったけど、途中で止めるわけにはいかない。


その時、


ドカン!と一棟の家が潰れ

中から、わらわらと苦しみながら

妖達が出て来た。


汛がサッと向かい、片っ端から倒している


『祓へ給へ清め給へと申す事能由由しき』


僕は集中して祝詞を紡ぐ。


三匹の餓鬼が汛の攻撃を抜けて

こちらに向かってくるのが見える


まずい、まだ祝詞の途中だ・・・


「悠!逃げろ!」


もう!後少しなんだよ!少し待ってよ!


敵は既に目前迄来ている


『天之津神国之津神、八百万神等共に、天斑駒の耳振立てて、聞食せと恐み恐みも白す』


間に合った!

神様、どうか力を貸して下さい!!



接近した餓鬼が、刃物を振り上げ、

飛びかかってきた瞬間



バリバリバリ!


っと敵に雷が落ち、



ドカッ!バキバキッ!ガラガラガラ・・・


敵は対角の家屋に吹き飛び

家屋ごと崩れ去った



僕の前に雷と共に現れる

僕は、登場の仕方に既視感を覚えた。



そして、その姿を見て驚愕した

だって、その後ろ姿はよく知っているから



・・・神に祈りが届いた様だけど



こんな話は聞いてないよ?





汛は素直じゃ無いけど、尻尾と耳が素直だから

めちゃくちゃわかりやすいです。

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