落雷と共に現れし者
神様と妖のいる、優しい幻の世界へ。
少年と弱き者達との物語、
和風ファンタジー、今始まります。
これは、神様の諍いに巻き込まれた
母と息子と神々と妖が織りなすお話です
どうぞごゆるりとお楽しみください
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
高台から見える街の景色は絶景だ。
天気を読もうと空を見た。
"北東"に不気味な黒い雲が立ち込めている
———雷雲だろうか?
でも、方角的に雨は関係無さそうだな・・・
この時、違和感に気づいていたら
あの時、あいつの話を聞いていたら
僕の母ちゃんは普通のままだっただろうか?
ジジジジジジジジィー
セミがうるさい
ジジジジジジジジィー
暑い。
日差しが、ジリジリと焼ける様に暑い
僕は今、家の古くてボロイ神社を掃除中
それなりに、由緒正しい神社だ。
爺ちゃんは、かなり強力な退魔の力がある。
母ちゃんも同じ力があるらしい。
遺伝だから、
僕も力を持ってはいるけど・・・
境内を屑籠を手にして、落ち葉や、飛来したゴミを拾っていたら、
社の裏で、倒れた子猫を見つけた。
近寄ってみたけど、動く気配がない
真っ黒な子猫は、グッタリしているけど
息はしている様だ
——熱中症かもしれない
怪我は無さそうだけど大丈夫だろうか?
本当は病院に連れて行った方がいいけど
——僕の小遣いじゃ払えないよな
どうするか迷ったけど、動物を部屋に連れて行くと爺ちゃんに怒られる。
僕は、倉庫に向かい、籠に古いタオルを詰め
境内の裏の日陰に設置した。
「えっと、確かこの辺に・・・」
一度部屋に戻ると、机の引き出しから、
実験セットのスポイドを取り出した
キッチンに向かい、スポイドを丁寧に洗う。
冷凍庫から保冷剤と、ペットボトルの水と
瓶牛乳を持ち、小さな器も持っていく
籠に近寄り覗いてみたら
——まだ居る
ボロ布の中に、子猫に直接当たらない様に
保冷剤を入れる
猫の頭をそっと支えて、器にからスポイドで吸い取った水を、ゆっくり注ぐ
水を入れたら、子猫の口が
ペチャペチャと動いてくれた。
——良かった飲んだ
根気よく何度か水を与えていたら
猫の目が開いた
黒猫と"パチン"と目が合う
猫は驚き固まるけど。
逃げる気力は無いのだろう
こちらをじっと見ている
——起きれて良かったな
僕はちょっとだけ子猫を撫でて
小さな器にミルクを入れる
ふと、猫の尻尾に目を向けると
長さが違う尻尾が、二股に分かれている。
昔に怪我でもしたのだろうか?
毛は既に生え揃っていた。
「暑いから、気をつけなきゃダメだよ」
僕がいたらゆっくり飲めないだろうから、
その場を離れる事にした。
風に乗って(ありがとう)と聞こえた気がした
あらかた掃除が終わり、
手水舎から汲んだ水を撒く、
水はキラキラ光りながら、地面に着地する
手桶と柄杓を使い、丁寧に撒くのだけれど、境内は広いから、一向に終わらない。
正直、ホースで撒きたいが、それでは意味がないと、爺ちゃんが言っていた。
水撒きには"清めの意味がある"らしい
いつもら水を撒いた後は、浄化されたのか
空気が澄み切っている。
その空気感が、昔から好きだから、
大変だけど頑張れるんだよな
「後一回汲めば良いかな?」
終わりが見えてきて、気分も良くなる
僕は鼻歌を歌いながら、再び手水舎に向かう
ザワザワザワザワ
神社の周りの木々が騒めき、
どこからともなく、冷たい風が吹いてきた
「あー、すずしい」
僕は、熱った体が冷えて丁度良いなと
思ったけど、何となく雨の匂いを感じた。
もしかして、さっきの雷雲か?
僕は、手水舎を離れ、空を見上げると
空には真っ黒な、暗雲が立ち込めていた。
「やばい!雨降って来た」
ゴロゴロと雷鳴を響かせながら
雨がドシャーッと一気に降って来た。
「あー、なんだよ降るなら、もっと早くに降って欲しかったよ」
折角水撒きしたのに、雨が降って労力が無駄になってしまった。
かなりの雨なので、さっさと戻ろうとしたら
バリバリバリ!ドドン!
と、境内に雷が落ちた
「うわっ!」
僕は驚き、咄嗟にうずくまって、
落雷の起きた場所を、薄目で確認した
濡れた地面に、バリバリと雷の余波が見えた
——何か、ある?
落雷の中心部に、かなりの高温なのか、
蒸気に包まれた塊が見えた
——隕石かな?
僕は、シューシューと、煙る物体を
確認するためにそっと立ち上がり、
一歩踏み出したその時
さぁっと風が流れ、蒸気が流れて行く
すると、そこには
手が6本生えた・・・大きな肉体の
「ひいっ!蜘蛛のオバケ!」
僕はとりあえず、手桶をオバケに投げつけ、
社に向かって走って逃げた。
「イテッ、おい、誰が蜘蛛のお化けだ!コラァ!おい、コラまて!その身体よこせ!」
蜘蛛のお化けが喋った?!
人語を話すとか、マジでヤバい奴じゃん!
身体寄越せとか、まずいまずい、
——早く結界内に入らないと!
「爺ちゃん!母ちゃん!喋る蜘蛛のオバケが出た!助けて!」
と、叫び社の中に入る
僕は血筋のせいか、昔からやたらと色々な物が寄ってくる。
ふと気付くと、側に居たりするから、
正直慣れてはいるけど
いい物だけなら楽だけど、変な奴もいる
アイツは、絶対変な奴だ!
爺ちゃんは、僕は鍛えたら爺ちゃんよりも対魔の力が強いはずだと、言っていた。
実際、何度も払った事はある。
ちゃんと"祝詞を覚えればいい"だけなんだけど、小さな頃、真似して適当にやったら、
払えちゃったから、それ以来覚えていない
普段やるように、僕は手を合わせて
「・・・かしこみかしこみ、どっか行け」
いつも、これしか言わないけど
いつもは、なんとかなっていたんだ
何かあっても大体、爺ちゃんと母ちゃんがなんとかしてくれていたから。
それなのに・・・
バターンと、風で1人でに開いた扉から
「ハハハ、逃げても無駄だ!お前、よくも、この私を蜘蛛扱いしてくれたな?」
腕が6本ある、上裸の厳つい顔をした・・・
「人?鬼?なんで裸、腕が6本ある・・・」
二足歩行・・・本当に何?足は普通にある
「あ?なんなら顔も3つあるぞ」
半裸なそいつは、左右にある顔も見せてくれたけど・・・既視感がある
「ん?顔が3つで、腕は6本・・・」
どっかで見た?なんだっけ?
「なんだ小僧、神力ある癖に、その手の話は知らんのか?」
つまらんな、と半裸な男は腕を組んだ
組んだのは1番手間の腕だ
頭の片隅に、一瞬よぎるが、
そんな事より。
なんだよコイツ、なんでこんなに
ムキムキなんだよ!
僕、めっちゃ鍛えてるのに
「お前みたいなムキムキ知らねーよ」
僕は筋肉つかないから、
羨ましいし、なんかムカつく
「まあ、いい、とりあえず身体寄越せ」
は?見た目だけじゃなくて
頭もおかしいのかよ?
そもそも、いい身体あるのに、欲張りか?
「嫌だよ、なんで知らない奴に、身体やらなきゃならないんだよ」
意味わからんし
「お前、俺の事、絶対知っとるだろうが」
いや?・・・知らないよ
一瞬よぎったけど・・・無視!
「たとえ知っていたとしても、嫌だよ」
僕が拒否すると、
「ほう、俺を愚弄するとは、お前、随分と胆力が有るな?気に入ったぞ。お前の意見など要らん。身体は貰う」
風が唸る様にビュービュー吹き出した
男の纏う空気が、さっきまでとは、
明らかに違う。
しまった。調子に乗って怒らせたようだ
まずい、体が、動かない、
——声出ない
「ほう?我が力に抗うか?クハハさあ、
小僧、いつまでもつかな?」
男は、足から順にゆっくり
僕の体に侵食してきている。
反発するのかめちゃくちゃ痛い、
気を抜いた瞬間、全て持っていかれるだろう
「くっ、くぅっ」
呼吸すらままならない
「諦めろ、すぐ楽になる」
苦しくて下を向いた時、
黒い何かが足元を横切るのが見えた
もう駄目だ!と思った瞬間、
僕の周りに、青黒い炎の様な物が、
ブァッっと立ち上がる。
——なんだよこれ?
と、気が逸れた時
グアッと僕の中に男の下半身が入り込んだ
「ぐうあぁっ!」
身体が弾けそうだ、
奥歯をギリギリ食い縛り、侵食を防ぐ。
なけなしの力で男をつき飛ばし
(母ちゃん・・・助けて!)
苦しくてぎゅっと目を閉じたら
『ドゴッ!バキ!』って音がして
男の巨体が、僕の方に吹き飛んで来た!
「このボケカスクソが!うちの息子に、何晒しとんじゃ!このド変態が!」
母ちゃんは、助けに来てくれたんだ
母ちゃんは、俺を助ける為に
あいつの後ろから、蹴り飛ばしたんだ
母ちゃんの、回し蹴りを喰らった男に
巻き込まれ頭を打って倒れ込んだ瞬間
青黒い炎は、
一気に俺を包み込んで球体となった。
「あぁ!畜生が!あの小僧、俺の力を半分持って行きやがった!」
あの男が何やら騒いでいるけれど
僕は、頭を打ったせいか
意識がスウッと遠くなってきた
「ハル!悠!ちょっと、何だよこれ!悠!」
母ちゃんが慌てている声を聞きながら
僕はゆっくりと潜る様に意識を手放したんだ
見に来ていただきありがとうございます。
次回、幻世の妖に看病されました です
怪しい男が空から降って来た時、
私の頭の中では、ターミネーターの
デデン・デ・デ・デンのリズムが流れました
悠に憑依しようとしたのは、
皆さんは誰だか分かりましたか?
分かった人は良ければ
コメントで教えて下さいね♪
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よろしくお願いします!