刀
「こちらをどうぞ」
カガリさんが二振りの刀を差しだす。
「ライフスポットでは他の参加者との戦闘になると思われます。この神社に祀られている武将、日向弥次郎が使っていたとされる二刀です。こちらをお使いください」
大事なものではないのだろうか?と気になったが、刀を受け取ってみる。
思ったより重さを感じない。どうにか僕にも振ることができそうだ。
「こちらも"精神体"のようなもので、実際には二刀とも、この世の本堂に保管されています」
カガリさん曰く、境界ではこの世に比べて、重さやにおいが半減するようだ。そういえば、雨上がりのにおいも感じにくくなっている。
「おうおう!かっこいい刀やのう!俺も欲しいのう!」
ケイが何やらはしゃいでいる。中学、高校と剣道をやってきたが、真剣を振るのはもちろん初めてだ。僕自身も昂るものを感じる。
「それでは、そろそろライフスポットが開く時間になりますので、ご案内いたしますね」
カガリさんがそういうと僕らのまわりが光始めた。そして空に飛ぶとすごい速さで進んでいく。
ズズン!!
着地するとそこは知らない街だった。東のほうに赤く光っている場所が見える。
「あちらの赤く光っている場所がライフスポットでございます。わたくしの案内はここまでです。それでは、ご武運を!」
そう言ってカガリさんは消えて行ってしまった。
僕は不安と緊張をかかえながら、ライフスポットを目指す。
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ライフスポットはどうやら公園のようだ。
近くまで来てみると2人の先客がいるようだ。壁に隠れながら様子を見る。
「ハハハッ!今回の参加者はやけに弱そうなヤツだなぁ!」
短髪の若い男のほうが嘲るように笑いながら言う。そばには灰色のオオカミが付き従っている。
「あ、あの!戦いはやめにしませんか?戦わなければ二人とも"命の水"がたまっていくわけですし・・・」
もう一人の女性が言う。同い年くらいだろうか。
そうか、双方の同意があれば、彼女の言うように戦わない選択肢もあるわけか。
だが、見るからに好戦的な男はおそらく交渉には応じないだろう。
近づいてくる男に対し、女性の方は盾とメイスを構える。
男は身の丈もある大剣を軽々と振り下ろす。
ガギィン!
女性がなんとか盾で受け止めるも、はじけ飛ばされてしまう。
「ヤバいで!あの子やられてしまうわ!」
ケイが叫ぶ。助けに行こうというのだろう。僕はそれを感じ取りケイに乗って女性のほうへ向かう。
男のもう一撃が振り下ろされる前になんとか、彼女を連れ出すことができた。
そのまま公園の外に逃げて走り出す。