K
小瓶の中には赤い透き通った液体が3割ほど入っている。
薄く光っているようにも見え、きれいな色だと感じた。
見とれているとどこからか声がした。
「よぉ!お前が健人やな?」
名前を呼ばれ、ふと目を上げると虎がいる。
・・・理解ができない。
しかもしゃべっている。
「いきなりすまんな!びっくりしたやろ?すまんが落ち着いて聞いてくれ。手伝ってほしいことがあるんや」
理解はできないが、どうやら逃げないと食べられるという状況ではないようだ。
とりあえず話を聞いてみることにする。
"ケイ"と名乗ったそいつの話によると(どうも記憶があいまいらしいが)、彼は命の危機に
さらされているらしい。このままだと近い将来死んでしまうとのことだ。
「ここへ来る前にな、変な奴が言うんや。お前は近いうちに死んでしまうとな。ただ、救済措置があるらしいんや。そのキーとなるのがこの小瓶や!」
ケイは赤い液体の入った小瓶を指さす。
「この赤い水は”命の水”って言うんやって。これを小瓶いっぱいにすることができれば俺の命は助かるんやと。ただな、俺じゃ命の水を集めることはできんらしいんや。それで君に手伝ってもらいたくてな」
ケイの話によると虎の姿は本来の姿ではなく、人間だったようだ。ただ、人間だったころの記憶は
あいまいになっているらしい。本当の彼は今もどこかで死にかけているということだろう。
非現実的な話ではあるが、人の命がかかっているのであれば見過ごすことはできない。
「僕にできることがあれば手伝うよ。それで、命の水はどうやって集めるんだ?」
気になったことを聞いてみる。ただ、ケイもまだよくはわからないらしい。2日後に近くの神社に来るようにとだけ、伝えられようだ。