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10話・わたしの何を知っているというのだろう?


 翌日。バレリーが倒れたとかで、彼女と会っていたことを知った父や祖母に「何かあったのか?」と、聞かれた。父や祖母は幼い頃の、わたし達の仲の良さを知っている。わたしが彼女に一方的に何かすることはないと思っているようだが、二人の間で何かが起きたと思っているようだった。ウォルフリックには何をした? と詰られた。一方的に自分がバレリーを害したのだと、決めつけられてそれには腹が立った。


 バレリーが倒れたなんて父達から聞かされるまで知らなかったし、彼女の身に何があったのか、わたしの方が聞きたいぐらいだ。

 女官達に聞こうにも、そのことには箝口令でもしかれているのか、誰も口を割らなかった。しかも昼餐の間に向かおうとすると、いつもは何だかんだと理由をつけて止めようとする彼女達は、この日に限って止めもしなかった。


 昼餐の場に向かうとウォルフリックがいた。その隣に座っても彼は何も言わず、無口だった。いつもとは違う雰囲気でバレリーを出迎える。

 ウォルフリックは、バレリーを気遣い、わたしにこれからは態度を改めるようにと言い渡してきた。



「何で。あたしが? この人が勝手に倒れただけでしょう?」


「周りはそうは思わない。俺達のせいだ。済まなかったバレリー」



 そう言ってウォルフリックは、バレリーに頭を下げた。



「止めてよ。リック。あんたは悪くない。大体大袈裟なのよ。ひ弱なこの人が倒れただけで、あたしのせいにされるなんて。堪ったものじゃないわ」



 ウォルフリックの腕を引くと、その手を振り払われた。



「ディジー。ここでの生活に合わせられないようなら、母さん達の元へ戻れ」



 ウォルフリックの最後通告だった。あ然とした。ウォルフリックは、今まで自分が何かしてもそれはディジーには何か理由があってした事だろうと、周囲に庇ってくれていた。その彼に言われた。



「ディジー、おかしいぞ。ここに来る前は、心優しい良い子だったじゃないか。俺の可愛い妹はどこに行ってしまった?」



 惚れた女性の前では、気の良い兄を演じたいようだ。ウォルフリックの想いが透けて見えて馬鹿にしたくなった。

 わたしの何を知っていると言うのだろう? ウォルフリックは望まれてきた者。彼の影武者のような立ち位置にいたわたしの一体、何が分かると?



「わたしはリックのこと……!」


「ディジー」



 何もかもぶちまけてしまいたい思いと、言っては駄目だという思いがせめぎ合う。彼らは何も知らない。知らない相手に言ってもどうにもならないのだ。

 その場から逃げ出すように退出して自室に戻ると、ネルケ夫人が待っていた。




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