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4話・燻る思い


 それから2ヶ月後。レバーデン大公国の継承権の改正は三部会で認められほぼ満場一致で、私が産んだ第一子が次期大公となることが決まった。貴族達の間で、一部反発の声が上がったようで心配していたが、ウォルフリックが三部会への参加を呼びかけて、足蹴く通っていた姿勢も買われたようだった。


 そして国民の皆が第一子の誕生を待ちわびる中、私は出産の日を迎えた。痛いと喚く中、夫は部屋の外でウロウロと歩き回っていたらしい。

 もう少しでお腹の中の子供が降りて来る予感がして──。赤子の泣き声が聞こえた。



「公女さまです! 公女さまがお生まれになられました」



 待望の第一子の知らせに宮殿中が湧き、城外でも民衆が喜びの声が上がった。三日三晩お祭り騒ぎとなっていたらしい。大公や大叔母さま、リヒモンド達、実家からはお祝いの品が次々届き、一室に収まらず女官達が悲鳴を上げていた。



「バレリー。よく頑張った。この子は俺達の希望だ」



 産まれた子は、ヴェリーナと名付けられた。守護者という意味を持つ彼女は、後にこの国を大いに発展させていくことになる。

 その後も次女ステラ、三女エルメリンダと私達夫婦は三子に恵まれた。子供達と触れあう中で考えることがある。今は亡き、アリアンヌ大公妃のことだ。

 可愛い盛りの我が子を前にすると、どうして大公妃はベレニスを男子と偽り、あそこまで厳しく教育してきたのだろうと思ってしまうのだ。


 ディジー(ベレニス)の髪をわざわざ黒髪に染めさせて、厳しく教育してきた。このような幼児に正気の沙汰とは思えない。


 後に大叔母さまから聞いた話だが、あの御方は二度流産を経験していたようだ。もしかしたら自分は子供が出来ても、その子供を育めない体なのかも知れないと思い悩んでいたのかも知れない。

 そこに夫が手を出した女性達が次々妊娠した。面白く思うはずが無い。大公妃という立場もあるし、話に聞く限り理想の大公妃を演じてきた彼女は、皆がもっともと思うような理由を挙げて、その裏ではディジーに対して鞭を振るって、鬱憤ばらしをしていたのではないかとさえ疑ってしまう。真相は分からないが。


 ディジーにしたことは、虐待にしか思えないし、今も大公妃が生きていたのなら、引き取ったウォルフリックに何をしていたか分からない。こう言っては何だが以前、リヒモンドが言っていたように、亡くなっていて良かったとしか思えない人だ。


 私と触れあう機会は全くなかった。それも今思えば不思議なことだ。私は仮にも公子の許婚なのだから、未来の姑と嫁として交流があっても良いと思うのに、それすらなかった。

それももしかしたら、ベレニスの身に起きている異変を私に勘ぐられて、大叔母さまに告げ口されては困ると、思っていたのではとしか思えない。



「おかあさま──。はやく、はやく──」


「おとうさまがいってしまうよ」



 ぼんやりしていた私は、手を引く8歳の長女のヴェリーナと、6歳の次女のステラの声で我に返った。今日は家族でピクニックに来ていた。大公家所有の森に、綺麗な泉が湧く場所がありそこを訪れていたのだ。


 夫のウォルフリックは、1歳のエルメリンダを抱っこして歩き、私は二人の娘と手を繋ぎ湖の畔を歩いていた。湖面がキラキラと反射して美しく、水鳥がその上を優雅に泳いでいた。護衛の近衛兵や、乳母や女官達も後に付き従う。



「おなかすいた~」


「のどかわいた」



 ヴェリーナと、ステラがそれぞれ声を上げる。



「じゃあ、お昼にしましょうか」


「「わーい」」



 子供達が我先にと、ピクニックシートが敷かれている場所へと向かう。そこでは乳母達が側付きの女官達と昼食の用意をしていた。

 遅れて子供達の元へ向かう私を気遣うように、隣に並んだ夫が見てくる。夫の腕の中では、機嫌が良さそうに笑みを浮かべるエルメリンダがいた。



「どうした? 眉間に皺が寄っているぞ」


「こんなに可愛い子達に、あなたは大公家の者だからと冷たくできないわよね?」



 私の中で燻る思いを感じ取ったのか、ちょっと待てと言って、夫はエルメリンダを乳母のもとに預けにいくと私の手を引いて、水辺に戻った。



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