2話・浮気発覚?!
「さっき、公子さまを訪ねて女性がきたわ。執務室に通されていたけど、どなたかしら?」
「止めなさいよ。誤解を生むような話は」
「だって綺麗な人だったの。公子さまとの仲が気になっちゃって……」
「あなた達……!」
「女官長」
それを聞いた女官長が、話をしていた女官達に近づく。二人は慌てて口を噤んだ。女官長の後ろに私がいるのに気が付いたようだ。
「いまの話は本当の事?」
「公子妃さま」
私の言葉に、二人は青ざめた。自分達の話が私に聞かれていたと知り、大層なことをしてしまったと気が付いた様子だ。
「本当の事かと聞いているの。嘘なの?」
「……いえ。本当です」
私の追及に、女官達は互いの顔を見合わせてから認めた。私は踵を返し、彼女達が話していた場所へと確認に向かうことにした。
「お待ち下さい。バレリーさまっ」
女官長の制止を振り切り、ウォルフリックの執務室へと向かう。するとドアの向こう側からウォルフリックと、女性の仲の良い声がした気がした。
「ウォルフリックさまっ」
意味深長な言葉のやり取りに、ノックもなしに、ドアを開けた私は面食らった。そこには思ってもみなかった相手がいた。
「どうした? バレリー。何かあったのか?」
「久しぶりね。バレリー」
こちらを見て心配するウォルフリックと、夫に似た赤毛の女性がいる。
「ディジー?」
「バレリー、話は聞いたよ。妊娠、おめでとう。じゃあ、あたしはこれで。バレリー、また後でね」
そう言って、ディジーは何事もなかったように退出して行った。
「どうした? 急に」
「……あなたの顔が見たくなって……」
罰の悪い思いをしながら、ディジーがこの場にいた事が気になった。
「ディジーはいつ、こちらに?」
「昨晩、遅くこちらに着いたそうだ。西館で世話になっているそうで、今夜の晩餐をリヒモンド兄さんや、ディジーと一緒にどうかと、誘いを受けていたところだよ」
「そうだったの」
早とちりだったようだ。ウォルフリックが執務室に女性を通したと聞いて浮気を疑ったが、相手がディジーで良かったとホッとした。
ディジーは二年ほどの交際期間をおいて、ようやくリヒモンドと婚約することになった。ディジーはあれから隣国に渡って両親にリヒモンドとの事を伝えると、父親が難色を示したが、それは遠くに娘を嫁にやりたくないといった心境だったらしく、母親がそれではレバーデン国に引っ越して、花屋をやればどうかと持ちかけたらしい。父親もそれならばと、渋々認めたそうで、二年前にはこの国へ養父母達と共に、ディジーは引っ越してきていた。
「しばらく顔を見てなかったが、痩せたか?」
「あなたも少しやつれたのではないですか? お仕事が大変ならお手伝いしますわ」
座らないかと促されて、三人がけのソファーに腰を下ろすと、隣にウォルフリックが座ってきた。




