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61話・最終話・リヒモンドのお願い


「良いな。バレリーは。頼れるお兄さまが側にいて」


「ディジーにも、お兄さまがいるじゃない?」


「ウォルフリックとは兄妹のように育ってきたけど、兄というよりは手のかかる大きな弟のようだったよ」


「ディジーは、しっかりしているものね」



 ディジーとは、彼女の素性がバレて以来、二人で会うときは以前のような口調で話していた。まるで10年前の失った日々が戻って来たようだ。



「バレリー。ちょっとお願いがある」


「何でしょう? お兄さま」



 いつになく緊張したリヒモンドの様子に不審を抱くと、ディジーもまた何か察したようで緊張していた。



「少し、ディジーとの時間をくれないかな?」


「えっ?」



 リヒモンドの耳は赤くなっていた。何か始まろうとしている。ひょっとしたらディジーに何か伝えたいことでも? 下手な勘ぐりになってしまうが、兄思いの私は気を利かせてその場から退出する選択を取った。



「分かりました。じゃあ、ディジー、私先に宮殿に戻っているね」



 足早にその場を去ることしか考えられなかった。いつの間にあの二人が? もしかしてかなり前から? そういう思いがぐるぐる頭の中を駆け巡る。宮殿の中に入っても前方を気にしていなかった為、誰かにぶつかってしまった。



「あ。ごめんなさい」


 顔をあげると、焦げ茶色の瞳が身を屈めてきた。



「バレリー。大丈夫か?」


「大丈夫です。ウォルフリックさま」


「ディジーを見かけなかったか?」



 どうやら前方不注意だった私は、ウォルフリックとぶつかってしまっていたらしい。



「ディジーさまならリヒモンドさまと……」


「あ。じゃあ、いい」



 邪魔しちゃ悪いからな。と、リヒモンドは言った。



「ウォルフリックさまは知っていたのですか?」


「何を?」


「リヒモンドさまの気持ちを……」


「ディジーの想いではなくて?」


「ええ?」



 二人で相手の発言に驚く。



「ちょっと良いか?」



 ウォルフリックさまが気兼ねなく話せる場にと、連れてきたのは自分の執務室だった。



「リヒモンド兄さんは、ディジーのことを好きなのか?」


「多分そうだと思います。ディジーもリヒモンドさまを想っていたのですか?」


「ああ。あいつは分かりやすいほど、リヒモンド兄さんを気にしていたよ」


「知らなかった……」



 ふと、窓の外を見ると照れくさそうに腕を組んで庭を歩いている二人の姿が見えた。



「どうやら上手くいったようだな」



 二人は両思いだったらしい。窓を見つめる私の背後に、ウォルフリックが並ぶ。外の二人は何やら耳打ちして楽しそうだ。10年前のウォルもリヒモンドと親しかったけど、このような結果になるとは思いもしなかった。



「俺達も合流しようか?」


「そうですね」



 お互い顔を見合わせ、悪巧みの笑みを浮かべる。たった今、誕生したばかりのカップルを冷やかしに行こうと誘われて、エスコートの為に差し出された手を取った。




※ここで完結しますが、番外編として後日談を投稿予定です。

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