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60話・リヒモンドの今後は



「リヒモンドさま」


「やあ。バレリー。ディジーもよく来たね」



 そこで思った通り、彼は薪割りをしていたようだ。汗ばんだ首元を拭うように、首にかけたタオルで拭いていた。



「いま、お茶を入れるところだ。飲むかい?」


「勿論です。あのスープはありますか?」


「バレリーはあれが気に入ったのかい?」



 笑いながらリヒモンドは私とディジーに、石釜にかけていた鍋の中のものを振る舞ってくれた。ディジーは手渡されたカップの中身を見て目を見開いた。



「懐かしい~」


「そうだろう? ディジー、きみもよく好きで飲んでいたきのこスープだよ」


「覚えてくれていたのですね?」


「当然だよ」



 リヒモンドに、ディジーが微笑む。10年前まで、何度となく目にした光景がそこにあった。私はディジーと再会してから、このようなシーンを望んでいた。

 ディジーとリヒモンドと、あの日々を懐かしみたかった。それが叶ったのだ。



「私もこのスープが気にいったので、修道院にいた頃に何回か作ろうと挑戦したことがあるのですよ。でも、この通りの味にならなくて残念でした」


「ああ。キノコの種類が違ったんじゃないか」


「キノコの種類?」



 リヒモンドの言葉に疑問を抱くと、ディジーが教えてくれた。



「キノコといっても皆同じじゃないよ。土地によって生えているキノコに違いがあるの」


「こちらの気候と、きみがいた修道院とは気候が違うからね。キノコの品質も違っていただろうね」


「そうなの? てっきり見た目が同じだから一緒かと思っていた」


「バレリーらしいね」



 クスクスとディジーが笑う。世間知らずといいたいのだろう。でも、よく10年前もこのように「バレリーらしい」と言ってディジーが笑っていた様な気がする。馬鹿にされていたのだろうか? と、思うより前にディジーが言った。



「バレリーには、そのままでいて欲しいな」


「そうだね」



 リヒモンドが同意する。その言葉にはどのような意味があるのか分からないのは自分だけ。ちょっとだけ仲間はずれにされたような気分だ。



「そう言えばリヒモンドさまは、ヘッセン家の長男だと知れたのでしょう? 今後はどうするの?」



 私が聞くに聞けないことを聞いたのは、ディジーだった。



「どうもしないよ。真相は明らかにはなったけど、私自身は何も変わらない。前大公ロアルドさまから、我が子として認知されているから、今後も大公弟して生きて行くしかないさ。次期大公夫妻を宰相としてお支えしながらね」



 リヒモンドは自身の実の両親が知れても、ヘッセン家とは今まで通り距離を置いていた。両親も彼に対して特に何かすることはないようだ。彼は宰相となることが決まったので、父は仕事柄触れる機会もあるせいか普段通りの態度で接していた。彼もまた、それを望んでいるような感じがあった。




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