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45話・ベレニスはすでに記憶を取り戻していた??



「あいつは大公夫人が目の前で亡くなったことでショックを受け、記憶喪失になった。医師の診断も受けているし、そこに嘘はないと思う」


「じゃあ──」


「でも、その直後に記憶を取り戻していたのではないかと俺は考えている」



 ウォルフリックは隣国で自分達と暮らし始めた頃には、ベレニスの記憶は、すでに戻っていたのではないかと疑っていた。



「親父達の前では人見知りに徹して、側に近づくのを避けていたように思う」


「大叔母さまに、記憶喪失ではなくなったことが発覚するのを恐れて?」


「俺と二人になった時に気が抜けて、リヒモンド兄さんの話題を無意識に口にしていたのだろうな」



 彼の推測によれば、ベレニスは記憶を取り戻した後も、周囲の目を欺き、記憶喪失を偽ってきたことになる。



「彼女はどうしてそのようなことを?」



 仮に記憶が戻っていたとしても、孫の危険を遠ざけようとして隣国に渡らせた大叔母のことだ。記憶が戻ったことを喜びはするだろうが、それによって彼女をどうにかするとは思えないが。



「ディジーは、大公夫人を危険に晒して命を奪った相手の顔を知っている」


「……!」



 大叔母が危惧していたことだ。相手には見当が付いているが、彼女が相手の顔を見ていると。もしかしたら彼女は復讐する為に──?


 同じことをウォルフリックも考えているようだ。



「ここに来てからあいつは、不安を訴えてくるようになった。感情の起伏が激しいような気がして、落ち着かせるためにも出来るだけ側にいようとした。でも、今思えばそれすらあいつの芝居だった気がしてならない。きみを嫌い、わざと遠ざけるために」


「わざと?」



 それは何かから私を遠ざける為だったと聞こえた。



「こう言っては何だが、きみたちヘッセン家の者達とネルケ夫人とは仲が悪いだろう?」



 こちらの反応を伺うような言葉に、まさかと言う思いがこみ上げてきた。



「ネルケ夫人に近づく為?」



 ネルケ夫人はリヒモンドを大公の座に着けるべく、養父の力を借りて反大公派を集めていた。私と親しくしていれば、大公派だと見なされて夫人に警戒されていただろう。



「じゃあ、ひったくりの件もベレニスが?」


「ひったくりって?」


「ウォルフリックさまは聞いていませんか? ベレニスがネルケ夫人と親しくなったのは、街中で夫人がひったくりにあい、擦られたバッグをベレニスが取り返したのがきっかけだそうです。そのお礼にネルケ夫人が出向いてから親しくなったとか」


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