表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/88

38話・公子として育てる意味はありましたか?



「それでベレニスを引き取って育てたのは分かりましたが、公子として育てる意味はあったのでしょうか?」


「ウルガーにはその頃、懇意にしていた相手がいた。花街で一番人気の娼婦よ。彼女を水揚げして公都の外れに屋敷を与えるくらい夢中になっていた。その女性の存在は秘されていた為、私やアリアンヌが事情を知った頃には遅すぎた。ネルケの出産が近づく頃に、その女性は男児を産み落としていた」


「そこでその愛人と、その赤子の存在を知ったアリアンヌさまはベレニスとの入れ替えを画策した?」



 大叔母は分からないと、首を横に振った。



「それもアリアンヌが乳母に指示した事よ。出産したばかりのネルケから子供は取り上げて、彼女には男児を産んだと言いくるめた。アリアンヌとしては石女としてクランチオ侯爵一派からは馬鹿にされていたし、意趣返しの意味もあったのかも知れない。彼女の大公妃としての矜恃もあったのだと思うわ。『お前の義娘が産んだ子を自分が育ててやっている』というね。そのおかげかクランチオ侯爵派はめっきり大人しくなったわ。アリアンヌが育てている赤子は侯爵にとって義娘が産んだ子でもあるし、その孫がアリアンヌの手元にある。人質でも取られているような気になったのね」



 私は話をここまで聞いて、複雑な思いがした。アリアンヌ大公妃が大叔母同様に、夫の尻拭いをしていたのは分かったが、それではあまりにも不憫だ。これはもしかしたら大公妃の──? 



「反大公派の目を、ウォルフリックとして養育されていたベレニスに向けさせていた?」


「そう見られても仕方は無いわね。6年はその状態が続いていた。ウルガーはその裏で、本物のウォルフリックを引き取ることを計画していた。ウォルフリックを引き取った後は、ベレニスはその妹として生きて行く予定で、兄の存在を明かされたあの子はもの凄く喜んでいたわ」


「お相手の女性と、大公はまだ続いていたのですか?」


「それがね、ウルガーとの関係は、どうも妊娠した辺りで切れていたようなの。きっとその頃にはウルガーの熱も冷めていたのでしょうよ。ネルケの出産が近づいて、生まれた子の為に色々と用意するアリアンヌの側にいて手伝っていたから。お相手の女性は、産まれた子はどうするのか一応、確認の為に報告してきたみたいで、報告を聞いた当初、ウルガーも驚いていたわ」



 大叔母は呆れたように言った。つまり大公はお相手の女性が妊娠したと告げる前に、ネルケ夫人に走ったということか。まるで気ままな蝶のようだ。女達の間を渡り歩いて一つの場所に落ち着かない。



「どうして大公はネルケ夫人と?」


「単に好みだったようよ。あなたの父と交際していた頃から憧れていたみたい」


「あれを、ですか?」



 私の反応に大叔母は笑った。趣味が悪いとしか思えない。父はすぐに目が覚めたみたいだけど、ネルケ夫人が前大公のお手つきとなり、愛妾となってからも大公は彼女を見ていたということか。



「彼女はおつむの方は軽いけど、社交界では評判は悪くないのよ。着ている物のセンスは良いし、垢抜けて見えるから、男性陣にも受けが良い」


「なるほど。見た目ですか」



 それでもあの女を毛嫌いしている家族に囲まれてきたせいか、どう見ても良い印象は抱けなかった。

そこへ突然、慌ただしく侍女が駆け込んできた。



「ベアトリスさま!」


「何事です? 騒々しい」


「実は今、大公さまが──」


「何ですって?!」



 侍女の尋常で無い様子に、眉根を寄せた大叔母だったが、報告を聞く間に段々と顔付きが険しくなっていき、席から立ち上がった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ