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33話・祝いの場に相応しくない者は去れ



「老婆心ながら、余計な事を申し上げました。謝罪を致します」


「伯父上もそろそろ幕を引かれてはどうだ。あの歌劇の台詞をそっくりそのままお返ししよう。お前は過去の遺物になりさがった。もう時代はおまえを必要としていない。祝いの場に相応しくない者は去れ」



 屈辱に顔を歪ませたクランチオ侯爵と、批難する大公を見比べていたネルケ夫人は、何を思ったのか、「ウルガー」と、大公に縋り腕に触れようとした。しかし、その手は振り払われてその場に崩れ落ちた。



「帰るぞ。ネルケ」



 その彼女を起こしたのはクランチオ侯爵で、二人揃ってその場を後にするしかなくなった。クランチオ侯爵も分が悪いのを悟ったのだろう。大人しく引き下がってくれてホッとした。



「今宵は我が息子ウォルフリックと、ヘッセン家のご令嬢バレリー嬢との婚約が決まったお目出度い席だというのにこのような事になってすまなかった。お詫びと言ってはなんだが、皆にレバーデン大公家秘蔵のワインを振る舞う事で許して欲しい。さあ、音楽を。夜会の続きだ。夜はまだ長い」



 大公の明るい声に、ウォルフリックは私に手を差し出してきた。



「もう一曲、お付き合い頂けますか?」


「喜んで」



 再び中央へ進み出ると、周囲に人が集まってきた。その中には私の両親もいた。



「大公さま。すっかり全快されたのですね?」


「実はだいぶ前に良くなっていたけど、クランチオ侯爵の動向を探る為に仮病で誤魔化していたんだ」



 踊りながらウォルフリックに聞くと、彼は苦笑した。ああ見えて結構、親父はタフなのだと言った。



「今日のこと、大公さま達は予想されていたの?」


「あの侯爵が、リヒモンド兄さんに接触してきていると聞いていたから、クランチオ侯爵が動き出すのを待っていたらしい。婆ちゃんが、相手のボロを出すまで様子を見ようなんていうからさ、親父は半年もベッドの上でゴロゴロしていたよ」


「まあ。それは退屈でしょうね」



 その事は一部の者しか知らなかったそうで、部屋に出入りする者も限られていたらしい。その中には父や兄は含まれていたようだ。



「侯爵が引き際を心得ていてくれたから良かったけど、まだごねるようならば、もう一つ具体的な証拠を上げる羽目になっていた。そしたら彼は言い逃れできずに、この場で即拘束されていただろうね」


「確実な証拠なのですね?」


「ああ。歌劇でも言っていただろう? 親子鑑定出来る技術が隣国にはある。それを持って俺はここに戻って来た」


「あれは劇中での話だけかと思っていましたが、実際に行えるのですね?」


「うん。それでリヒモンド兄さんも調べてもらっているよ。近々、詳しいことは判明するだろう。でも、どっちにしろ、侯爵は拘束されるよ。皆の前で次期大公を貶めるような発言をした上に、お家乗っ取りとも取られかねない発言をしたのだから」



 親父は結構、怒っていた。これで宮殿の膿は押し出せるだろうなと、未来の大公は言った。彼はリヒモンドとも良好な仲を築いているようだ。



「そう言えば、あれからディジーさまはどうしていますか?」


「元気にしているよ。少し大人しくなったけど、以前の彼女に戻ったかな」



 以前というのは、ウォルフリックと養い親の元で暮らしていた頃のことだろうか?



「では一つお願いがあるのですけど」


「何だろう? きみのお願いなら一つとは言わず幾つでも叶えたくなるな」



 ウォルフリックは調子が良い。私は音楽に身を任せながらも、彼に彼女への伝言を頼んだ。





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