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23話・ネルケ夫人の画策



 その後、中庭を通り抜けて迎えの馬車がある停留所まで向かっていた時だった。東屋の方から話し声が聞こえてきた。聞き覚えのある二人の声に誘われるように垣根に近づくと、険しい表情のリヒモンドとネルケ夫人がいた。立ち聞きするつもりはなかったが、二人の険悪な状態を察して、その場から動くことが出来なくなった。



「馬鹿な事を言わないでくれ」


「そう悪い話でもないと思うけど。ちょっと考えてみてよ」


「よくそんなことを思いつくな。吐き気がする」



 何かネルケ夫人に言われて、リヒモンドが気分を害しているようだった。



「ベアトリスさまは、公子さまとバレリーさまを結び付けようとしているけれど、あの二人は微妙なところでしょう? それに公子さまは本人なのか疑わしいし」


「母上。その発言は頂けないな」


「だって皆が疑っているわ。今更、戻って来るなんて調子が良すぎないかって」


「皆ってどなたのことですか? まさかその中にはあのいけ好かない爺が含まれていたりしませんよね?」


「まあ、いけ好かないだなんて。クランチオ侯爵さまに失礼よ」



 クランチオ侯爵の名前が出て来て驚いた。クランチオ侯爵は、先代大公ロアルドの兄。優秀な方ではあったらしいが母親が愛妾であった為に、一つ年下の本妻の子である次男のロアルドが、大公の座に就いた経緯があった。



「あの方と手を組んで、今度は何を画策しているのですか?」


「画策だなんて。あの御方はあなたの後ろ盾になって下さると約束して下さったの。次期大公には、どこからかひょっこり現れた自称ウォルフリックではなく、勤勉で優秀なあなたが相応しいとおっしゃっていたわ」


「何を企んでいるのですか? 私に簒奪者になれと?」


「簒奪ではないわ。当然の権利よ。あなたも前大公さまの子供なのだから」



 ネルケ夫人は、リヒモンドを大公の座に就けようと躍起になっているようだ。先代大公の兄まで味方に付けて、後は本人の承諾を得るだけといったところか。



「私が父上の子? ちゃんちゃらおかしいですね。誰の子なのか疑わしいこの私を、持ち上げるなんてクランチオ侯爵はどうかしている。耄碌されたらしい」


「クランチオ侯爵さまに何てことを言うの。あなたはロアルドさまの子なの。それは間違いないの」


「私の父親はヘッセン侯爵ローダントさまではなくて?」


「……!」



 せせら笑うリヒモンドに、必死に言いつのる夫人だったが、彼の口から元恋人の名前があがると、顔色を変えた。


 私も疑っていたことではある。周囲の者達も疑っていた。リヒモンドは髪色と言い、瞳の色と言い、ヘッセン家特有の色合いで、顔立ちもよく見ればどことなく私の父に似ている。

 彼が生まれた時、周囲からもネルケ夫人の産んだ子は元恋人だった父の子ではないのかと、疑われていたと聞く。でも、先代大公がその噂を一蹴し、「この子はわしの子」だと認めたことで、周囲は黙り込むしかなくなった。


 でも、先代大公は寵愛していたネルケ夫人の「リヒモンドを大公にして欲しい」と、いうお強請りには頷かなかった。それは賢明な判断だったと思う。

 もしも、リヒモンドが父の息子だったなら、大公家の血は一滴も引いていないことになる。その彼が次期大公の座についたとしたら、簒奪者でしかなくなる。






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