18話・リヒモンドに会った日2
「おじうえはわるいひとじゃないよ」
「でも、ちかづいちゃいけないって……」
思わず両親に言われていたことを言うと、ウォルは悲しそうな目を向けてきた。
「バレリーは、ぼくのいうことより、うわさをしんじるの?」
「そういうわけじゃないけど……」
「ぼくはさ、バレリーのことも、おじうえのこともすきだよ。だからふたりにはなかよくなってほしいんだ」
「ウォル……」
ウォルを悲しませる気はなかったから、泣きそうな目で縋ってくるウォルを突き放せなかった。
「だからこれからおじうえにあいにいこう」
「……!」
いきなり手を取られたかと思うと、裏山に連れて行かれて驚いた。そこでは少年リヒモンドが薪割りしていたのだ。
「おじうえ!」
「おう、どうした? ウォルフリック」
「ぼくのいいなずけを、しょうかいしたくてきました」
いきなり政敵とも思える相手と引き合わされて面食らったけれど、ウォルに促されてやけくそ気味で自己紹介をした。
「ヘッセンこうしゃくのむすめ、バレリーです!」
「おお、威勢が良い。僕はリヒモンドだ。宜しくな」
リヒモンドは、私がヘッセン家の娘と聞いても顔色一つ変えなかった。そればかりか初めて会ったのに
「可愛いな」と、頭を撫でてきたのだ。
「ちょっ……!」
「あ、ずるい。ぼくも」
「こんなに可愛い許婚がいるのだから仲良くな」
「はい」
そう言いつつ、リヒモンドはウォルの頭を撫でた。そうやっているのを見ると、仲の良い兄弟にしか思えなかった。噂に聞いていたリヒモンドは、母親に捨てられたこともあり、周囲の者に冷たく当たると聞いていたが違っていたようだ。
「どうして、リヒモンドさまはここでまきわりを?」
「薪割り担当の爺さんが腰を悪くしてね。だから代わりにやっているんだ。これって結構、楽しいし」
大公の弟である彼が、使用人がする仕事をさせられているなんて、虐めにでも遭っているのかと思ったら違った。これは彼が年配の使用人を思いやって、自主的に行っていた事だった。そんなことはなかなか出来るものじゃない。感心していると、脇からウォルが声を上げた。
「ぼくもやる」
「いやあ、ウォルにはまだ、早いよ。僕だって最近、爺さんからコツを教えてもらったんだよ」
リヒモンドの真似をしたがるウォルは、薪割りに使っていた斧を持ち上げようとして駄目だ。と、すぐに諦めた。
「おもくてむりだ」
「無理はするなよ。そうだ、ふたりともスープ飲むか?」
「「スープ?」」
「美味しいぞ」
そういって振る舞ってもらったのは、使用人から差し入れしてもらったというキノコのスープだった。
「美味しい~」
「そうだろう?」
その一件から私はリヒモンドへの警戒を解き、ウォルと一緒に交流するようになっていた。彼を警戒する大人達の手前、表向きには距離を取っているように装いながら、私達は裏山で会い続けた。そしてそれから数ヶ月後、ウォルは姿を消した。




