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16話・きみは母上に似ている



「やあ、バレリー。今日も来てくれたのかい?」


「リヒモンドさま」


「おや? きみは誰かな?」



 リヒモンドがその場に姿を見せると、それまで強気の態度を崩さなかった彼女は急に大人しくなってしまった。リヒモンドは興味深く彼女を観察している。彼女に代わって私は紹介をした。



「リヒモンドさま、こちらはディジーさまです。ウォルフリックさまがお連れになった御方です。ディジーさま、こちらはウォルフリックさまの叔父上にあたるリヒモンドさまです」


「ああ。話には聞いているよ。きみがディジー嬢か。母とも仲良くしているそうだね?」


「あ、はい。ネルケさまには良くしてもらっています」


「母は我が儘だから付き合うのは大変だろう?」


「いえ。そんなことは……」



 ディジーの歯切れが悪くなった。



「母に無理して付き合うことはないよ。あの人に媚びても、きみの得になるとは思えない。何か目的でもあるのかな?」



 リヒモンドはネルケ夫人に近づいたディジーを、不審に思っているようだった。ディジーはさすがに彼の前で、私にとった態度を取るような真似はしなかった。



「別にあたしはそんなんじゃ……。ひったくりに遭ったネルケさまを助けたことで親しくなっただけです。そのように思われるだなんて心外です」


「気分を害したなら謝るよ。私は他人を鵜呑みに信じられる立場にないものでね」



 母親のように懐柔されるわけにはいかないのだよと、リヒモンドが言えば、ディジーは黙った。リヒモンドはそのディジーを見ていて、何かに気が付いたようだ。



「きみ……」


「はい? 何でしょうか?」



 まじまじとリヒモンドは彼女を注目した。彼女の方はそれを良く思わないようで、その場からすぐにでも立ち去りたいような雰囲気を醸し出していた。



「きみは母上に似ている」


「ネルケさまにあたしが? 光栄です。でも、ネルケさまはあたしのような者に似ていると言われたりしたら、気分を害するのではないですか?」



 思わぬ事を言われたと彼女は一瞬、顔を強ばらせたがくすりと笑いを漏らした。確かにネルケ夫人は彼女と似ていると私が言ったことに、気分を害していた。


 彼女はネルケという女性を、知り尽くしているようにも思えた。出会ってそんなに日は経っていないはずなのに。



「ここにもあたしがいると、気分を害する方がおられるようなので失礼します」



 私の顔を見て嫌味を言い残して彼女は立ち去った。その彼女の背からリヒモンドは目を離せずにいた。



「リヒモンドさま?」


「あれは変わってしまったな」


「お知り合いですか?」


「きみは気が付かなかったのかい?」



 彼の言葉から彼女との間に面識があるのかと聞いた私は逆に聞き返された。



「どういう意味ですか?」


「彼女は恐らく──だよ」



 困惑する私に、リヒモンドは告げた。その言葉に頭を金槌で殴られたような衝撃が走り、目の前が揺らぐ気がした。


「バレリー……!」



 意識が遠のく中、私が目撃したのは慌てるリヒモンドの姿で、こちらに手を伸ばすところだった。



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