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空想の演者   作者: 木小丸
1/5

幕開け

初投稿です。

この世に公平なものはない。


才能がないと、それぞれの最高地点の舞台に上がることは不可能に近いと思う。努力でどうにかできるのは、一定のラインまでだ。どんなことにも線引き、諦めは必要不可欠。

人間の性格、才能、身体的特徴は、ほとんど遺伝子で決まると言われてる。確かにプロのスポーツ選手なんかは、親が同じスポーツのプロの選手だった例が多い気がする…多分。


例えば今している作業もそうだ。木材を垂直に切れない。

俺にはノコギリの才能がないらしい。マジ疲れるわこれ。


だが、目の前の人は違う。職人のごとく次々と切り落としていく。断面も綺麗で角度も寸法も完璧。

あー…帰りたい。


俺はそんな才色兼備な彼女―――音無 理乃(おとなし りの)を見ながら、心の内で愚痴をこぼす…





桜が散り、高校生になって二週間が過ぎた。


最初の席替えで運良く窓際後ろを確保できた俺は、今日も静かにお気に入りの小説を読んでいる。それはもう陰キャ道まっしぐらって感じで。何人か話せる友達?はできたからボッチではないと思う。このくらいが俺に合ってる。


環境の変化に皆が慣れ始めた頃、担任からの連絡事項に教室が賑やかになる


「部活動紹介かー、春は何部入んの?」

「んー、俺は部活はいいや」

「え、なんで?」

「めんどくさいから」

「…相変わらず冷めてるなぁ」

「うっせぇ」


幼馴染みで、これまた運良く前の席になった吉田 慶太(よしだ けいた)にちょっかいを掛けられ、開催地の体育館に向かいながら今日の行事について思考する。


部活動紹介。上級生の人たちが各々の部活をアピールし、

一年生を勧誘する行事で、毎年この時期にあるらしい。

この行事の害悪ポイントは、部活に興味ない連中も強制的に二時間拘束されることだ。無関係の人たちにとっては疲れるだけのイベントに過ぎない。


「部活入らないってことは、バイトでもするのか?」

「うちの学校バイト禁止じゃん」

「そこは守るん?笑」

「バレたら停学とか洒落にならない」

「いつからそんな真面目キャラに…」

「慶太はもー決めてる?」

「うん、水泳部!」

「へー」

「いや興味なさすぎない?」

「幼稚園から水泳一筋すごいでちゅね~」

「煽るのやめなさい…でも春も部活はした方が楽しいと思うけどな~お節介かもだけど…あれだったら水泳部一緒に見学行く?」

「んー分かった、さんきゅーな、考えとくわ」

「行かない返事ありがとな!」


慶太に凸ピンされた数秒後、体育館の舞台が照らされ、部活動紹介が始まった。


合計18個の部活動のアピールを二時間で収めるため、各々の部活の部長らしき人が簡単に挨拶し、少しのパフォーマンスをして終了。次から次へとバトンタッチされていった。


そしてドンッドンッと聞きあきた音が聞こえてきた。


「次はバスケ部か」

「そうだよ!春はバスケがあるじゃん」

「バスケは……高校はいいかな」

「もったいな、あんな上手かったのに」

「飽き性だからね~俺は」


運動部の紹介が終わり、次は文化部の紹介に移る。

ここ宮立高校は文化部に強豪が多く、運動部と同じくらい人数が多い文化部は珍しくない。

中でも音楽部は全国常連で、垂れ幕は毎年更新されている。


音楽部の「威風堂々」を聞き歓声に溢れる中、次の部活の人たちが舞台袖から出てきた。


「私たち演劇部は橋本顧問の指導の元、三年生6名、二年生4名の計10名で活動しています!活動内容は~~~」


「演劇かぁ、ちょっと面白そうじゃね?春みたことある?」

「昔一回だけな」


ほとんど覚えてないけど。有名な劇団の劇に一回連れていかれた記憶がある。劇団名は確か…なんだっけ。


「少しでも興味があればぜひ!講堂に来てください!新入生歓迎講演を今日から2日間、16時から開演するので!」


「歓迎講演だってさ春!行ってみよーよ!」

「いや俺は…、てか水泳部は行かなくていいの?」

「春、ごめん一人で行ってきてくれ」

「やなこった」


そこからまた30分ほど他部の紹介が続き、ようやく部活動紹介が終わった。腰が痛い。

普段から猫背のせいか、同じ姿勢で固定すると軽度の腰痛になる体になってしまったらしい。


慶太が水泳部へ向かうのを見送り、周りに誰もいないのを確認した俺は自販機前のベンチで寝転び腰を伸ばしていた。


これは本格的に整骨院を考えた方がいいかも知れないな。

俺はうつ伏せで寝転んで、ため息をついた時


「どうしたの?大丈夫?」

「!」


急な声に体が反応し、ベンチから転がり落ちた。


「ごめんなさい!驚かすつもりはなくて…」

「いや、気にしないで、勝手に驚いただけだか…ら…」


一瞬で口内の唾液を飲み干した。なんだこの生き物…


鈴のように通った声

吸い込まれそうな二重の瞳に長いまつげ

綺麗で整った鼻

肩にかかるくらいのさらさらな黒髪 

透き通るほどの白い肌


「―――………」


住む世界が違う。ほんの数秒でそう思わせるほど、彼女のオーラは圧倒的なものだった。


「すいませんでした!失礼します!」

「え?いやちょっと!/」


思わず早歩きでその場から逃げてしまった。

なにか話そうとしてたのかな…いやないない。

失礼だっかもな~まーいいや。許せ美少女…。


そのまま早歩きで駐輪場に着き、少し緊張が解れてからペダルを漕いだ。腰の痛みはなくなっていて、体が軽い。

学校と家の距離は自転車で30分くらい。

電車通の人たちに比べれば、大分近い方だ。


「一年生だったなさっきの人。次会ったらお祈りしてみよ」


祈ればなにか願い事が叶いそうな気がした。

最初で最後の関わる奇跡だったかも…ちょっと後悔。


「ただいまー」

「おかえり」

「ん、美花だけ?」

「うん」

「母さんは?」

「しらない」


今年小学生三年生になった妹の美花。超さばさばしてる。

最近の小学生ってこんな感じなのか。


「はいよー」

「お兄…良いことあった?」

「なんで?」

「笑ってるの珍しい」

「おー分かるかね、実はさ…」


やけに鋭い9才の妹に今日あったことを話しながら、買ってきたプリンを二人で食べた。





今日が林道 春(りんどう はる)と音無 理乃の出会った日


対極的な二人の物語が幕を開ける


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