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ダンスで目立ってしまった。思わぬ誤算に苦笑いするしかないわ。
父の元に着いたと同時に後ろから声が掛けられた。
「二人とも素晴らしいダンスだったよ」
シェルマン殿下とエレノア様が仲睦まじい様子を見せている。
「お褒めいただき恐縮です」
私とファルスは礼をする。
「マーロア、クラスメイトとして一曲いかがかな?」
「喜んで」
「エレノア様。殿下ほど上手くは踊れないですが、是非、一曲私と踊っていただけませんか?」
「喜んで」
私はシェルマン殿下と、エレノア様はファルスとまた踊りを始めた。
「二人ともダンスがとても上手なんだね」
「お互い小さな頃から一緒ですから。ダンスで目立ってしまって殿下の護衛が出来そうにありません」
「ははっ、マーロアはそう言いながらでも会場中の気配を監視しているんだろう? 大丈夫さ。それにデビュタントおめでとう。とても綺麗だよ。エレノアと婚約していなければきっとマーロアが婚約者になっていただろうね」
「ふふっ、お褒めいただきありがとうございます。その言葉で沢山パンが食べられそうですわ」
「ククッ。笑いを堪えるのが大変だ。まぁ、護衛の件は程々でいいから。今日は他にも参加者に混ざって警護している者も多いからね。ゆっくり楽しんでいって」
「お気遣いありがとうございます」
そうして最後はお互い礼をしてホール端に移動する。後ろからファルスとエレノア様も端に来て一緒に会話をする。
そこからはクラスメイトも加わり、和やかな雰囲気で過ごす事が出来たわ。偶にクラスメイトとも踊った。
ファルスを狙っていた令嬢たちはクラスメイトに阻まれて少し悔しそうにしている。
そして殿下とエレノア様が下がる時間となり、私たちの護衛も終了となった。
今回も何事もなくて良かったわ。
父も多方面から挨拶を受けていたようでとても忙しくしていたが、私たちが父の元に行くと、挨拶をしてから一緒に帰る事になった。
今回の護衛も無事終える事ができたし、デビュタントも済ませる事が出来て良かったわ。父は護衛をせずに純粋にデビュタントを楽しんで欲しかったみたいだけれど、ファルスと一緒にデビュタントが出来ただけで十分だわ。
舞踏会後から父はとても忙しく動いていた。食事も一緒に摂る機会が減って心配しているけれど、大丈夫の一点張り。
オットーにそれとなく聞いてみたらどうやらお父様は各方面からそろそろ後妻を娶ってはどうかと打診が来ているらしい。
それに加え、ファルスにも縁談が舞い込んでいるらしい。娘はなぜか釣書一つこないようだが。
……解せぬ。
私とファルスはこの長期休暇を利用して村へ帰る事になった。
もちろん父が全て旅行を手配してくれた。そしてテラの欲しがりそうなお土産をいくつか買って村へと出発した。
馬車の旅は相変わらずお尻が痛かったけれど、風魔法を駆使して浮かんでみたり、馬車をほんの少し浮かせてみたりと色々試しながら移動して楽しく過ごせたわ。