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そこから私たちの結婚式までは早かったわ。邸に帰るとオットーを始めとした従者たちみんなが祝ってくれて邸は大騒ぎになった。
ファルスが騎士団長になったら渡そうと思っていた剣。騎士団長にはなれなかったけれど、側近になったファルス。
初夜の2人きりの時、私はベッドに入る前にお祝いとして剣を渡したわ。マージュさん渾身の作品! 国宝級といっても過言ではない代物だった。柄は私とお揃いなの。
殿下も持っていないのよ?
ファルスは豪華な箱からリボンを解き、箱を開けると固まってしまったわ。
「ファルス、凄いでしょう? 柄は私とお揃いなのよ? 今まで貯めていたお金がすっからかんになっちゃったけどね!」
「……マーロア! 凄いなんてもんじゃないだろう!? 本当に、俺の剣、なのか?」
ファルスは固まり、フルフルと震えながら聞いてきた。
「もちろんよ! 明日から使って欲しいわ」
「あ、ああ。大事に使う。マーロア、ありがとう。俺、こんなに幸せで良いんだろうか」
「私も幸せよ。ファルス、これからもよろしくね」
そうしてファルスは興奮冷めやらぬうちに夜が明けた。2人とも幸せに過ごしたのは言うまでもないわね!
そうそう、ビオレタとユベールは村から出てきていて邸に数日間だけど滞在したわ。新たに承った伯爵領は猫の額程の領地だったけれど、侯爵家の領地の隣だった。
ビオレタとユベールは伯爵領へと住まいを移し、生活を送る事になった。
人間の闇の部分を見てきたビオレタはファルスや私、ユベールが居たから乗り越えられたと言っていた。これからは領地で幸せに過ごして欲しいと思う。
ちなみにファルスの兄弟もスクスクと育っていて今可愛い盛りだわ。偶に領地に帰って遊んであげている。
そして私はというと、零師団で相変わらず勤務を続けている。
普段から認識阻害を掛けて王太子妃殿下やエレノア様のお茶会に参加したり、護衛をしている。他には殿下たちの視察に付いて国中を回ったり、他国へも出掛けたりするようになった。
もちろんファルスと一緒に。ファルスは側近として、私は零師団なので先回りして害獣を討伐して危険を減らしたり、同僚と情報を集めたり、時には侍女に扮して意外に忙しく活動しているのよ?
転移道具もようやく使える許可が降りたの!
先回りして討伐したドラゴンをイェレ先輩やアルノルド先輩に送りつける事もたまにある。
突然研究室に現れるドラゴンの遺骸に驚き抗議しながらも魔道具を用意してくれる先輩たちにいつも感謝しているわ。
でも、イェレ先輩が作った転移装置の転移場所を研究室内ではなくて訓練場にすればいいのにと思うのは内緒よ。
先生はというと、なぜかレコとコンビを組んで国中を回っているみたい。
レコはひょっこりと零師団に入っていて『賭博でお金が無くなって仕方なくです』と言っていたわ。本当かしら?
「マーロア、そろそろ王宮勤務も控えた方がいいんじゃないか?」
「もう少し動いていたいわ。お義母様が領地から出てきてくれるまでは、ね?」
「心配で心配で仕事が手につかないよ」
「そうね。父にも家に帰ってくるように言われているし、そろそろお休みをいただいて実家に帰ろうかな。といってもお隣だけれど」
そう、結局伯爵家のタウンハウスは侯爵家の隣に用意されていた。
吹けば飛ぶような小さな領地の伯爵家には後ろ盾が必要だって父もテラも言い張ってなぜかすぐに会えるようにとお隣に邸を建てていたの。
これには私もファルスも苦笑い。
けれど、そのおかげでアンナやオットーが心配してよく我が家に来てくれるの。有難いことね。
父もテラが仕事を手伝うようになって楽になったのかオットーと共に我が家にちょくちょくベビー用品を持ってくる。
私は大きくなったお腹を撫でながらとても幸せを感じているわ。
【本編 完】
本編最後までお読みいただきありがとうございました!!
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
この場にてお礼申し上げます。
この作品はリメイクした物で書き直しをするにあたり、毎日黒歴史化した文章との闘いでした。
他の過去作品もそっ閉じ…しようかと何度思ったことか!(現在も闘い中)
ひと月かけて修正しましたが、中々に辛かったです。
12月頭から一日三回更新を目指して走り抜きました!
これも応援して下さった皆様のおかげです。
そして皆様のおかげでカクヨムコンも恋愛ファンタジー部門一位をキープしたまま完結を迎える事が出来ました⭐︎
本当に、本当に感謝の念で一杯です。
最終話となる『ファルスの事情』も引き続きお読み頂ければ幸いです。