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 私は早速ギルドへ向かった。

 洞窟内の依頼書を取り、受付に受注と洞窟の詳しい話を聞く。


「鉱物洞窟へ行くのに何か必要なものってありますか?」

「採取の依頼書ですね」

「依頼にあるオレゴランがどんなものか見てみたいと思って。小さな鉱物ならアクセサリにしてもよさそうですよね」


「めぼしい物は無いと思いますが、鉱物を採るなら小型のツルハシを買っていった方がいいですよ。

 大きいものを採ると暴れるんですが、小さいものならさっと取れるので暴れずに採らせてくれるようですから。あと、フルーツで気を引いた方がいいですよ」


「そうなんですね。じゃあ、ツルハシとフルーツを買って向かいます」


 受付の人からは小さなツルハシを買っていけと言われたのでなけなしのお金で仕方なく買うことになった。


 また一生懸命貯めないとね。


 使えない鉱石が多いのになぜ行くのかって? 単純に興味本位なの。あわよくば良い鉱物採れないかな、位には思っているけれどね。


 教えてもらった通りにフルーツを一籠買って洞窟へ向かった。今回の依頼書はオレゴランの鉱物と洞窟内の薬草採取があった。


 暫く馬車で行き、途中からは歩いて洞窟に向かった。帰りは自力で走って帰ってこようと思っているわ。




 洞窟の前にある注意書きの看板が目についた。オレゴランを刺激しないように書かれていたわ。


 私はライト魔法で洞窟内を照らしていくのかと思ったけれど、どうやら魔石が使用されているようで洞窟内は明るい。


 思っていたよりも洞窟ってかなり広いのね。暫く道なりに歩いていると、オレゴランがいた。


 入口付近だと植物を食べる方が多いのか背中が緑色のまだら模様をしているわ。興味深いわね。試しにフルーツを一つ取り出し、口元に置いてみると、美味しそうに食べている。


「ごめんね、ちょっとだけ貰うわ」


 私はそう声を掛けながら掌サイズの緑色の鉱物を採ってみた。草の香りはしないようだし、そこそこに硬い。水晶のような形をしていて綺麗だ。


 装飾具としては使えそうね。オレゴランはフルーツをもらったお礼位にでも思ったのか怒る事は無かった。


 植物の生えていない場所にいるオレゴランはどんな鉱物なのか知りたくなり、探しながら先に進むと、川が流れていてその周辺は薬草が一面に生えていた。日の光が入らないこの場所で生える薬草はとても特殊よね。


 この生命力の強さが薬の効果なのかな?


 疑問に思いながらも依頼書にあった分量の薬草を採取する。ここにもオレゴランはいて薬草を食糧としているみたい。先ほどより緑色が濃いわ。


「鉱物を少し分けてちょうだい」


 私は話し掛けながらフルーツを渡してみる。何となくだけれど、声を掛けながらするのが良いかもと思っている。村にいた野生動物も急な動きや叫ぶと怖がって襲ってくるか、逃げていくの。経験上、落ち着かせるためにゆっくりと話す方法は有効なのよね。


 小さなツルハシを使ってコンコンと採ると抱えるほどの大きな鉱物が採れたわ。不思議な色ね。


 すぐにリュックに仕舞い、しっかりとオレゴランにお礼を言って更に奥に歩いていく。オレゴランは特に気にしている様子がないことから痛みはないようだ。ちょっと安心する。


 フルーツを持って落ち着かせる方法が広まれば今後採取ランクはD位まで下がるかもしれない。



 先ほどの薬草の生えていた場所とは打って変わって茶褐色の土に所々黒っぽいような色が付いている箇所が出てきた。地質なんて全然分からないけれど、この辺のオレゴランは土を食べているだろうから金属が採れそうよね。


 もう少し進んでみると、狭い分かれ道になっていた。上に上る道と下へ下る道。私は上に登る事にしたわ。


 大きなオレゴランはこの道を歩くのか? とちょっと不安になりながら進んでいく。どうやら登り切った所で魔石の明かりは最終地点だと教えてくれている。奥の方は魔石の光が届かず、暗くなっている部分がある。


 この先は崖になっている?


 興味が湧いた私はライト魔法で周囲を明るくしながら奥まで行ってみると、人ひとりが通れる程の穴があった。その先をさらに照らしてみると、奥には空間が広がっているみたい。


 ここから一般人は立ち入り禁止ってことよね。危険があるかもしれない。私は注意しながらゆっくりと穴の中に入ってみた。


 すると、さっきまでの洞窟の雰囲気がガラリと変わり、様々な鉱石が地面から所々小さな結晶が露出している状態だった。


 そして小さなオレゴランが沢山いるわ。私が出した魔法は小さな光だったけれど、鉱物やオレゴランの鉱物に光が反射して空間がぼんやりと明るくなっていた。


 ……凄いわ。


 どう説明していいのか分からないけれど、神秘的で人が入り込んではいけないような、そんな場所に思えた。


 私は持っていたフルーツを籠ごと取り出して沢山いるオレゴランにフルーツを小さく切って与えた。小さいといっても体長五十センチはあると思う。


「みんなの鉱物を少し分けて下さい」


 そう言って一匹から掌サイズの鉱物を一つ、また一つと採っていく。二十匹程から採れたわ。この中で良い物があるといいなぁ。


 私はお礼を言って元の場所に戻る。


 きっとここは知る人ぞ知る場所なのだろう。入り口までは遠いし、身体強化を使って走って戻った。

 洞窟に入って二時間くらい経ったかな。洞窟を出てからは身体強化を使わずに猛ダッシュで走り村に戻った。


 私は採った鉱物が気になってしかたないのでギルドよりも先に鉱物屋へ向かうことにしたの。


「お姉さん、もう行ってきたのか?」


 店主は少し驚いたように聞いてきた。


「ギルドで話を聞いてすぐに採る事が出来たの。鑑定してもらいたいな」

「どれ、見せてくれ」


 私は息を整えた後、リュックから掘りたての鉱物を受付の台に乗せていく。男の人は丁寧に鑑定してくれた。


「この緑が混じった物は全く使えない。アクセサリーにでもするんだな。深緑の鉱石は武器や防具には使えないが、魔力は通しやすそうだ。

 何かには使えるかもしれない。他の鉱物は色々な鉱石が混ざっているようだ。中々に使えそうな物もあるな。鉱物の含有率を教えるか?」

「んー聞いても分からないからいいかな。この中で武器に向いている鉱石を教えて欲しいの」

「それもそうだな。こいつとこいつとこいつ。大きな物を作るには材料が足りないだろうがその辺は鍛冶屋がなんとかしてくれるだろう。後の鉱物はまぁ、普通の武器か家庭用の包丁行きだな。鑑定代は銀三枚だ」

「ありがとう。助かったわ」


 私は代金を支払って鉱石を仕舞い、ギルドへ向かった。私はいつものように薬草と依頼のあった分の物を出して受注完了させた。


 他の依頼を覗いてみるけれど、Aランクの討伐以外は特に問題のありそうな討伐はないようなので宿に帰る事にしたわ。


「先生、具合はどうですか?」

「ロア、お帰り。もうすすっかり良くなったよ。明日には鉱山へ向かえる」

「良かったです。今日は一人で気になる魔獣の調査に行ってきたんですよ? 先生はオレゴランって知っていますか?」

「あぁ、背中に鉱物が生えている魔獣だろう? あれがどうしたんだい?」


 私はリュックから鉱物を取り出した。


「王都には出回っていない代物のようです。鉱物屋の人に聞くと、配合の具合で国宝級の武器が出来るようですよ? いくつか調査してきたのですが、食べ物によってこの緑色の結晶のようになったり、純度の高い鉱石が出来たりと物によっては価値が上がるのではと思っています。ね? 面白いでしょう?」


 先生は鉱物を手にとってじっくり眺めているわ。その横で紙とペンを取り出して報告書を書いていく。私が注目しているのは薬草を食べているオレゴランなのよね。何かは分からないけれど、使えそうな気がするの。


 治療魔法の魔石とか? 魔獣は光魔法や聖魔法を使う事はもちろん出来ないので魔石に魔力を貯めても治療に使う事は出来ないのよね。けれど、薬草を食べて成長したこの結晶なら何か治療の役に立つのではないかと考えている。安直だけどね。


 問題は持ち帰った鉱物を魔法便で送るには重くて送れなさそうなのよね。とりあえず持っておいて報告書だけ送ればいいかな。


 鉱物を送るとなれば魔術師の方が色々と手配してくれると思うし、まずは団長の指示を仰ぐ事にするわ。報告書を書いていく傍から先生は読んでいく。


「面白い。もしかしたら魔術師棟から研究者が送られてくるかもしれない」

「鉱物はどうしますか?」


 私は緑の結晶を先生に持って見せる。


「これは魔術師が来たら渡す。どうせもう少ししたら王都に帰らないといけないだろう? その時に提出すればいい」

「分かりました。今度王都に帰るのが楽しみです。新しい武器を作ろうかなって思っていて今からウキウキします」

「私も欲しい。明日、私も連れて行って欲しい」


 先生もやはり良い武器は欲しいよね。報告書を団長に送った後、食事を取ってのんびり過ごす事ができたわ。


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