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【完結済】七度目の転生、お腐れ令嬢は今度こそ幸せになりたい ~何度転生しても呪いのせいで最悪な人生でしたが七度目で溺愛され幸せになりました~  作者: 北城らんまる
第三部 お腐れ令嬢

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Episode77.何もかも蕩けさせられて《R15》

2023/03/11 09:00頃 加筆版投稿。

結婚初夜ですので……R15にいくかいかないか程度の描写があります。苦手な方、15歳未満の方はスキップをお願いします。



 結婚式が終わり、ラティアーノ伯爵家とロンディニア公爵家で晩餐が開かれた。

 ロサミリスにとっては、家族と一緒に食べる最後の食事。

 父ロードステア、母リーシェン、兄サヌーンと会話を楽しみ、さあもう終幕だという時間になって。


(あ…………わたくしは見送る立場なんだったわ)


 小さくなっていく家族の背中を見つめて、感傷にふける。

 

「寂しいか?」

「そうですね……少し、寂しいです。でも今日からは隣にジーク様がいらっしゃるので、きっとすぐ寂しくなくなりますわ」


 ジークが手を伸ばしてくる。頬を触れられ、整った顔が近づいてくる。キスされるのかと思ってドキッとしたけれど、ジークは手で触れただけで、それ以上近づいてくることはなかった。


(うぅ…………)


 してほしいと思ってしまった自分が恥ずかしい。


「部屋に戻るか」

「へ、や……? …………きゃっ! じ、ジーク様!?」


 膝裏に手を差し込まれ、ひょいと持ち上げられる。上体がぐらりと動いて、思わずジークの頭に掴みかかると、かたちのよい唇がにっと歪んだ。


「今日、サヌーンルディア卿に喧嘩を吹っ掛けられてな」

「え、喧嘩? お兄様がジーク様に何か失礼な事を……?」


 ジークとサヌーンでは身分差があるけれど、サヌーンの方が二つ歳上で身長も高い。交流することはあまりないけれど、何度か火花を散らしている場面を見たことがある。たいていは妹大好き(シスコン)であるサヌーンがロサミリス関連でジークにちょっかいを掛けるから発生するのだけれど、あまりに(サヌーン)公爵(ジーク)に対して敬意の足りない言葉使いをするので、いつか怒ってしまうのではないかと心配していた。


(もしかして、ついにそのときが…………)


 ごくりと唾を飲み込む。


「ロサが元気のない日や体調を崩した日はこうやって運んでいると自慢された。久しぶりに腹立たしいと思ったから、ロサを抱えて寝室に行ってやろうと思ってな。こうやって毎日寝室まで運べば、いずれあのシスコ……サヌーンルディア卿がロサを運んだ回数を超えて、上書きすることができる」

「それだけ……?」

「それだけとはなんだ、それだけとは」

「だって喧嘩って仰られたので、お兄様が暴言でも口にしたのかと」

「俺にとっては吹っ掛けられたのと同義だ。正直、俺がロサに触れた秒数よりもあの男がロサに触れた秒数が長いのが我慢ならない」


 ああ、だからこうやって運んでくれているのか。


(──とはなりませんわよ!?)


 変な所で負けず嫌いが発揮されている。


「降ろしてください! 使用人の皆さんに見られています!」

「気にするな、じきに慣れる」

「わたくしが慣れません!」

「慣れてもらう」

「えー!?」


 ロサミリスが悲鳴をあげてもジークが気にする様子はない。

 いつの間にかどこかのソファに座らされた。寝室だ。キングサイズの天蓋付き寝台がある。


「何か不満があるのか?」

「そ、そんなことは……」

「挙式が終わってからのロサは上の空だった」


 ぐいっと再び端正な顔が近づいてくる。森を閉じ込めたような深い緑の奥に強い恋慕めいた光が見えて、目が離せなくなった。逃げ腰になった身体はジークの腕によって捕まり、絶対に逃がさないという意思を感じる。


(キスに蕩けさせられてぼーっとしてました、なんて言えるわけないですわ!!)


 恥ずかしくて軽く死ねる。

 なのに。

 ジークはロサミリスの頬を手で触れ、そのまま耳にスライドさせた。長い黒髪を耳に掛けられる仕草は何だか色っぽく感じられて、大きくて長い指に耳朶に触れられるとピリピリとした何かが体を駆け抜ける。


「不満があるのなら言ってくれ」

「ジーク様に不満なんて……」

「ロサ、俺の目を見てくれ」


 だめだ。

 これを見たら最後、絶対に逃れられなくなる。


(でも……っ)


 ジークの声に、切なさが混じっている。

 初めて愛の告白を受けたあの時のような、切迫感があった。


 せめて目を見ないように視線を逸らす。


 意を決して、乾いた唇を動かした。


「ジーク様と…………誓いの、キスを………したときから、あのっ、頭がぽーっとして、もう一回してほしいなって思ってしまって……そしたら、ジーク様以外の事を何も考えられなくなって……っ!」

「……………………」


 とても長い沈黙だった。

 呆れられてしまったかと、ロサミリスは焦って顔をあげる。


「あ…………」


 劣情を宿した瞳に、囚われる。

 とっさに逃げようとした頭を、ジークの手が防いだ。有無を言わせずに口づけられる。最初は(ついば)むような軽いもので、それがだんだんと深いものへと変わる。

 キスされながら後頭部を優しく撫でられると、嬉しさやら恥ずかしさやらの感情がごっちゃ混ぜになって、ロサミリスの思考を奪った。


 ずいぶんと長く唇が重なっているなと思い始めた頃に、ジークが少しだけ唇を離した。


「……煽るな。抑えが効かなくなる」


 低い声が耳朶を打つ。

 ぞわぞわとした未知の感覚が怖いのだけれど、でも──


「お……さえなくても…………大丈夫です」

「?」

「ジーク様が好きです。愛しています…………だから」


 もっと、という言葉は、唇の中に溶けて消えた。

 優しく蕩けるような先ほどのものとは違い、今度のソレはかなり深い。貪り尽くすような獣じみた行為に、思わず舌が逃げる。けれどすぐに捕まえられ、今まで心と体が離れていた期間分とも言うように、強く絡めとられる。


「手を」


 ロサミリスがやや酸欠気味になったタイミング。

 ジークの吐き出した息を吸い込めるくらいの近さで、ぎゅっと握り締めていた手を開くように促される。言われるままにすれば、ジークの指が絡んできて、恋人のようなつなぎ方になる。

 満足したように小さく微笑む姿を見て、ロサミリスの胸がきゅんと高鳴った。


「…………」


 無言で唇を這わせ、耳へと移動する。

 金色の髪が頬に当たる。

 こそばゆくて体がぴくりと反応してしまうと、ふっ、とジークが息を吐いた。


「可愛いな…………」

「!?」

「前も思ったが、ロサは耳が弱いんだな」


(そんな楽しい悪戯を見つけた子どもみたいに……!?)


 自分でも気付いていなかったけれど、十中八九その認識は合っている。

 恥ずかしくなると耳から赤くなるのだ。

 特にジークに耳もとで囁かれると、切なくて辛いと思う時がある。


「ひゃ…………っ!?」


 我ながらなんと間抜けな声だろうとロサミリスは思うのだけれど、触れるか触れないか辺りで耳朶を攻められると、背筋がピンと伸びてしまう。


 ちゅっ、と一際強い音を立てて首を吸われた。

 それがいわゆるキスマークというやつだと気付いたのは、再び雨のようにキスを浴びた後のことで。


 喋りたくても唇が塞がれて言葉がでない。

 ずっとキスされ続けて、唇が離れたと思っても呂律が回らない。完全に蕩けさせられて、喘ぐような甘い声が出るだけ。こんな恥ずかしい声が出るのかと頭の隅で思ったけれど、「俺に集中しろ」と言わんばかりにまた唇を塞がれる。唇が離れたと思ったらうわ言のように「可愛い」と連呼されて、頭がヘンになりそうだ。


「ジーク様……っ、少しだけ休憩を……!」

「煽ったのはロサだろう」


 ようやく言葉を出せるようになったと思ったら、そんなことを言われた。

 ジークは、何かを耐えるように柳眉を寄せている。

 ロサミリスは、ふるふると首を振った。


「煽ってなんていませんっ」

「そんな可愛い顔で“もっと”なんて言われたら、火がつくに決まっているだろう。今夜は優しく丁寧に進めようと思っていたが、理性が飛んだからもう無理だな」

「!?」

「独占欲の塊のような男を焚き付けたんだ。ロサには悪いが、満足するまで付き合ってもらう」

「!?!?!?」


 事務的にさらっと恐ろしいことを言われた気がして、ロサミリスは体を震わせた。


(しかも、独占欲って……?)


 金糸雀(カナリア)の君と称され、常に寡黙で仏頂面な彼には似合わない単語のように思う。


「独占欲って、ジーク様がですか?」

「…………。やっぱり分かっていなかったようだな」


 はぁ、とジークが息を吐いたので、ロサミリスは慌てた。


「えと……あのっ。わたくし、何か変な事を……っんっ……」

「表情に出ない仏頂面の俺がダメなのか、俺が向ける感情にロサが鈍感すぎるのか……ここまでいくとどっちもどっちだな」


 ジークの唇が鎖骨を這うと、ロサミリスの喉が震えた。

 声を出さないように下唇を噛んで耐え忍べば、ジークの指がそれを阻む。親指で押され、噛まないように促される。イヤイヤするようにロサミリスが首を振れば、有無を言わさない動きでジークに唇を吸われる。


 まだ深い口づけに慣れていないロサミリスは、すぐに主導権を奪われてしまう。

 

「は…………ぁっ…………っ」


 酸素を求めて口を開く。

 じっ、とこちらを見下ろすジークと目が合った。


「傷つくだろう」

「違……これは、恥ずかしくて……っ!」

「ロサの声が聞きたい。噛んだらダメだ」

「…………っ」

「声を抑えるのはもったいない」

「い、じわるですわ……」

()には最高の誉め言葉だな」


 また耳もとで囁かれる。

 己の痴態をこれ以上さらさないようにしたいのだけれど、足と足の間にジークが膝を差し込み、動けないようにブロックされているため、逃げられない。確かに”もっと”とは言ったけれど、ここまで激しいのは誤算だ。


 どうもジークは後頭部を撫でながらキスするのがお好みであるらしく、暇さえあればずっとしている。


「もう……満足しましたか……?」


 もう何度目かも分からないキスが終わり、離れていくジークの顔を見上げる。

 理知的な雰囲気はなりを潜め、クラクラするような危険な色香を放っている。ジークは「いいや」と軽く首を振ったあとに、長めの前髪を手でかき上げていた。


「全然、足りない」


 

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