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【完結済】七度目の転生、お腐れ令嬢は今度こそ幸せになりたい ~何度転生しても呪いのせいで最悪な人生でしたが七度目で溺愛され幸せになりました~  作者: 北城らんまる
第三部 お腐れ令嬢

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Episode42.なんだかジーク様のスキンシップが激しくなってきてますわ。気のせいかしら




「先ほどのロンディニア次期公爵とのダンス、素晴らしかったです。大人の女性としての色香、優雅さが増しておりました。周りの方々がロサミリスお嬢様に見惚れていて……、もう自分の事みたいに鼻が高くなっちゃいました。どうだ、これが私のお嬢様だぞーって」


 ジークとのダンスが終わり、化粧室でお色直しをしている最中だ。侍女ニーナが、化粧筆を片手に持ちながら興奮している。テキパキと化粧を施すニーナに感嘆しつつ、ロサミリスは微笑みかけた。


「ありがとうニーナ」


 フェルベッド皇太子の即位式の、前夜祭。

 当然のことながらロサミリスも招待状が届き、婚約者であるジークと一緒に出席している。前夜祭はまだ始まったばかりで、この後は帝国の重鎮たちと世間話を挟む。もちろん、ジークと一緒に。


「あら?」


 化粧室から出ると、近くに婚約者(ジーク)がいないことに気付く。

 辺りを見渡してみると、一際輝いている白い正装姿のジークを見つけた。


(会場の中央でみなさんに囲まれているわ…………ふふっ、どうだったかしら? ジーク様の流麗かつ美しいダンス。リヴァイロスの舞踏会の時も素晴らしかったけれど、今のジーク様はもっと美しくて、かっこよくて、素敵なのよ)


 我が婚約者ながら素敵すぎる美貌の令息。

 皇族にも見間違われそうな麗しい顔立ちに、すっと伸びた立ち姿。周りの人々からの些細な質問やお世辞の言葉にも、丁寧に受け答えしている。仏頂面なのは相変わらずだけれど、三年前よりも表情が柔らかくなっている。


(グッジョブよ、ジーク様!)


「失礼。婚約者(フィアンセ)が待っておりますので、これで」


 ロサミリスに気付いたジークが、小さな断りを入れて歩いてくる。

 歩き姿も颯爽としていた。

 

「話の腰を折ってしまいましたでしょうか?」

「これでいい。少し退屈になってきたところだ」


 深緑の瞳を優しく細めつつ、ジークはロサミリスの長い黒髪を一束手に取り、口づけを落とした。

 あまりにも自然な動き。

 けれど周りに見せつけるような動作に、ロサミリスの鼓動が少し跳ねる。


「じ、ジーク様…………」


 きゃぁあ! そんな令嬢たちの黄色い悲鳴をもろともせず、ジークは何事もなかったかのように顔を離した。


「ああすまない。見せびらかさないと、どうも気分が落ち着かないんだ。──向こうにいる令息、さっきからずっと顔を赤くしてロサを見ている。待て、視線を動かすな。ロサの視界の真ん中に他の男を入れるなんて耐えられない。俺だけでいい」


(そんなこと仰られても、ジーク様以外の殿方を見ないようにするだなんて)


「む、無理ですわ……」

「だからこうやって見せつけている。間違っても変な気を起こさないように」


 本当に心配しているのだろう。

 これが前のロサミリスであれば、「ジーク様って婚約者思いの素晴らしい方なのね」で終わっていたけれど、今は彼の想いが本気であることが分かる。

 ……それでも恥ずかしいのは恥ずかしいのだ。愛されている事に気付いてしまうと、嬉しくてくすぐったい気持ちになってしまう。


 ちゅっ。

 

(今度は頭に……っ!?!?)


 肩を抱き寄せられながら、軽いリップ音が響く。

 嬉しさと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうなロサミリスに、第三者の声が割って入った。


「ジークフォルテン・フォン・ロンディニア卿。並びにロサミリス・ファルベ・ラティアーノ嬢。お取込み中すまないが、少しお時間いいかな」


 さあっと、群衆が真っ二つに割れた。

 談笑していた令息令嬢たちは軍隊のように揃ったタイミングで、かしこまって頭を下げている。ジークは胸に手を当てて最敬礼、ロサミリスも淑女の礼で目の前の人物に応えた。


「みな、面をあげよ。今は談笑の時間。かしこまらずともよい」


 神々しい白金髪(プラチナ・ブロンド)を持つのは、聖ロヴィニッシュ帝国において皇族の他にいない。

 その皇族のなかでも、頂点トップ・オブ・トップ

 第132代次期皇帝・現皇太子フェルベッド・アスク・ロヴィニッシュが、そこにいた。


「陛下」

「よしてくれジークフォルテン卿。即位式は明日、私はまだ皇太子の身分だ」

「失礼いたしました。フェルベッド殿下、私どもに何か御用でしょうか?」

「ああ。といっても、用があるのはロサミリス嬢なんだ」

「わたくし、でございますか……?」


 フェルベッドの白金の瞳がロサミリスを捉える。

 

「少し時間をくれるかい? 込み入った話がしたい」



 ◇



 舞踏会の会場には、秘密の会話が出来るように出入口が一つしかないバルコニーがある。出入り口に皇宮近衛隊を二名ほど配置すれば、人払い完了だ。


「急に悪いね。このあとも予定がびっしり埋まっていてね、たまたま時間が空いたから、ちょうどいいと思ったんだ。一筆したためても良かったのだが、会って話した方が誠意も伝わると思ってね」

「そこまでご配慮いただけるなんて、光栄の至りでございます。フェルベッド殿下」

「話というのは……まぁ恥ずかしいことなんだが、身内のことでね。妹、リリアナについてロサミリス嬢に頼み事をしたい」


 第四皇女・リリアナ。

 大きな声では言えないが、勉強嫌いのわがまま皇女との噂がまかり通っている。いわく、感情の起伏が激しいとのこと。詳細は不明だけれど、第四皇女が前夜祭に出席していない様子を見ると、とても公の場で連れ出せる状態ではないか、本人が出席を拒否しているかのどちらか。


 今までは、子どもだから大目に見られていたのだろう。

 しかし第四皇女も10歳になる。

 他の皇女に比べて地位は低いとはいえ、れっきとした皇族。社交界に一切顔を出さない皇族というのも、世間的にあまりよろしくない。


「恥ずかしい話だけれども、私たち兄弟姉妹がリリアナのもとへ行こうにも、まったく取り入ってくれないんだ。ロサミリス嬢なら、私や妹よりも歳が近いし、リリアナとソリが合いそうなんだ。ぜひ話し相手になってほしい」


 口が堅くて身分のある貴族令嬢が、秘密裏に皇宮に召し上げられていることは知っていた。事情を知る者が第四皇女の話し相手となり、少しずつコミュニケーションの取り方を学ぶのだろう。

 ただ────

 召し上げられた令嬢全員が、第四皇女にまともに取り入ってもらえず追い返されたという話だ。

 

 身内の事情を第三者に解決してもらおうなんて事、外聞的に良くない。

 皇太子フェルベッドはそれが分かっている。あえて外に頼むのは、そのほうが第四皇女の将来ためになると思っているからだ。


「もちろん、上手くリリアナの心を解いた暁には相応の褒美をとらせよう。どうだ、やってくれるか?」


 書庫室に入れるチャンスを逃すなんて体たらく、ロサミリスがする訳ない。


「謹んでお引き受けいたします」


 ロサミリスは、にこりと微笑みを見せた。



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