何度生まれ変わっても③
次の日、いつものように風に吹かれまどろんでいると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
何かあったのかと広場を見下ろすと、何やらエルフたちが集まっている。
遠巻きに様子を見に行くと、人垣の端にウエンディの姿を見つけた。
「ウエンディ」
その背に声をかける。
「あ、ブライ」
「何があったんだ?」
詳しい話を聞くために、部屋に戻る。
「えっとね、今朝、水浴びしてた子たちが、空にオーグの影を見たらしいの」
「なんだって?」
オーグ。
この世界に存在する、エルフでない生き物。
オーグは空を飛び、火の魔法を使い、屈強で好戦的。
狩りをして他の生き物の血肉を食らう種族だという。
太古の昔から、エルフはオーグを恐れ、忌み嫌ってきた。
エルフの歴史は、オーグとの戦いの歴史と言っていい。
平和に自然と共存して生きるエルフと、縄張りを拡大させながら狩りをして生きるオーグ。
例えるなら、農耕民族と狩猟民族のようなものだろうか。
「でも、オーグの縄張りはずっと遠くなんだろう?」
「うん……。でも、ほんとに見たんだって」
可愛そうに、ウエンディは怯えてしまっているようだ。
「マザーも、しばらく森の端には行くなって」
魔法を操るエルフにとって、唯一の天敵となるのがオーグだ。
皆が恐れるのも無理はない。
「ブライも、わたしとマザーから離れちゃだめだからね」
「わかったよ……」
それからは、部屋でおとなしく過ごした。
深夜、騒ぎで目を覚ます。
また、何かあったのか。
ウエンディとともに広場に行くと、そこには何かを囲むように、人だかりができていた。
何本のも松明の灯が、広場の中央を照らしている。
「マザー!」
そこには、傷ついたマザーの姿があった。
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次回、1話完結です。