表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

仮設風向計/詩集その3

歩道

作者: 浅黄 悠

イラストは遥彼方様(ユーザーID828137)によるものをお借りしています。(画像貼るの初めてなので何か不具合などありましたら教えてください)

挿絵(By みてみん)


長い長い夢から覚めた

晴れない空は夕立の予兆

網膜に慣れない直射日光


崖の舗装の上から綿毛が降ってくる

電柱のつき立つ静かな住宅街の外れ

子供の頃から色彩に乏しい

何の変化もないものを

安心して通り過ぎていた

新しい服を着る度

新しい自分になって

写真のフィルムのように区切られて

長い長い線を一度も止めることなく

雉鳩は飛び

24㎝のハイヒールが転がる

カーブミラーは淡水魚の水槽


電気の血脈は果てしない


いつも毛の長い大型犬を散歩していた人はどこへ行ったのだろう

高台のガードレール際には誰もいないから

わたしひとり進む方向を間違えているのではと思う

だから段々人がいなくなっていくのだろう

朝日だと思っていたものは夕日で

花は枯れていくのではなく

ほんとうは蕾になっていくものなのかもしれない

オイルの切れかかった自転車とすれ違った

あれは昔日の友人なのかもしれない


今日は微風がとても痛い

野焼きの灰に紛れてあなたはどこへ行く

わたしには返してほしいものがあって

わたしたちは全て遠くで繋がっている

来週ぐらいには青空が見られたらいいな


 街の生命維持装置が、いつか朽ちて切れることを今から心配しているのは愚かなことだと思っていても、考えることを手放せない。この歩道はいつまで人を繋ぐためにあるのだろう。誰もいなくなっても壊れたまま繋いでいるかもしれない。そのずっとずっと後に、いつか全く違う物語が生まれることを少しだけ期待している。いつかそのときに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 低い視点に俯瞰の思考が混ざるような…この感覚を上手く言えません。私には難しかったです。 「電柱のつき立つ静かな住宅街の外れ」「電気の血脈は果てしない」の表現が好きです。
[一言] こんにちは。 企画より参りました。 学校の遠足に出掛ける時、途中まで誰にも会わないことってありますよね。その時、「もしかして、今日は遠足ではないのでは?」「他の子はちゃんとランドセルを背負…
[良い点] この度は企画参加ありがとうございます。 言葉の美しさと、夢の中にいるような茫洋とした世界を感じました。 日常に誰もいなくなってしまった世界を重ねているのか。それとも誰もいなくなった世界で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ