歩道
イラストは遥彼方様(ユーザーID828137)によるものをお借りしています。(画像貼るの初めてなので何か不具合などありましたら教えてください)
長い長い夢から覚めた
晴れない空は夕立の予兆
網膜に慣れない直射日光
崖の舗装の上から綿毛が降ってくる
電柱のつき立つ静かな住宅街の外れ
子供の頃から色彩に乏しい
何の変化もないものを
安心して通り過ぎていた
新しい服を着る度
新しい自分になって
写真のフィルムのように区切られて
長い長い線を一度も止めることなく
雉鳩は飛び
24㎝のハイヒールが転がる
カーブミラーは淡水魚の水槽
電気の血脈は果てしない
いつも毛の長い大型犬を散歩していた人はどこへ行ったのだろう
高台のガードレール際には誰もいないから
わたしひとり進む方向を間違えているのではと思う
だから段々人がいなくなっていくのだろう
朝日だと思っていたものは夕日で
花は枯れていくのではなく
ほんとうは蕾になっていくものなのかもしれない
オイルの切れかかった自転車とすれ違った
あれは昔日の友人なのかもしれない
今日は微風がとても痛い
野焼きの灰に紛れてあなたはどこへ行く
わたしには返してほしいものがあって
わたしたちは全て遠くで繋がっている
来週ぐらいには青空が見られたらいいな
街の生命維持装置が、いつか朽ちて切れることを今から心配しているのは愚かなことだと思っていても、考えることを手放せない。この歩道はいつまで人を繋ぐためにあるのだろう。誰もいなくなっても壊れたまま繋いでいるかもしれない。そのずっとずっと後に、いつか全く違う物語が生まれることを少しだけ期待している。いつかそのときに。