プロローグ
「ブランシュ〜〜ッ!!」
ブランシュが体を起こすと目から大粒の涙を流したブランシュの母、グリーズが抱き着いてきた。
「奇跡だ!」
兄のアルジョンテは目を見開いて驚いている。
「先生ありがとうございます!」
「いえ、私は何もしておりません…」
父のブロンは医師に頭を下げて礼を言い、医師は困惑した表情でブロンとブランシュを交互に見ながらそう返した。
皆が驚くのも無理はない。
ブランシュ・ド・ロレーヌは階段から足を滑らせ落ちそうになった友人を庇って自分が落ちてしまい、首の骨をボッキリやってしまい死んでしまった。
即死だった。
すぐに医師を呼ぶも当然手の施しようはなく、皆が悲しみに打ちひしがれているその時、ブランシュは奇跡の復活を遂げたのだ。
「おかしいな… 確かに死亡を確認したのに…」
医師はしきりに首を傾げているがそれは当然の事だろう。
「お嬢様、顔色が優れないようですがお体に何か異変はないですか? 少し診察を「診察は結構です!」」
ブランシュは医師の申し出を喰い気味に拒否した。
「ですが「大丈夫です! ほら、この通り元気ですので!」」
ブランシュが元気である事を示そうと腕をグルングルンと回すと、ガクッと肩の関節が外れて落ちた。
「「「ブランシューーーッ!!!」」」
「あらやだ、ほほほ、ワタクシったらはしゃぎ過ぎちゃったみたい」
家族が驚いて慌てるが、ブランシュは外れた肩をはめ直しながら笑って誤魔化す。
「ブランシュ、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫ですわ、お兄様。きっと階段から落ちた拍子に少しズレていたのでしょう。ほらこの通り、手も動きますし」
また肩が外れたら困るので今度は大きな動作は避けて手の平をグーパーさせて恐恐と訊ねてきた兄に見せて示した。
デリケートな状態なので体の扱いには気をつけるようにと聞いていたが、腕を回したくらいで肩が抜けるとは。
これ程までに脆くなっているとは聞いていない。
あの女神め、とブランシュは心の中で悪態を吐いた。
実を言うとブランシュはただ生き返ったわけではないのだ。
彼女は女神との契約によりある目的を遂行する代わりに、第二の生と望みの来世を手に入れたに過ぎない。
今世は生きているのに死んでいる、いや、死んだまま生き返ったと言うべきか。
そう、彼女はアンデッドになってしまったのだ。