はじまりの合図
あの暑さと寒さが入り混じった日々のことを僕たちは一生忘れることができないであろう。夕日に照らされ赤い顔をした、冷たさを失いつつあるコーヒーの缶を見ながら、佃将一はそう思った。
佃は現在、入社二年目となる中堅メーカーの製造管理部門で働いている。当初は研究部門で働きたいと思っていたものだが、今ではこの部門でよかったと思うようになってきている。学生の時は研究しか知らなかったがゆえに配属当初は落ち込んだものだが、仕事が慣れるにつれてそのようなことは頭から離れていった。
地元を離れてから八年となり一人暮らしは慣れたものだった。はじめは気合を入れていたが、徐々に手の抜き方を覚えていった。それは社会人になって自身で動かせるお金が増えたことでより顕著になった。それは財布の中のレシートの束が外食の多さを指し示していた。また、付き合いでの飲み会が増えたことで体重増加の因子を増やしつつあり、そろそろ運動をしないと本格的にまずいなと考えつつあった。特に、帰省の際に電車に乗り遅れそうになり駅へ向かって走った時の息が切れるまでの速さを感じて以来、より強く考えていた。そのため、会社の帰りにスーパーで買った唐揚げ弁当を食べながら、週に一度か二度仕事終わりに通えそうなジムをネットで探しているときに、その通知が来た。