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それぞれの1日~友香里、海老原~


私は姉からの猛追が体に残ったまま、学校にたどり着いた。


朝から人生を謳歌しているであろう元気な高校生が廊下や教室で騒いでいる。


私も高校生だが、色んな苦労を経験すると人は内面的に老けてしまうのか。


教室に入り、何ともなく席に座る。


まだホームルームまで時間がある、読みかけの小説てもと思ったその時だった。


「おはよう、安城さん」


声の方へ振り向くと、クラスメイトの海老原君がいた。


彼がどんな人生を送っているか、見当もつかないけどその貼られた様な笑顔を見る限りは歳にあわない苦労をしていると感じた。


「おはよう」


私が力なく返事をしても、彼はどことなく嬉しそうだった。


良く分からないが。


「安城さんは今朝何を食べてきたの?」


彼なりにコミュニケーションを図ろうとしているのは伝わる、でもこの質問はタイミングが悪すぎる。


「今朝は何も食べてない」


「じゃあ空腹って事?」


何故二度手間の質問をしてきたのか


「そうだよ」


「ちゃんと食べないとダメだよ、女の人は特に」


最後の言葉は捉えようによってはセクハラに聞こえる、考えすぎだろうか。


「でも私、朝あんまりお腹すかないから」


「良かったらこれ食べてよ」


私の話を遮ってまで彼が差し出したのは、何の変哲もないただの菓子パン。


「ありがとう、いただくね」


後で捨てるつもりだけど、彼が渡したものは何か得体が知れない気がする。



私は思った。


人付き合いが苦手な私は、誰に対しても無愛想で接してしまう。


お陰さまで用事がある時以外は誰とも話さない。


しかし、今目の前に立っている海老原と言う男はどうか。


世間一般で言う、他愛もない会話と言うのを私としようと四苦八苦している。


何故私なんかと話したいのか。


「安城さん?」


彼の声ではっと気づく。


「ど、どうしたの」


「何かすごい顔していたよ」


あなたに言われたくない。


「ごめんね、ちょっとボーッとしていた」


「ちゃんと寝ないとダメだよ、じゃあまたお昼休みね」


彼の言ったお昼休みとは、図書委員の活動の事である。


図書室が開放される昼休みに、貸し出しの管理を行うのが私達図書委員の仕事である。



そして、今日の管理当番は1年である私と海老原君だった。


思い返すと私は本を読むのが好きで図書委員に立候補したのだが、彼の場合はどうだろうか。


文学的小説はわずかながらに似合いそうな気配はする顔ながらも、学校で本を読んでいる所は見た事がない。


ラノベ、彼はそれを読んでいるのだろうか。


正直、彼から醸し出される根暗な雰囲気からしてラノベを読んでいる姿が想像に容易い。


きっと表紙は自分なんかよりも年下の女の娘が描かれていて、中身は18歳のラインギリギリなんだろう。


そんな彼が図書委員と言う肩書きで私の隣にいる時間がある。


つくづく周りの人間に恵まれないと私は感じた。


特に家族関係、1番大事なのに。


鼓動が高鳴る。


緊張する。


僕は何度も同じセリフを頭の中で反復していた。


「おはよう、安城さん」と言う何ともないただの挨拶。


しかし、こう言う時の印象は大事である。


声のトーン、速さ、表情。


1人で男子トイレの個室にこもり、スマホの画面を鏡がわりにしながら何度も練習する。


はっきり言って僕は安城さんに恋をしている。


初めて同じクラスとして出会ったその日から、君のその儚げな雰囲気に引き込まれてしまった。


今ならそう思えるんだ、好きだと。


どうして今になって僕はこんな台詞が思い付くんだ。


海老原博人、頭の中で思い描くハッピーエンドに向けて今は種を蒔く段階である。


落ち着け、僕なら出来る。



僕は勇気を持って彼女に話しかけ、世間話をして昼休みの確認をしてから席に戻った。


今日の彼女はまた儚げな表情である事には変わりはなかったが、1つ気になる所があった。


さりげなく額を見たら、微かに見える傷跡。


いつ頃出来たのだろうか、と言うよりもなぜそうなったのだろうか。


もしかして、本当は彼氏がいてその彼氏とやらに暴力を振るわれていて・・・。


と言うか、本当に彼氏なのだろうか。


彼女は確かに地味な雰囲気ではあるがそれに飲み込まれているだけで、特段変な顔と言うわけでもない。


むしろ、好意を抱いている男がここにいる限りは中の上と言ったところだろうか。


あらゆる妄想が頭の中を駆け巡っては、否定と消去を繰り返すばかり。


でも、やはり安城さんはああいう人がタイプなんだろうか。


3年の進藤立道先輩。


進藤先輩、カッコいいし死ぬほどモテるからな。


やはり安城さんも進藤先輩のファンクラブに入ってるのかな。

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