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恋の調べ

ミセス・アヴァは素晴らしい仕立て人だった。

フェリクスから依頼をうけた彼女は、採寸をした翌日には、昼用のドレスと夜用のドレスを一枚ずつ持ってきたのだ!

沢山のお針子を抱えるミセス・アヴァならではのスピードなのだろう。

しかし、2枚も贈るとはルナは思ってもいなかった。


どちらのドレスもルナに合わせたもので、デザインといいサイズといい素晴らしくルナに似合った。

淡いピンクの夜用のドレスは繊細な雰囲気で愛らしく、昼用のドレスは淡いブルーに白のレースが上品でどちらも着てみると、ルナの魅力を引き出してくれた。

ドレスに合わせた帽子や手袋、靴にバッグに扇まですべてフェリクスの名で来たのだ。


音楽会には、仕立て直しをしてくれたララには悪いが、フェリクスの送ってくれたピンクのドレスを切ることにして、仕度をした。

ララも気を悪くした風ではなく

「謝ることなんてありませんわ、ルナお嬢様。とってもよくお似合いですもの。いつもお姉様のお下がりで満足されてて、お姉様方とは似合うものが違いますのに…」

メイドたちはうきうきとルナの新しいドレスを喜んで着せてくれて、髪型をドレスに合うようにあんでくれた。


フェリクスが迎えに来たと、従僕が伝えにくると、メイドたちも嬉しそうに

「いらっしゃいましたね!ルナお嬢様!」

とみんな嬉しそうに送り出してくれた。


ルナは恥ずかしくなるが、フェリクスの元へゆっくりと歩いていった。

フェリクスは今日はブルーグレーのフロックコートだった。

もしかして、ルナの瞳の色に合わせたのだろうかと変に勘ぐってしまい、ルナは自分が可笑しくなった。自意識過剰だと戒める。


「フェリクス様、ドレスをありがとうございました」

「ミセス・アヴァは良い仕事をしてくれたようだね?とても似合ってるよルナ」

にっこりとフェリクスは微笑んだ。


四頭だての馬車に乗り込み、ルナはフェリクスのタウンハウスに向かった。

ウィンスレット公爵邸は、おそろしいくらい華麗で広々としていて、ルナは屋敷に入る前から緊張しすぎで固まってしまった。

「そう、緊張しなくてもいい。今日は本当に親しい仲間たちしか来ていないから」

「そうなのですか?」

とはいえフェリクスの親しい仲間といえば上流貴族しかいないであろう…。


想像通り、フェリクスの仲間としてキース、アルバート、レン、フレデリック、イアン。ユリアナ、ダイアナ。それからアデリン、アナベル。アニス・オルブライト、キャンディス・ブリースデール。

といったいずれも上位貴族の面々だった。

しかし、フェリクスとジョージアナが企画した音楽会はぐっと砕けたもので、はじめはウィンスレット公爵家の出資する楽団の演奏を楽しんだ後は、食事をとり、その後はそれぞれに楽器を奏でる。


はじめ、ジョージアナはピアノを弾き、フェリクスはヴァイオリンをフレデリックがヴィオラ、キースがチェロを合わせて演奏してスタートだ。続いてユリアナとダイアナがピアノで連弾をして、アニスがジョージアナのピアノで歌った。

アデリンが

「ルナは歌がすごく上手だったわ!聞かせて!」

と盛り上がった頃に言い出し、躊躇いつつもルナはピアノの前に座った。

くだけた場であるから、古典よりも今流行の歌を選び歌いだした。みんな知っている曲であるらしく、ルナに合わせて口ずさんでくれたのでルナは楽しく歌いきる事が出来た。


アルバートが、ユーモラスな舞踏曲を弾き、最後の方はみんな面白おかしく踊ったのだった。お酒もかなりまわっていたので、レンやフレデリックはかなり酔っぱらっていたし、ジョージアナやキャンディスもかなり笑い、踊っていた。

フェリクスの言う通り、ぐっとくだけた音楽会となったのだ。


「さぁ、そろそろ送っていくよルナ」

酔いつぶれた仲間たちがそろそろ出始めた所で、フェリクスがルナに言った。

すでに時間は夜中を過ぎていた。

「フェリクス、襲うなよ」

くくくっと笑いながら言ったのはレンだった。かなり酔っぱらっているらしく、顔もあかくアルコールの香りが漂っていた。

「誰が、なにをするだって?」

フェリクスは笑いながらレンの胸を突いた。

フレデリックとイアンはすでにソファでぐったりと眠っていた。アデリンとアナベルはすでに客間に連れていかれていた。


「本当は泊まるように言いたいけれど、はじめて訪問した家に泊まるのは気を使うかなと思ってね。次は遠慮なく泊まるといい」

泊まる、というのにルナは他意はないだろうというのに照れながらうなずいた。

ルナ自身も少し酔っていたけど、フェリクスもかなり飲んでいたので酔いは回っているのかも知れない。いつもより雰囲気がくだけている。

馬車に隣同士で座り揺られていると、そっとフェリクスの方に抱きよせられたけれど、眠たさとお酒のせいかルナは正常な判断は出来ていなかった。


屋根がない馬車に風が心地よく、火照った体にはちょうど良い。

「寒くない?」

フェリクスがブランケットをしっかりとかけてくれる。

ルナはうなずいた、覗きこんだフェリクスの顔が近づきルナの唇とフェリクスの唇がそっと触れた。どちらから近づいたのか…


柔らかな感触は心地よく、もはや何も考えずに与えられるそこ行為にルナは夢中になった。次第に遠慮なくなるフェリクスのキスを恍惚となり受け止め続けた。


カタンと、馬車が止まりブロンテ邸についたと朧気に気づいた。

お互いに見つめあったまま、

「…着いたね…」

フェリクスの声はかすれていて、少し乱れた前髪がはらりと額にかかった。男らしい色気にルナはくらりとした。


フェリクスが馬車から降りて手をとりルナを下ろした。

言葉もなく、フェリクスとルナは玄関まで歩き、そのまま邸内にルナは入り

「お休みなさい、送って下さりありがとうございました」

微笑むと、フェリクスは髪をかきあげて、微笑んだ。

「では、また」

と軽く会釈をして馬車に向かっていった。



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