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姉の恋

是非にと誘われたシャロット伯爵家には、レン 23歳、イーサン 21歳、ケネス 19歳と三兄弟がいた。

この日は、ステファニーに婚約者アンドリューの弟のジュリウスを紹介され彼をエスコート役にして来ていた。ジュリウスはレオノーラと同じく近衛騎士をしている。騎士姿のジュリウスは文句なく格好よくて、ステファニーも自信満々にルナに紹介したのだ。ルシアンナは今日はブライス・デボアをエスコートに選んでいた。


「姉妹揃ってきてくださったのね!」

ホールに着いたブロンテ姉妹を、シャロット伯爵夫人が喜んで迎えた。年頃、身分共に息子たちにあう姉妹は大歓迎だとありありと顔に現れている。

「レオノーラはおりませんが…」

「ええ、レオノーラ様はなかなか来てくださいませんものね。残念ながら…」

夫人はそれでも美人な姉妹が3人もきたので満足そうだ。

姉のお下がりのドレスのルナには少しガッカリしたかのように見えたが…。


エスコート役のジュリウスはすらりとした肢体に金茶の髪に青い瞳のなかなかの好青年にみえ、若々しい顔には愉しそうな笑みが浮かんでいるが、彼はルナを子供扱いをしてるように感じた。

その事にルナ自身気後れを感じて打ち解ける事が出来なかった。


後ろから入ってきた人物に、ルナは驚いた。


またフェリクスと目があったのだ。

「こんばんは、奇遇だね」

くすりとフェリクスが笑いながら近寄ってきて、ステファニーとルシアンナにも挨拶をして、3人のダンスカードに申し込んだ。

共に来たらしいキースとアルバートもルナのカードに名前を書いてくれて、着実にルナのダンスカードは埋まって行った。


レンと友人らしい彼らはそのまま一画に楽しそうに語らいながら向かっていった。

「さすがに目立つ方たちね」

ルシアンナがほうっとため息をついた

「アルバート卿をみた?ルナ」

黒い髪に青い瞳のアルバートは、表情があまりかわらず冷淡な印象の貴公子で取っつきにくくルナには感じるが…

「これまでダンスの機会がなかったのよ!」

ルシアンナが、こそっとルナに嬉しそうに言ってきた。

気になる相手がいても、誰かに紹介されるか、男性から申し込まれるかしないとダンスの機会はない。

まして、ルシアンナはダンスカードはすぐにいっぱいで主催者も気を使って紹介などなかったのだろう。

意外だなとルナは頬を染めているルシアンナを不思議な気持ちで見つめた。


ブライスはルシアンナにとってはあくまで友人の一人であるようだ。黒い髪に琥珀色のブライスもなかなかの男らしい青年ではあるのに…。

「ルナに感謝ね…!」

ルシアンナはアルバートの後ろ姿をじっと見つめていた。


フェリクスはこの日も、2曲ダンスを約束してくれていた。シャロット家の三兄弟も、ルナのダンスカードに名前を連ねてくれ若い独身男性でルナのカードはすべて埋まった。


一曲目はジュリウスから、ジュリウスはどうもルシアンナの方が気になるようだとルナは思っていた。

「ルシアンナじゃなくてごめんなさい、ジュリウス様」

とそっと言うと、照れたように笑い

「ルシアンナは人気者だからね、だからってルナが嫌とかじゃないんだ」

と少し焦って言ってきた。

「いいのです。慣れてますから」

ルナは微笑んだ

一曲目が終わると、ルシアンナと約束していた彼はルナから離れてルシアンナの方に向かった。


ルナは一人で次の相手、ブライスを待った。

ルシアンナの元へジュリウスが行ったので、ブライスも気を使ってルナを探したのだろう。

にこにこと、飲み物をもって来てくれた。

「どうぞ、好みのものだといいんだけれど」

ブライスはシャンパンを差し出した。ルナは少しずつそれを飲んだ。ブライスはとても紳士的で、ルナにも丁寧に接してくれたが、やはりルシアンナの妹と見ているようだった。


レンは楽しい人物で、踊る間も実は◯◯卿はかつらだ、とか、◯◯卿はこんな失敗をしたとかこそこそと話して、笑わせるのでルナは足を踏まないようにするのに必死だった。

弟のイーサンとケネスは、口説き文句を言うのが上手く、ルナは赤面してしまいまたまたステップを間違わないようにするのに必死だった。


フェリクスはワルツに名前を書いてくれていた。

しっかりとホールドされるその腕にルナはやはりドキドキした。

「今日も楽しんでる?」

「ええ、もちろん」

ルナは微笑んで返した。

「レンは楽しいヤツだろう?」

ルナはくすくすと笑って、うなずいた。

ふと見るとルシアンナはアルバートと踊っていた。

「あの…アルバート卿は恋人はいらっしゃるのですか?」

ルナの問いに、フェリクスは目で問いかけてきた。

「ルシアンナが…」

「ああ、そういうことか…」

フェリクスは小声で

「多分いないはずだ。私の知る限りは」

とにやりと笑った


ワルツの後は軽食をとる時間があり、ルナはフェリクスと共に座りフェリクスがお皿に少しずつ料理を取ってきてくれた。

ステファニーはアンドリューと座り、ルシアンナは無事にアルバートと座れたようだ。

ブライスもジュリウスも相手を見つけられたようだ。


フェリクスが取ってきてくれた一口ずつ沢山の種類が載った料理は、ルナのお腹に程よく治まり、エスコートの巧みさをまた感じた。

「ジョージアナはね、ものすごくうるさいんだ…」

ルナの考えを読んだかのようにフェリクスが苦笑しながら言った。

「妹だけに、兄には容赦がない」

ルナはうなずいた。

「きっとうちもそうです。お兄様には遠慮なく文句を言うと思います」

ルナはくすくすと笑った。


フェリクスは、次のキースが来るまで相手をしながら待っていてくれた。フェリクスと並ぶほど人気のあるキースは、低く甘い声をしていて、ルナは大人の魅力にドキドキした。

「フェリクスは随分君に優しく接しているね」

「あ、はい。そうですね、フェリクス様は紳士的で親切な方ですね」

「親切…?」

「デビューのエスコート役を引き受けてくださって、その上に色々と気づかって下さいます」

ルナはにこやかにキースに言った。キースは苦笑すると、

「そうか、親切なフェリクスなんだね?」

くすくすと可笑しそうに笑った。

「え?ええ…」

おかしいことを言ったのか、ルナは気になったものの聞かなかった。


次はアルバートだったので、ルナはルシアンナを探した。

「お姉様、次のお相手は?」

「えっ?あ、フェリクス様よ」

「私は次はアルバート卿なの。変わってもらう?」

ルシアンナはぽっと頬を赤らめていいの?と小声で聞いてきた。

フェリクスなら話をすれば変わってくれるかもしれない。

「フェリクス様、次のダンスはルシアンナでしょう?アルバート様と変わってもらえないかしら?」

「なるほど?それで私の相手はルナがしてくれるのかな?」

ルナは微笑んでうなずいた。


「アルバート、」

とフェリクスはアルバートに耳打ちをして、うなずくとルシアンナにダンスを申し込んだ。

ルシアンナは嬉しそうにアルバートの手をとった


「ふぅん?レディ ルシアンナのあんな姿ははじめて見かけたな…いつも男たちに囲まれて、退屈そうに笑っていたのに」

フェリクスが言った。

「私もはじめて見ました」

と微笑んだ

姉の蕩けるような笑顔は、とても可愛らしくてルナも嬉しくなる。

じゃあ、とフェリクスがエスコートしてダンスがはじまる。


そして…何人かと踊ったあと、最後の曲は再びフェリクスとだった。

あっ、とルナは戸惑った。

「フェリクス様、どうしましょう。私たち3曲目…」

「誰も私たちが3曲目だなんて気づかないさ」

フェリクスはくすりと笑った。


同じ相手と3曲踊ることは、特別な仲だとされてもおかしくはない。続けて踊っていない事もありルナはそのままフェリクスに促され最後のダンスをフェリクスと踊ったのだ。


ステファニーとルシアンナの元にエスコートしてくれたフェリクスは馬車に乗るまで見送ってくれた。

「ねぇ、ルナ。フェリクス卿と3曲踊ったって本当?」

ステファニーが馬車に乗り言ってきた。

「えっ、と…。本当なの、お姉様気づいてた?」

気まずくおずおずと聞いてみる。

「シャロット夫人が、言っていたわ」

「いいじゃないのステファニー。ルナはフェリクス卿のこと嫌いじゃないんでしょう?固いこと言いっこなしよ」

ルシアンナはルナを庇うように言った。

「ルナ、今日はありがとう。ルナのおかげよ」

ルシアンナと交代したからフェリクスと3回踊った事をステファニーは知らない。

ルナはにこっとルシアンナに微笑みかけた。


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