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カーテンの裏で

春の王宮で行われる大舞踏会があり、ルナは正礼装を身に付けていた。

この春に騎士団をやめたレオノーラと共に新しくドレスを作ったそれは、いつもより、色々と規定があり、後ろは長く裾を引き、左腕につける紐が裾についていた。左胸にはブロンテ家の紋章を金の糸で刺繍した飾りをつける。

色は淡い色が望ましく、ルナのものはペールピンクでレオノーラはクリーム色。ステファニーは淡いブルーでルシアンナは淡いローズカラー。

男性たちはこの国の正装の軍服だった。濃紺の上着に、白の膝たけのズボン。黒いロングブーツ。上着には金の飾り緒とボタン、階級をしめす紋章が、きらびやかについている。

どちらにしてもうんざりふるほどの重装備で、王族になると、冠や、ティアラをつけて、毛皮つきのマントを着けた。


ラファエルも参列するのでブロンテ家は一家揃って王宮に向かったのだった。


家族ごと順番に拝謁するので、ルナも両親と共に国王一家に礼をとった。

豪奢な衣装を纏い、国王夫妻はアルマンにお決まりの言葉をのべた。


一通りの拝謁が終わると、晩餐が出される。ルナもラファエルの隣に並び料理を堪能した。


晩餐が終わると、ラファエルと共にいたルナに、フェリクスが寄ってきた。

「今日のダンスはまだ空いているかな?」

「フェリクス様、ええもちろん」

フェリクスは、空いていたワルツの曲に約束をした。


ルナの一曲目はキアランだった。

「やぁルナ。今日もとても可愛いね」

「…ありがとうございます…」

にこやかなキアランに、ルナはこの間嘘をついて断った事が後ろめたく、うつむきがちで踊った。


レオノーラは一曲目はキースからだった。レオノーラにはたくさんのダンスが申し込まれ、レオノーラはしかめ面で応じていた。

しかめ面だが、美貌のおかげですべて許されていた。


ステファニーもルシアンナもたくさんのダンスが申し込まれていたけれど、ルナはこの日は目立たないように気を配っていた。

特に後半のダンスは約束をいれたくなかったのだ。


この日はたくさんの紳士淑女がひしめいていて、ルナがダンスを踊っていなくても、誰も気づかないに違いない。

ルナはお馴染みとなった独身の貴公子たちと踊る約束をいれると、どきどきとしながらフェリクスとのダンスを待った。


やっとフェリクスとのダンスの順番になったとき、ルナは緊張のあまり息がとまるのではないかと思ったくらいだ。

始めてみる軍服のフェリクスは息を飲むほど格好よく、階級のメダルが光っていた。間近で見るとよりいっそうその魅力はルナの心を捉えて揺さぶった。


ワルツが終わると、ルナはそっとフェリクスの耳元で

「11時に、北の回廊で」

とだけそっと伝えた。

大胆な自分の行動にどきどきし続けていたけれど、ルナはシャーロットの助言を実行しようとしていた。

二人きりで話すために。

聞こえたか不安になりつつ、見るとフェリクスは平静なままそっとうなずいたように見えた。


大広間の回りには回廊があり、少し休憩が出来るカーテンで仕切った窓のある小部屋があった。

時間までルナはダンスをこなすと、パウダールームに向かいそれから広間に戻らずに回廊で、フェリクスを待った。


回廊にある時計は、そろそろ11時を誘うとしていた。

ルナはカーテンの隙間から、向かってくる人物がフェリクスで近くに人がいないことを確認すると、

「フェリクス様、ルナです」

と小さく声をかけ、フェリクスをカーテンの中に誘った。


来てくれた!とルナはそれだけで胸が高鳴った。

「ルナ…無茶な事をする…」

フェリクスは低くひそめた声で言った。

「でも、来てくれたわ」

ルナも小さく囁くように言った。

「二人きりで話したかったの」

小さな小部屋であり、フェリクスとルナの距離は近く、呼吸の音が聞こえるほどだ。


衆目のない二人きりの空間がルナの秘めた想いを溢れされていく。


「何を…」

フェリクスが冷静な風なのに胸が苦しくなる。

ルナは、苦しいほどに彼が好きで好きで苦しいのに。


「何を、だなんてひどいわ…フェリクス様」

沸き起こる衝動に突き動かされるようにルナは、行動していた。

ルナはそっとフェリクスの手に触れ、心臓の上に持っていった。

「ルナ!やめろ…」

「私の心は貴方のものなの、フェリクス様。こうしているだけで、苦しいくらいなの」

フェリクスは驚愕の表情を浮かべたが、


「君は、どうしてこんなに俺を狂わせる…!」

とルナの唇にキスをしてきた。

荒々しいほどの口づけは、ルナに歓びをもたらし知らず涙が溢れた。その行動に彼の熱い想いが感じられる…。


「ルナ、すぐに俺をひっぱたくか、突き飛ばすか、やめろと言うんだ」

唇を離したフェリクスは、低く掠れた声で言った。

「そんな事したくない。だって私は貴方が好きなの、お願い突き放さないで」

「…ルナ…」

フェリクスは、名前を囁くときつく抱きしめて濃厚なキスをし続けた。

ルナはフェリクスの背に腕を回して、官能的で甘美なそれを時を忘れて受け止め続けた。

身体を離したフェリクスは

「…いつの間にこんな顔をするようになったのか…」

「私がもし、変わったのなら…それは貴方を愛してしまったからよ、フェリクス様」


フェリクスはふと、微笑むと

「私だって君に乱されている。だが……これ以上は一緒にいては駄目だ。広間に先に戻れ」

「いや…まだここにいたいの…」

フェリクスは首を横にふった。

「君は男をわかっていない。先に戻るんだ」

真剣に言われて、ルナはしぶしぶ戻ることにした。


そっとカーテンから外に出ると、人通りはなくルナはそっと広間に戻った。


広間に戻って、何事なかったように続けられていた舞踏会。

ほっと息をはくと、本来聞きたかった事。結局…アネリの事は一つも聞けなかった。本音は知りたくないし、でも、気にせずにはいられなかった。

想いを通わせられた今も。


アネリに対する気持ちが嫉妬だと、ルナは気づいた。

ルナを抱きしめた腕は、彼女を抱いたのだろうか、キスをした唇は情熱的にキスをしたのだろうか、アネリに対して嫌な気持ちが吹き出してルナは辛くなった。

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