表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染は譲れない!  作者: 揚羽 楓
第二章 幼少期編
9/32

8 私の家族

 

 私はシャルル・トルクール。4歳。


 二歳違いの兄のベルタと二人兄弟。父はアルバート。母はナノア。


 3歳になったとき、シャルルの意識は瀬奈になった。


 背が低くなって見る異世界は新鮮だった。


 考え方は18歳だが、ものの見え方や好奇心は年齢相応になっているのかもしれない。


 私は金髪だった。まぁ両親も兄も金髪なのだし、普通なのだが、初めて気づいた時は驚いた。村の人も髪の色は様々で、青もいたし、緑もいた。そういう世界なんだろうと理解しておく。


 小さな村に貴族として居を構える両親は、民のために何ができるかを考えていた。


 私たちの家は比較的、まともな貴族だった。ただ、没落貴族ということもあり、兄のベルタにかける期待は凄まじく、兄は過剰なプレッシャーに日々苛まれていた。この世界の貴族というものは、勉学と剣術、魔法の腕などで決まるらしい。だから、貴族同士での決闘などざらにあるそうだ。

 だけど、どれかに秀ていれば、それを使って、王国内で名声を得ることができる。勉学が優れているものは宰相。剣技では騎士団長。魔法では王宮筆頭魔術師。その他の分野、例えば経理学などは、それに相応する経済大臣という職がある。

 ただ、普通、有力貴族の息子は幼いころから英才教育を施され、三要素すべてができる者が多いそうだ。だから、幼い頃は三要素を平均的に習わされるらしい。


 

 私はというと、上流貴族に嫁にもらってもらうために、こんな小さなころから、花嫁修業やら、メイドのような家事のいろはも教えられた。

 前世が元々、兄弟の世話をするために家事全般をやっていたので、比較的うまくできた。洗濯機や水道もないので、洗濯や井戸への水汲みは骨が折れたが。


 ただ、兄は過剰な期待に耐えかねたのか、父の剣や魔法の訓練をサボるようになった。私から見てもわかるくらい兄には剣や魔法の才能は無かった。


 私が花嫁修業やらをやっている途中にも、兄が父に連れられ、嫌々訓練をやらされるところを時々見た。結構部屋が離れていることもあるし、違うことをしているので話す話題もない。食事は一緒だが、食事中はお行儀が悪いとかでしゃべってはいけない決まりになっているし、意識が瀬奈になってから早2か月、まだ一言も兄と話していなかった。


 私の父のアルバートは、堅物というのがお似合いの人だった。厳格で人を寄せ付けないタイプで、口数はいつも少なかった。


 母のナノアはそれはとても優しかった。元は冒険者だったらしく、活発なのは今でも変わらないのだが、やるべきことはしっかりとやり、貴族なのだが身の回りのことはすべて自分でやっていた。私にも注意するべきところはしっかり注意し、褒めるところはしっかり褒めてくれた。私にはこっそりとやりたいことをやりなさいと言ってくれた。


 元の世界では、両親と過ごす時間が少なかったのもあり、ナノアとはよく話をした。若い頃の冒険の時の話とか、アルバートとの馴れ初め、覚えておいたほうがいいこと、私が聞けば、知ってることは何でも教えてくれた。


 最近は文字を書く、読む練習をしている。新しい文字が読めるようになるのは面白い。家にある絵本や辞書など読み漁りながら、母と一緒に文字を覚えることが毎日の日課だ。


 日本での生活は遠い昔のようだった。なにか日本というか元の世界への執着が減ったというか無くなったというか、あまり思い出さなくなっていった。

 思い出せない訳ではないのだが、何か、日本での記憶は他人事というか、別の人の記憶のように思えた。


 だが、佑真とだけは会いたい!

 そのためにも、今はこの家で生活し、一人で出かけられるようになったら、トトとの約束を守るためにルビスに行ったあと、佑真の生まれ変わりを見つけようと思っていた。



 そんなある日、兄から部屋に招かれた。



「なぁ、シャルル。俺はどうすればいいかな。お前は聡い。物分かりがよくて、一回言われたらすぐできるようになる。家事も貴族としての行動も4歳にしてほぼ完璧だろう。最近、わかるんだ。俺への期待が薄れて、お前に期待をかけてきてるってのが。俺はお前に任せてもいいのか?一刻も早くトルクール家を復興させなきゃいけない。こんなことを当人に言うのは違うと思うんだが、父様や母様には言えないしな。それで、相談したんだ。」


 

 ベルタはそう言った。ん~瀬奈になって初めての会話がこれかぁ~。


 正直、重い・・・。この世界の人は6歳でこんなことを考えるんだ・・・。


 ただ、気持ちはわからなくはなかった。私も元の世界では一番上だったし、勉強面や生活面で両親からの期待は確かにあった。だけど、この世界ではまた違うからな・・・。



「兄様、私は兄様にこの家を継いでほしいのです。私は私のやるべきことをやります。兄様は兄様のやるべきことをやってください。私たちトルクール家は確かに今は没落貴族なので、名声を得ることは大事かもしれませんが、それとは別に村の民を守る義務があります。何も、兄様を兄様たらしめるものは剣技と、魔法だけではないでしょう。勉学や商学、工学、政治学など別の方面で兄様が光れるものがきっとあります!兄様は兄様にしかできないことをやるんです!」


 


 やばい・・・調子に乗ったかな・・・

 結構偉そうなことを言っちゃった気がする。


 だが、そんな瀬奈の心配は杞憂に終わった。


 ベルタは私に泣きながら抱き着いてきた。



「シャルルは凄いな。兄様よりずっと凄いよ。シャルルに相談してよかった。父様に言って別の方面を頑張ってみたいといってみるよ。ありがとうな。」


 

 ベルタはその日以来、勉学を頑張るようになった。少し遠い町から家庭教師を呼び寄せ、精力的に勉学に励んだ。それと私たちの仲は結構良くなった。私もベルタも見えない壁をお互いに作っていたし、話す暇もないと思っていたのだが、意外にあることに気付くと、たまにお互いの部屋に呼んで近況を話すようになった。


 

 ただ、ベルタに剣術や魔法を教える時間が無くなり、暇な時間が多くなったアルバートは、少し不機嫌そうにしながら毎日剣を振っていた。


 

 三か月後、私はこの世界の文字を読んだり、書いたりできるようになった。これはアルバートもナノアも驚いた。普通速くても5歳くらいに覚えるそうなのだが、ここまでとは、と私の成長具合を褒めてくれた。

 

 ベルタにもそのことを伝えると、


「やっぱシャルルは凄いな。俺はやっと文字の読み書きをできるようになったのに。これから計算と帝王学を学ぶつもりなんだ。シャルルに抜かれないようにしないとな。」


 

 ただ、私は計算もすぐできてしまった。元の世界の小学校で習ってるわけだし、四則混合の計算はすぐできた。


 またも、両親は驚いていた。


 ベルタは苦笑いしながら私に言ったのだ。


「シャルル、やっぱ僕と変わらないかい?」


 


 私はこれ以降、勉学には関わらないでおこうと固く心に誓った。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ