3 波乱の予感
「佑真!」
瀬奈は自分でも何が起きたのかわからずに立っていた佑真へと駆け寄った。
「お、おう。案外倒せるもんだな・・ははは・・・」
「もう・・やめよう?佑真が戦うの、怖くて見てられないよ。最後のよくわからない攻撃だって、佑真がナイフを投げてなかったら、死んじゃったかもしれないんだよ?」
「あぁ。もう無理はしないよ。身の程をわきまえたというか、生身の俺が太刀打ちできるもんじゃないな。あの魔獣は。」
佑真も分かったようだった。あんな化け物、一匹だったからギリギリ不意打ちで倒せたものの、群れで来られたらひとたまりもない。
「とりあえず、武田先輩だ。探さなきゃいけないのは変わらない。でもあの魔獣が出てきたら、気配を消して隠れる。それでいこう。」
瀬奈は頷いた。
それからというもの、魔獣には何体も出会った。出会う度に近くの木や茂みに隠れ、進んでいく。
すると巨大な岩が見えた。
「なに、これ?」
「んん・・。あっ!ここに文字が書いてあるぞ!」
そういった佑真に瀬奈が近づくと確かに文字が書いてあった。
ただし全く読めない。
「何語?コレ?」
「うーん。異世界の言語なんじゃないか?」
「やっぱり、ここって異世界なんだ・・・」
「まぁ、それしか考えらえれないだろ。」
いくらか解析してみようとしてみたものの、読めないものは読めない。
「これはたぶん俺達には関係のないものだ。歩くぞ。」
「うん。」
歩き始めようとした、その瞬間とてつもなく大きい音が響いた。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
「何だ!?」
佑真は後ろを振り返った。
どうやら自分たちが歩いてきた方向から音がしたらしい。
何なんだ、一体・・、あっちの方には崖があったはずだ。何か破壊するようなものでもあっただろうか。
すると今度は前方から音が聞こえてきた。
ドドドドドドドドドドドドドドドドド
何か来る!
とっさに瀬奈と佑真は瀬奈を佑真が抱きしめる形で、一番近かった木の後ろに隠れた。
音が近づいてきて、周りを見ると凄い数のさっきの黒色の魔獣が、瀬奈と佑真が隠れている木のすぐ横を通り過ぎていった。
すべてが通り過ぎた後、緊張を解き、二人でその場に座り込んだ。
「何だったんだ。今の?」
「知らないわよ、でも、たぶん今行った数が相当だったから、この森の中にはもういないんじゃない?探すなら今だと思うけど。」
「そうだな。よし、いくぞ!」
それからは一匹たりとも遭遇しなかった。
そしてついにメロンパンを発見した!
「佑真!メロンパンあった!」
「よし、これでたぶん武田先輩に近づくはずだ。」
それからメロンパンのかけら(ところどころ無くなったり、地面に踏みつけられたりしていたが)をたどっていくと、佑真と瀬奈が倒れていた場所に着いた。
「たぶんここだよ!」
「よし、ここら近辺を探すぞ!」
それから近辺を隈なく捜索した。あれから結構時間がたってしまっているが、手掛かりくらいあるはず、と佑真は思っていた。
「あっ、佑真ーー!武田先輩の携帯見つけた!」
「ほんと? あぁ、間違いない。これは武田先輩の携帯だ!」
だが結果を言うとそれ以外見つからなかった。
「ここらは、もう何もないな。」
「そうだね、どうする?」
「でも、おかしいな。武田先輩は携帯の待ち受けを御神体として祀っていたはずだ。それをこんな場所に落としておくか・・・」
「えっ?御神体?どういうこと?」
「携帯を起動させてみろ。出てくるから。」
「あぁ・・・そういうことね・・・」
携帯の画面には結構際どい服を着ている女神の格好をした少女が映っていた。見るんじゃなかった・・・
「佑真もこういうの好きなの?」
「いや、俺はこの子より違う子のほうが好きだ。さすがに武田先輩のように御神体にしたりはしないけどな。」
ほぼ同類だよ・・・違いが分からない・・・まぁ佑真のほうがマシだというのは分かったし、いいか・・・
「とにかく、武田先輩になにかあったんだろう。この携帯を落とすはずがない。」
「ねぇ、佑真。ここにこんなのあったっけ?」
瀬奈の近くに大きな岩があった。
「佑真、また文字があるよ!」
この岩は何なのだろうか。これが武田先輩と何か関係あったりするのだろうか。佑真は考える。
「佑真、佑真!ここに血がついてる!」
血?何か嫌な予感がする。
「瀬奈!その岩には絶対触るな!」
まさに瀬奈はその岩に触れようとしていた。危なかった。
見てみると本当に赤い血がついていた。
ううん、これはどういうことなんだ?
大きな音の後、あの化け物が凄い数、音の方へ向かっていった。あっちの方向は崖だったはずだ。特に何もなかったはず・・・・
いや、槍を作るときに岩をそこら辺にあったさらに大きな岩にぶつけた。
あれがこの岩と、同じものだとするなら、あの崖にあった岩が壊されたことによって凄い数の化け物が動き出したとするならば、この岩の近くにいるのも危ない!
「瀬奈!今すぐここを動くぞ!」
「えっ、なんで?」
「いいから!事情は後で話す!とにかくここから離れなくちゃいけない!」
佑真が瀬奈に声をかけてから、すぐに行動を開始した。方向は分からなかったものの、とにかく岩から離れた。
とりあえず1㎞くらい離れただろうか。
それにしてもこの森は広い。
いくら歩いても終わりが見えない。
事情を瀬奈に告げた。瀬奈は驚いた顔をしていたが、
「佑真に任せるよ。」
と、言った。信頼厚いな~俺。
事情を話し終え、これからどうするか考えている途中に突然寒気がした。
周りを見回す。特に変わったところはないが、霧が出てきた。
「瀬奈、俺の手握ってろ。」
佑真は手を差し出し、瀬奈は怖くなりとっさに手を握る。
佑真は風を感じた。霧の発生源から吹いている、と直感的に思った。
「瀬奈、歩くぞ。」
何歩か歩くと、霧が晴れた。
わけではなかった。霧からは抜け出したものの、霧は確かにまだ瀬奈たちの後ろに存在している。
ドーム状に霧が出来ているのが分かった。
なぜここだけ、霧が発生しているのか、佑真は考える。
「佑真!佑真!」
瀬奈が小さな声で呼んできた。
「魔獣が来てるよ!群れで5匹!」
すぐあたりを見ると遠くのほうから魔獣が5匹近づいてくる。すぐに気配を消し、近くの茂みに隠れる。
すると、その群れの魔獣たちは一列になって霧の中へ入っていく。
「瀬奈!後追うぞ!」
佑真に手を引かれ、瀬奈は気配を消して群れの最後尾についていく。
すると唐突に霧が晴れた。
武田先輩が上半身が無くなった状態で倒れていた。




