16 森の監視者
レオンは頬に何かが当たって目が覚めた。
「んん・・・何だ?」
すると何かが上から降ってきた。
「冷てっ!水じゃねぇか!なんで上から・・・」
なんで水が降ってきたんだ?
昨日の夜、シャルルの氷で地面を塞いだ。
それが融けてきてるってことは、上から火魔法をかけられている!?
「おい、シャルル!アイリス!起きろ!」
「んん~何?どうしたの?」
「アイリス、上になんかいるぞ。気を付けろ。おい、シャルルはどうした?」
「んん、ルルならまだ寝てるけど?」
「おい、シャルルいつまで寝てるんだ!上に何かが・・・っておい、シャルル!」
レオンはシャルルがおかしいことに気付いた。
近づいて確かめる。
「ひどい熱だ。ヤバいぞ、これは・・・オード病だ!」
「オード病ってどういうことなの?レオン!」
「オード病は体内の魔素を使い過ぎて、呼吸が浅くなって高熱が出るんだ。体内の魔素を回復させるまで絶対安静にしてなきゃならねぇ。おい!シャルルもう氷は維持しなくていい!早くここから出て村まで運ばねぇと・・・くそ!一晩も無茶しやがって!」
「ルル!ルル!しっかり!どうしよう・・・どうすればいいの?レオン!」
「まず落ち着け。アイリス。たぶん時間的には朝だ。上には魔獣がいない可能性が高い。ここから出るぞ!」
「でも、この氷を融かさないと・・・」
「大丈夫だ。俺は火魔法が使える。氷を融かして上に出るぞ。」
レオンは指先から火を放ち、上の氷を融かす。
だが一発では氷を融かしきれなかった。
「なっ!どんだけ厚い氷を一晩維持してやがったんだ!コイツは!」
詠唱してもう一発火を放つ。
今度は氷を融かしきれた。
「よし出るぞ!アイリス、俺の肩に上って先に上にあがれ!」
「わかった!」
アイリスが地面の上にあがる。
「よし、シャルルを上から引き揚げてくれ!」
シャルルを二人で上にあげる。
レオンもその後、上にあがった。
「よし、シャルルは俺がおぶる。村に戻るぞ!」
しかし、いくら歩いても辿り着かない。
もうすぐ昼になってしまう。
「くそ!なんで入り口に戻れねぇんだ!」
「ルル、大丈夫?水いる?」
「だい・・じょうぶ・・レ・オン・・・ごめんね・・・」
「もういい!しゃべるな!くそっ!なんでなんだ!」
レオンは焦っていた。
アイリスには言っていないがオード病にはタイムリミットがある。
体内の魔素の量が呼吸が浅くなることによって少なくなっているのだ。
もって夕暮れまでだろう。
森からトルクール家までシャルルをおぶりながら移動するのに結構かかる。その分森を速く出て時間を稼ごうと思っていたのだが・・・
「ねぇ、レオン・・・」
「どうした!アイリスも何か考えてくれ!この森を抜ける方法を!」
「そうじゃなくて・・・霧よ、霧が出て来た・・・」
「霧?」
よく見ると山に近い方から霧が出始めていた。
瞬く間にレオンのいる地帯一体も霧に覆われる。
「くそ!霧だと!?完全にお手上げじゃねぇか。方向も分からなくなっちまった。おい、アイリス!俺の服の端、握ってろ!絶対離れるんじゃねぇぞ!」
「うん・・・」
今までは山から遠ざかる方向に歩けばよかったものの、霧により全く見通しがきかない。
「くそ!どうするどうするどうする!」
「レオン、落ち着いて!こういう時こそ、落ち着けって言ってたのはレオンじゃない!」
「そうだけどよ!時間がねぇんだ!一体どうしろって・・・ん?」
レオンは自分の目の前に影があるのが分かった。
だがそこには何もない。
実体がない?透明?どうなってんだ?
敵なのか?
すると、影から声が聞こえた。
『我が名はボル。東の森の監視者。この森に入り込んだのは貴様らか。』
とりあえず聞かれたので、答えた。
「それは確かに俺らだが・・・そんなことより!頼む!この森から出るのを手伝ってもらえないか?」
シャルルを無言でアイリスに預ける。
レオンは抜刀する構えに入る。
『やはり貴様らか。この森に入ったからには外には出せん。大人しくここで骸になるがいい。』
くそ!やっぱり敵だったか!
影から姿を現したボルは黒いオーブを身に纏い右手に大鎌を持っていた。
大鎌をレオンに向かって振りかぶる。
レオンはすぐに抜刀し迎え撃つ。
ガギンッ!
鍔迫り合いになる。
くそっ!コイツ強ぇ!鎌が重すぎる!
このままやりあってたら俺は負ける!
やり方を変えねぇと・・・
レオンは剣の角度を変え大鎌を受け流す。
レオンは火魔法を詠唱し始める。
そして、自分の周りに火を発生させる。
すると霧がレオンの周りだけ晴れた。
オーブ男は霧に紛れて姿を消していた。
ヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・・
何か風を切る音が聞こえる。
音に集中していると、音が強くなってきた。
目を見張るとオーブ男が持っていた大鎌がすごい速度で回転しながらこちらに飛んでくる。
周りの木々を切り倒しながら、速度が緩まることなくレオンの首を狙って。
レオンはギリギリで大鎌を躱す。
だがオーブの男は別の大鎌を右手に出現させて、霧の中から姿を現した。
オーブ男は大鎌を振りかぶる。
ヤバい!切られる!
躱そうと、上に出来る限りジャンプしたが遅かった。
大鎌がレオンの両足を切断する。
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ-------------------------------------------------------------------!」
レオンの足が切断され、血で地面が真っ赤に染まる。
骨や肉が見え、赤い血で視界が真っ赤に染まりショックで倒れる。
オーブ男は今度はアイリスたちに狙いを定める。
シャルルは剣を支えに立ち上がった。
「ルル!無理だよ!」
「大丈夫・・・だから・・・アイ・・リスは・・そこに・・・いて・・」
シャルルはアイリスを背にして、満身創痍で剣を構える。
だめだ・・・剣を握る手に力が入らない・・・
持ってるだけで精いっぱいだ。
早くレオンを助けて止血しないと、レオンが・・・
オーブ男は大鎌を振りかぶる。
剣を持ち上げる事さえできない。
オーブ男の大鎌が首めがけて迫ってくる。
もう・・・だめなのか・・・
その時、胸から声が聞こえて来た。
「助けに来たぞ。瀬奈。」




