15 森での一夜
三人は森の奥へと進んでいた。
ジャキッ!
「全然歯ごたえがねぇな。」
「そうね・・・全然・・・」
森に入り始めてから少し経った。
二人はため息をつく。
森の奥へと進んではいるのだが出で来るのはスモールジャガーばかり。
まったく歯ごたえのない相手で二人とも飽きていた。
「ねぇ、レオン。この森にはスモールジャガーしかいないの?全然強い魔獣が現れないじゃない。」
「俺は一回だけ見たことがあるんだ。すげぇでっけぇ影を。あいつはAランクに違えねぇ。そいつと戦ってみてぇな。」
「馬鹿ね。Aランクなんか出てきたら私たち瞬殺よ。私一応Bランクまでだったら大体の魔獣はわかるけど、たぶん私たちはがんばってEランクじゃないかしら。D以上の魔獣が来たらすぐ逃げるわよ。」
「へいへい。お前の勘は変なところであたるもんな。従ってやるよ。」
「ねぇ、日が暮れて来たよ・・・帰らないの?」
「アイリス、もうちょっと待って。もう少ししたらすぐ帰るわ。」
アイリスをシャルルが宥めていると、目の前を凄いスピードで何かがかすめていった。
シャルルの頬に切り傷が出来る。
凄いスピードで通り過ぎた何かのせいで尻餅をついた。
通り過ぎた方を見てみると、スモールジャガーより二回り大きな魔獣がいた。
あの魔獣は・・・グレートジャガー!Dランクだ!
一体でいることは珍しく、群れで行動するはず・・・
周りを見渡すと5体のスモールジャガーに囲まれていた。
ヤバい・・・
レオンもアイリスも何が起きたかわかっていない。
速く応戦しなきゃ・・・
だが魔獣たちは立つ時間を与えてくれなかった。
3体がそれぞれに襲い掛かってくる。
剣じゃ間に合わない!
シャルルは無詠唱で水柱を3本出す。
そして瞬時に凍らせ氷柱にする。
「逃げるよ!」
3体が氷柱に激突し気絶している間に包囲網の穴から逃げようとする。
だが、残りの2体が襲い掛かってきた。
レオンとシャルルが1体ずつ倒し切り抜ける。
逃げ切れる!
しかし、前にはグレートジャガーが先回りしていた。
氷柱にぶつかって気絶していた3体も復活し、挟み撃ちにされていた。
ヤバい・・・
こうなったら使うしかないのか・・・
「レオン!後ろの3体をお願い!私はコイツの相手をする!」
「はぁ?何言ってやがる!お前そいつに勝てんのかよ?」
「策はある!だからアイリスを守りながらお願い!」
「わかったよ!死ぬんじゃねぇぞ!」
よし、後ろは何とかなる。
だけど前からこいつに突進でもされたら、策も何もない。
ふっ飛ばされちゃう・・・
後ろに回り込まないと・・・
シャルルは、まず無詠唱でグレートジャガーを凍らせた。
グレートジャガーは抵抗し、完全には凍らなかったが、時間稼ぎにはなった。
その間にシャルルは後ろに回り込む。
グレートジャガーも氷を払い、後ろを向く。
向かい合った。
だけど、このままだと後ろで残り3体を倒しているレオンに狙いがいっちゃう。私から仕掛けなきゃ!先手必勝!
シャルルは距離を詰めながら詠唱を始める。
「我、神の恵みありて今ここで闇の加護を所望す。闇剣。」
剣を実体のない闇で覆い、剣を伸ばす。
グレートジャガーは距離を詰めてくるシャルルを踏みつけようと足を持ち上げる。
シャルルは踏みつけを躱す。
ジャンプして、グレートジャガーの上から闇剣を振り下ろす。
「せやぁ!」
居合と共に剣を振り切る。
グレートジャガーは闇によって切られ、真っ二つになっていた。
ジャキッ!
ちょうどレオンも3体を倒し終わたようだった。
2人が駆け寄ってきた。
「おい、あの剣なんだよ!見たことねぇぞ!俺にも教えろ!」
「ルル!凄い!あんな大きな魔獣を一撃で!」
「それよりも!もう日が暮れちゃうわ!早くここから出て村に戻らないと!」
3人はまた移動を始めた。
ウェルボル山脈から遠ざかるように進めば、入り口に戻れるはずなのだが辿り着けず時間が過ぎてゆく。
日が完全に暮れた頃、アイリスが木の根っこに足を取られ転んでしまった。
「キャッ!」
「アイリス、大丈夫?待っててすぐ治療するわ。」
シャルルは指先から水を出し傷口に当て、自分の服をちぎって傷口に巻いた。
「レオンもう進むのは無理だわ。夜はこの森の中にいましょう。」
「この森の中って言ったって魔獣の活動期は大抵は夜なんだぞ?魔獣に襲われちまう。」
「それについてはいい案があるわ。二人とも、私の言うとおりにして。」
それからシャルルは闇剣を作り土を長方形に切って、穴を作る。
「中に入って。」
3人が中に入ったところで、上に氷を張る。
そして詠唱を使い地上で竜巻を起こし、土を氷の上に被せる。
「これで出来上がり!レオン、火をつけて。」
レオンは詠唱し指先に火を発生させる。
「おいおい、これじゃあ朝が来る前に上の氷が融けちまうんじゃねぇのか?」
「大丈夫。私の体の中の魔素が尽きるまでこの氷は融けないわ。だけどさっきの戦闘で私はほとんどの魔素を使っちゃったから、この氷を朝まで持続させれば明日はたぶん使い物にならなくなるけどその時はレオンが守ってね。」
「使い物にならなくなるって・・・お前も使い物にならなくなったら、、あっ・・・」
「いいの。私、足手まといだよね。もし、何かから逃げきれなくなったら私を置いて行っていいから。」
「そんなことを言ってるんじゃねぇ。ごめんな、アイリス。」
「あぁーー!もういいから!そういうのは!朝早く起きて考えましょう!」
「そうね。おやすみ。」
「「おやすみ。」」
ーーーーー
「ねぇ、レオン、起きてる?」
「あぁ。起きてる。」
「アイリスは?」
「もう寝てる。あんだけ訓練もしてないのに歩いたんだ。そりゃ疲れるだろうぜ。」
「そう。」
「悪かったな。俺が森に行こうなんて言わなけりゃこんなことにはならなかったのに。」
「もうそれは終わったことだわ。今を生きるために何をするかを今は考えるべきなの。」
「そうだな。たまにお前は俺よりもずっと年上なんじゃねぇかって思う時があるけどよ、やっぱり、シャルルはシャルルだよな。」
「何言ってんの?私は私よ。」
「だよな。お前はお前だよな。あと、今日、わかったよ。俺はお前には勝てない。俺はあの魔獣相手にひるんだ。だがお前はビビることなく前に出て、後ろを信じた。並大抵のやつじゃねぇよ、お前は。水魔法が無詠唱になるまで熟練度あげてたことも俺は知らなかったしな。」
「レオンはレオンのいいところがあるの。私がどんなに魔術の腕を上げようと剣さばきや体力では敵わないわ。明日はあなたに頼りっきりになるんだからそんな弱気でどうするのよ。しっかりしなさい。」
「あぁ。できるだけやってみるさ。」
「そうそう、その意気よ。ごめんなさいね。話しかけちゃって。おやすみなさい。」
「あぁ。おやすみ。」
森の中で3人は一夜を過ごしたのだった。




