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幼馴染は譲れない!  作者: 揚羽 楓
第二章 幼少期編
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10 貴族と領民

 それから、私はアルバートと剣術や、魔法の特訓を開始した。

 あまりうまくはできなかったけれど、アルバートには


「ベルタより才能はあるぞ!」


 と、言ってくれた。ごめんなさい、兄様。


 ミアス流の剣術を習うのは面白かった。運動も嫌いなほうではないし、毎朝早く起きてアルバートと誰も歩いていない村を一周走ったり、組手をするのも面白かった。


 そんな毎日を送っていると私は5歳になった。


 

 誕生日プレゼントというものがこの世界にもあるらしく、4歳の時には大したものはもらえなかったが、5歳にもなるとアルバートからは真剣、ナノアからは魔術書。ベルタからは、花束をもらった。


 個人的には魔術書が一番うれしかったけれど、ベルタからの花束もとても素敵だった。

 ベルタのくれた花は、花瓶に入れて毎日水を変えて世話をしている。

 なんだかんだ言って、一番大切にしたのはベルタからの花だったかもしれない。



 さて、私は5歳になったことで、状況判断もできるようになったとアルバートからお墨付きをもらい、家から村の中へ自由に出ることが出来るようになった。

 ただし、村から出てはいけないと釘を刺された。

 

 しっかり門限までには帰ってくることを約束し、さっそく村へ繰り出してみた。

 


 小王国の辺境の貴族だけあって、外に出ても田舎という感じだった。

 朝早くにランニングした時にはいなかった、農業をしている人たちもいた。

 村の中心の広場では、市場が開かれていた。


 辺境の村にしては物流も問題ないみたいだった。

 

 この世界のお金の単位は神様の名前をとってミィスとなっている。

 ミィス金貨、銀貨、銅貨、鉄貨、賤貨の5種類ありそれぞれ10枚で上の硬貨にランクアップする。


 私は5歳になってから月にお小遣いとして銅貨1枚をもらっていた。


 大体、日本の100円が銅貨1枚くらいだ。

 この市場もインフラが起きているわけではないから、銅貨1枚で、食べ物くらいは買える。

 ちょうどお昼時だったこともあり、お腹が空いてきた。

 家に帰ればメイドさんかナノアがご飯を出してくれるだろうが、初めての村市場なので何か食べ物を食べてみたかった。


 散策していると、前の商店から大きな声が聞こえて来た。


「ドロボーーー!」


 どうやら泥棒が出たらしい。

 結構人混みが激しいので泥棒の姿は5歳の私では見えない。

 

 その時私は誰かとぶつかった。


「キャッ!」


 私は尻餅をついた。

 前を見ると私と同い年くらいの小さな男の子だった。

 私が周りに目を配っていなかったせいで、ぶつかってしまったんだろう。

 両手に果物をかかえていたが私とぶつかったことで、周りに散らかっていた。


「ごめんなさい。手伝います。」


 私はそう言って転がっている果物を拾おうとした。

 だが、その男の子は近くにある果物を2、3個だけ拾って立ち上がった。

 そして動こうとした瞬間に大柄な男の人に首をつかまれた。


「やっと捕まえたぞ。この悪ガキ。早く返せ!あ、この野郎。うちの大事な商品を地面に落としやがって。何してくれてんだぁ!」


 どうやらこの男の子が泥棒らしい。

 私はどうしたものか・・・と思っていると。


「なんだ?そこの嬢ちゃんも仲間か?嬢ちゃんもこっち来い!」


 私は手首をつかまれた。

 えっ!私も!?


「違う!こいつは関係ない!やったのは俺だ!俺を殴るなり殺すなり好きにすりゃいいだろ!」


 男の子が助け舟を出してくれたが、その店主は聞く耳を持たなかった。


 ヤバい!どうしよう・・・


 その時だった。


「おい、そこの店主。そこのお嬢様をどなたと心得る。トルクール家長女、シャルル様だぞ。無礼な真似をするな!」

「ゲッ!地主様の娘か!これはこれはすみませんでした。シャルル様。どうかお許しください。だがよう、そこの騎士さん、このシャルル様が盗みをやってないって証拠なんかないんだぜ?たとえお嬢様だとしても泥棒の手助けはいけねぇんじゃねぇかな?」

「そんなことをシャルル様がするわけなかろう。もしどうしてもというのであれば俺がそこの地面に転がっている果物もそこの少年が持っているものも含め、すべて買い取ってやる。これで異存はなかろう。」

「へへぇ。毎度あり。」


 その騎士さんはその店主にお金を渡すと、店主はスキップしながら帰っていった。


「ありがとうございました。騎士様。お名前をうかがってもよろしいでしょうか。」

「ははっ。私はユースというものです。シャルル様のお父様、アルバート様の弟子であり、今はシャルル様の護衛任務を任されております。どうか、お見知りおきを。」


 アルバートは私に護衛を出してくれていたのか。助かった。

 後でお礼を言っておかないと。


 そして私は反対側に向き直る。


「あなたの名前を教えてもらってもいいかしら。」

「俺はレオン。ヘッ。貴族の娘かよ。助け船出して損したぜ。」

「貴様!シャルル様になんて口の利き方を!処罰するぞ!」

「ヘッ、どうせ貴族なんか、家でいいもの食って、毎日安心して眠れる寝床があって、父ちゃんも母ちゃんも元気で威張り散らしてるやつらだ。お前もそうなんだろ?シャルル嬢様よ?」


 この子どんな暮らしをしてるんだろう。

 私は確かに貴族の娘に生まれて、権力争いをしているけど、やっぱり普通の人から見れば私は恵まれている身分なんだろうな。

 アルバートもナノアも村の人のために、と何かしているみたいだけど、村全体に行き渡っているわけではないんだろう。

 

「ねぇ、レオン、私の家に来ない?家族もつれて。私を助けようとしてくれたことのお礼をしたいから。」

「ヘッ。家族なんていねぇよ。もらえるものはもらっておくのが俺のスタイルだが、お前の家には行かねぇ。貴族は嫌いだ。俺ら農民の苦しみも分からねぇような奴はもっとごめんだ。」

「そう・・・。それだったら、この果物だけでも全部もらっていって。今日はありがとう。」

「それくらいならもらってやるよ。じゃあな。」


 レオンは去っていった。


「お嬢様どうしますか?あの無礼な言動の数々、アルバート様とナノア様が民のために試行錯誤しているのに、何故わからぬのだ!私が罰を与えてきましょう!」

「やめて!ユース!」

「いや、ですが・・」

「いいの・・・。あの子には私がまた話しかけてみるわ。」


 それから私は家に帰り昼食をとった後、ナノアにその話をした。

 ナノアは親身になって話を聞いてくれた。そしてアドバイスをくれた。


「シャルル。私にいい案があるわ。その子を招待したいのは私も同じよ。彼の為にも、ね。」


 

 私はその案に渋々のった。



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