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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

また異世界召喚? お願いもうやめて!

作者: カタツムリ

とても短いです。

 もう勘弁してくれよ……。


 そんなことをぼやいたのはちょうど昼飯前だった。  

 また異世界召喚が行われようとしていた。



 初代勇者のいた『地球』という世界では異世界召喚などと銘打った小説が流行しているらしいが、こちらの世界では異世界召喚そのものが大流行である。


 召喚された人間の力が魅力的なのだろう。


 が、考えてもみてほしい。召喚された人間、勇者などといわれているがもとは非力な人間だ。ならその力はどこからきているのか。


 どうやら世界そのもののエネルギーを食っているらしい。

 難しいことははよくわからないが、そのせいでこの世界はもうぼろぼろなんだとか。

 それは困った。

 というわけで阻止するために俺が選ばれたという。

 まったくいい迷惑だ。


「さっさといくわよ!」


 ……諸悪の根源がやってきた。


 こいつは大精霊エレン。俺をこんなことに巻き込んでくれやがった。威厳のかけらもない幼女みたいな見た目だが昔はすばらしい美貌の精霊として崇拝されていたらしい。

 しかし召喚のために世界中のマナをバンバン使われ、力を失って顕現するのにせいいっぱいらしい。


 フッ、ざまぁww


 そんなことを考えていたら髪を燃やされた。

 まったく、ハゲたらどうしてくれる。




 今回異世界召喚をやろうとしているのは中堅国ロシーヌ。大陸の西に位置し、隣国とは戦争中だ。

 もう1人召喚済みだが、戦力が足りないのでまた召喚魔法に頼ろうというわけである。

 

 ……させないけど。





 現在地はロシーヌ王都中心の城の中。

 王城はかなりものものしかった。兵士たちがそこらじゅうにいて、怪しいやつがいたらかたっぱしから槍で串刺しにしてやると言わんばかりだ。


 もちろん見つからないように廊下を進む。


「う~ん、地下があやしいわね」


 大精霊サマがそういうのだから間違いないだろう。

 地下室を探してみよう。



 進んでいくとやけに警戒が厳しいところにでた。

 奥には下に続く階段がある。

 ビンゴだ。


 いるのは数人の兵士たち。それと一人だけ違う格好をしたやつがいた。

 そいつは黒目黒髪で、宝石のはめられた剣に青いハーフプレートを装備している。


「勇者ね」

「勇者だな」


 ずいぶんと勇者勇者してるな。

 おそらく一度目に召喚されたやつだろう。



「それで、どうするのよ」

 エレナがヒソヒソと聞いてくる。


 ふむ……。

 勇者の中には召喚されたのが不本意という勇者もいる。むしろそっちの方が多い。

 そんなやつを問答無用で攻撃するのも気がひける。

 だがあいつは見るからにヤル気がありそうだな……。


「奇襲をかけよう」

 

 問答無用で攻撃することにした。まあ、本音は交渉がめんどくさいからだ。

 ……ダイジョウブ、タブンコロサナイ

 

 


 そのときだった。



 ぐきゅるるる……。


 

 俺の腹が豪快な音を鳴らした。



「「「だれだっ!!」」」


 精霊王よ、そんな目で見るな。

 しょうがないだろ。昼飯食べ損ねたんだもん。




 兵士たちが警戒しながらこちらに近づいてくる。

 

 俺はあきらめて物陰から飛び出し、駆け出す。



「曲者めっ!」


 兵士のひとりが迎え撃とうと槍を突き出すが、俺はそれをひらりとかわして魔法を唱える。


瞬間冷凍(フラッシュフリーズ)


 ガキンッ、と兵士たちが一瞬で氷漬けになる。

 あっけないな。



 さてお次は勇者だ。





 勇者の方を見ると、ちょうど詠唱が終わったところだった。


『――敵を喰らい尽くせ大炎龍』


 真っ赤に燃える龍が巨大なアギトを開けて迫る。


「エレン!」

「わかってるわよ!」


 エレンが俺の前に立つ。

 はたから見ると幼女を盾にしているようなひどい絵面だが、虐待というわけではない。

 


 大炎龍とやらがエレンに触れた瞬間、炎がすべて彼女に吸い込まれ消えた。

 そう、精霊王に魔法は通じないのだ!(ドヤッ)


 勇者の顔が驚愕にゆがむ。どうやら今ので倒したつもりだったらしい。

 フフッ、甘いな。


「くそっ」


 さっきので魔法が通じないと分かったのか、今度は剣を抜いて襲い掛かってきた。

 

 そして……



「てい!」


 

 空振った。


 

 ゆうしゃ は けん が へたくそ だった



「憐れむような目で見るな!!!」



 その後3秒で勇者は倒されたのだった。

 勇者ぇ……。


 この国が二人目を召喚しようとした理由がわかった気がした。




 

 それから先は簡単だった。

 地下に降り、召喚用の魔法陣を粉々にした上で地下室を埋めてやった。守っているやつは強そうだったが、見た目だけだった。

 ついでにまた魔法陣を作れないよう書物庫も焼き払った。

 

 ハハハッ、汚物は消毒だぁ!!



 ゲフンゲフン……冗談はさておき俺たちは無事ロシーヌの国を脱出したのだ。


 


 そしてようやく飯が食える!結局昼飯は食えなかったのだ。

 もう晩飯になってしまったが、気にしない。自分へのごほうびに今晩は最高級オーク肉のステーキである。したたる肉汁、香辛料の効いたにおい……。


「いただきま――」

「いくわよ!次は北の国のアーレンが異世界召喚をやろうとしてるわ」


 そう言うが早いか大精霊サマは俺をひっつかんで空に飛び上がる。そのまま屋根を突き破って外に出る。がれきが家を埋め、もうもうと煙を上げる。

 ……ああ、俺のステーキ、俺の晩飯が……。


 

 

 いつになったら俺は飯を食えるのだろうか……。



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