真夏の夜の悪役令嬢
アルバーナ王国では一年で一番暑い日とされるジーベンの月に建国祭があり、その日は国を上げて建国の日を祝う風習がある。建国祭は死者ですら黄泉の国からこの世に帰ってきて生者と共にこの日を祝うと言われており、建国の日であると共に死者が帰ってくる日として「反魂祭」とも呼ばれていた。
「反魂」とは言っても本当に死者が帰ってくる訳でもないのだが………
私の祖父である「ブラッドレイ・ハプスブルグ」は一代で公爵となった前代未聞の怪物である。享年71歳という長寿とまではいかなくとも、微妙に長く生きたお祖父様は、生前は「魔術王」の異名(二つ名)を持った英雄で、それはそれは八面六臂の大活躍をしたそうな。
50年ほど前に先代の王がいた頃から続いていた隣国との戦争を、文字通り一騎当千………どころか10万の軍勢をたった一人の大魔術で退けた挙句に敵王城まで攻め入って叩きのめしたという偉業を成し遂げ国の英雄となった。何分、私が生まれる前の活躍なので、いつもの温和な雰囲気のお祖父様からは想像もつかない活躍を聞かされた時は驚きもしたが、今となってはそんな力のあるお祖父様がただひたすら恋しかった。なぜならば………
「おいっ!聞いているのか!
お前が私の大切なエリナを階段から突き落としたそうだな!」
これががジーベンの月に行われる建国祭最後の大取である王城でのダンスパーティの最中、婚約者の「アルベルト・フォン・アルバーナ」第3王子に先ほど言われた台詞であった。しかも開口一番に
「お前との婚約を破棄する!」と国中の主要な貴族や王族が居らっしゃる中で声高々に宣言されるというオマケ付き。社交界の華としてではなく、醜聞の渦中として皆からとてつもない注目を浴びている。
つい私が現実逃避してしまうというのも我ながら頷ける自体に陥っていた。
さて、そんな状況の中、王子の方を見ると後ろに私の100倍は可愛いと断言出来る妖精のような女性が王子の手を掴んでいた。
どんな魔法を使ったのかと問い詰めたくなるような極上の絹糸のように光り輝く金髪のサラサラヘアーに、瞳が零れ落ちてしまうのではないかと思えるクリッとした可愛い瞳。きめ細やかな肌はまるで触れれば壊れてしまいそうなほど繊細な美がそこにはあり、顔や体型に至っては黄金比ではないかと思われるくらい人形のように整った容姿をしている。その女性は足に包帯を巻いていた。
そんな彼女が今は不安そうな表情で私の顔を見ながらこんなことをのたまった。
「私がいけないんです!カレン様が婚約者だって知っていたのに、アルベルト様とお話ししたから!だからカレン様は私にこんなことをしてしまったんです!」
「僕の愛しくて優しいエリナ!憎い相手であろうと相手を思いやる気持ちがあるとは………カレンとは大違いだな!」
「アルベルト様……」
婚約者の目の前でひしっと抱き合う第3王子と、一度としてお会いしたことがないエリナとかいう女性。あ、今は婚約破棄されたから婚約者じゃないんだ、とかどうでもいい事が頭に浮かんだが、最大の問題はそこじゃない。
そもそもな話、会ったこともない女性をどうやって階段から突き落とすことが出来るのだろうかとか、相手をかばっているようで明らかに全力で私に罪をなすりつけてこようとしているエリナとかいう女性は一体なんなのだろうか。
びっくりし過ぎたせいか一周回って冷静になった私は、あの女にハメられた可能性に思い当たった。
だが賽は投げられてしまっている。発言したのは第三王子ではあるが、この国の王子が公の場で発言する力が少ないワケがない。白いものを黒にするくらいの発言力はあるだろう。とはいえ、このまま手をこまねいていては何かしらの罰が下されるというのは容易に想像がつく。
「アルベルト様!なぜ私が婚約破棄をされるのでしょうか!この方とは今日はじめてお会いしたのです!どうして私が見ず知らずの女性を恨んで階段から突き落とすのでしょうか!」
「しらばっくれるんじゃない!お前が私の愛しいエリナを階段から突き落とした現場を見た証人が居るんだぞ!」
私の発言に対しそう言い返した王子は、3人の女性を呼んだ。その中の季の強そうな女性が王子の後ろに立つと王子に対して発言を求めた。
「アルベルト様、発言をお許し下さい!
私がアルメリア学園の別棟に移動中、エリナ様が階段から突き落とされる所を目撃しました。びっくりして階段上を見ると、カレン様が走り去っていったのです!」
その女性が言い終わったと同時に他の目撃者だという2人の女性も、私も見ていましたと声高々に宣言した。もちろん、私にまったく見に覚えのない出来事である。明らかな嘘であるのは私自身が理解しているので、この状況から察するに3人の証言者もエリナとかいう女性とグルなのだろう。会場の周りも私を避難する言葉が次々と掛けられる。
「………完璧にハメられましたわ」
そう呟くと、エリナ嬢は不安そうな顔で王子の肩に寄り添っていた状態で口元を一瞬歪めたのを見つけた。もはやこの一連の茶番劇の差金はエリナ嬢の手によるものだと確信した。ここまで会場の流れを持って行かれた状態で、何を言っても誰も取り合わないだろう。それでもなお立ち直ることが出来るのならば、よっぽどの切り札が必要だ。もちろん切り札など無いので絶体絶命のピンチである。
「これで分かったろう!この私に対して嘘などつけるものなど居ないのだ!まったくもって見苦しい!そんな汚らわしいお前に相応の罰を与える!」
会場のボルテージが一気に高まる。エリナ嬢からすれば、私を陥れたあとに王子とゴールインし、晴れてハッピーエンドといったところだろうが、見ず知らずの女性の踏み台になって不幸になるなんて真平御免である。
その時、ふとお祖父様の声が聞こえたような気がした。
もうこの世には居ない、強くて優しいお祖父様の声が。
「………助けて、お祖父様」
「うむ、助けてやろう」
藁にもすがる思いで呟いた一言が拾われるとは思わなかった。懐かしい声が聞こえたかと思うと、突然会場が薄暗くなりシャンデリアの照明が砕け散った。
「きゃあ!!」
会場のそこかしこで若い女性の悲鳴が聞こえる。何だか嫌な予感しかしない。
「な、一体何が起こったのだ!衛兵、衛兵はいるか!」
王子も焦っているが、頼みの綱の衛兵もパーティー客に押しつぶされてしまっている。そんなカオスな状況の中、私の後ろに気配を感じた。そして振り返ると死んだはずのお祖父様が鬼火を携えながら宙に浮いていたのだ。
「フゥハハハーハァー!呼ばれて飛び出てジャ○ャジ○ジャーン!どうも、ワシです!」
「うわああああああ!!”理不尽王”が蘇ったぞぉぉぉぉ!!」
「ひえぇぇぇぇぇぇ!!キ○ガイ狂犬”のブラッドレイだぁぁぁぁぁ!!」
「のわぁぁぁぁぁぁ!!”悪魔公爵"だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今度は、年齢層が高めな男性を中心に悲鳴が上がった。というか、隠居してからのお祖父様はほとんど外出しなかったのでそんな不名誉な二つ名がついてることを今始めて知った。
「カレンよ。今助けに来たぞ」
お祖父様は慈愛に満ちた表情で私に微笑んだ。
死んだはずのお祖父様がなぜここにいるのか、そんな事が気にならないくらいただただ嬉しかった。
「お祖父様………」
涙が出そうになるのを堪えて万感の思いでお祖父様の胸に飛び込んだ。
―ぐしゃ―
何かが潰れるような音と共に全身に痛みが生じた。もちろん潰れたのはこの私自身である。
「いったぁぁぁぁぁい!!」
なんとお祖父様の体をすり抜けて地面に激突してしまったのだ。
「おぉ、すまんすまん。ワシ死んでるから触れんのじゃよ」
「そういう事は早く言ってよぉぉぉぉぉぉ」
感動もどこかに吹っ飛んで怒りだけが残った。
「じゃからすまんて言うとるじゃろうが!そんな事よりも……」
お祖父様は唖然とした表情でこちらの様子を見ている王子とエリナ嬢に向かってこう言った。
「お前ら二人にワシは死んでも言いたいことがある。まずはそこの王子!よくもワシの可愛い孫をコケにしよったな!あとできっちりお仕置きしてやる!
次にエリナとかいう女!きさまワシの可愛い孫を罪人に仕立てあげようとするとは言語道断!きさまの化けの皮を剥がしてやろう!」
そう言ってお祖父様は何やら呪文を唱えると、空宙に学園が映し出された。
「な、な、な、なんだこれは!一体何が起こっているのだ!」
「じゃあかしいわ!この青二才!黙って見とれボケナスが!」
お祖父様が手を振ると王子が壁に向かってぶっ飛んだ。頭を打って何やらモガモガ言ってるが、大丈夫なのだろうか。
「そんな事よりも、この映像を見よ。この女の本性が分かるぞ」
言われてお祖父様の魔術によって映しだされた映像には階段が映し出され、その後まもなくしてエリナ嬢がやってきた。エリナ嬢は辺りをチラチラと見回すと、意を決したように一人で階段から転げ落ちた。
「な!なんだこれは!」
会場の誰もがその光景に目を奪われた。お祖父様の魔術によって映しだされた映像には、どうみても一人で階段から転げ落ちたようにしか見えなかったからだ。
疑惑の目でエリナ嬢を見ると、顔を真っ赤にさせて
「こんなの嘘よ!あの訳の分からない幽霊の幻惑の魔術だわ!」と叫び
「そ、そうだ!あれは魔物か何かだ!衛兵!衛兵を呼べぇぇぇぇ!」と壁に叩きつけられてようやく復活した王子も喚き散らしている。
会場のそこかしこで再び悲鳴が聞こえるが、ようやく騒動の中心に来れた数人の衛兵は槍を構えながらお祖父様の前に立った。
「ふん、そのようなものでワシに歯向かう気か?正気の沙汰ではないな」
言うなりお祖父様は指をパチンと鳴らすと、衛兵が消えてしまった。
「な!な!な!何をしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いや、なに。邪魔だったので馬小屋に飛ばしてやっただけじゃ。今頃馬と戯れておるじゃろう」
「ひいぃっ!!」
とても表現できないような邪悪に塗れた顔でお祖父様が王子に笑いかけると、王子は引きつったような顔で後ろに下がった。
「さて、この茶番も終わりにしようかの………エドワード!おい、こら!出てきやがれ!」
「ひいぃぃぃぃぃぃ!」
お祖父様の姿を見て”キ○ガイ狂犬”と言っていた爺………もとい、国王が悲鳴を上げた。
「よくもワシの孫をコケにしよったな!直々にワシが魔術の講師をしてやったというのに恩を仇で返すとは、よほどワシのレッスンが恋しいと見えるな」
「ひえぇぇぇぇぇ!ブ、ブ、ブ、ブラッドレイ!き、き、キサマなぜ生きているんじゃ!」
「いや、さっきから生きてないと言っておろうが。そんな事よりもじゃ。あのエリナとかいう女はこのままシラを切るつもりのようじゃが、それではワシが納得せん。お前の権力でもってこの事件を徹底的に調べてワシの孫の無罪を証明しろ」
「な、なぜ一国の王である私がそんなことをしな「するよな?」はい、全力で調べます!」
お祖父様の脅しに全力で屈する一国の王の姿があった。というかお祖父様、どれだけ恐れられているのだろうか。
「ふむ、ワシの言ったことは必ず守るだろうが、保険は必要じゃな」
再びお祖父様は呪文を唱えだすと、突然王様が苦しみだした。
「うぐえぇぇぇぇぇぇぇ止めてくれぇぇぇぇぇ!」
「すぐに終わるから待っておれ!」
そしてようやく長い呪文が終わると王様の額にドクロのようなアザが出来た。
「お前自身は鏡でも見ない限り見れないだろうが、額にドクロマーク付けておいた。もし、お前がこの事件を全力で調べて事件の真相を暴けなかった場合、お前の頭は棒でぶっ叩いたスイカみたいにはじけ飛ぶからよく覚えておくように」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!今すぐこの呪いを解けぇぇぇぇぇぇ!」
「ははは、相変わらずお前のキレ芸は見ていて面白いな。でもあんまり見てると不快になるから、ワシの孫に手を出したら苦しんで死ぬ呪いもプレゼントしてやろう」
「~~~~~!!」
再びもだえ苦しむ王様を尻目に、お祖父様は私に向かってこういった。
「今日は建国祭と同時に反魂祭という特別な日じゃから奇跡を起こすことが出来たが、そろそろ帰る時間が来たようじゃ。
ワシはお前の幸せをずっと願っておるからの」
そう言うとお祖父様の姿が消えてしまった。あとに残されたのは大混乱の会場と額にドクロマークが付いた王様の姿があった。当然、パーティーどころではなくなり、私を含めた貴族は自宅に返された。
その後、死にたくないとうわ言のように話す王様の必死な捜索により、この事件の発端はエリナ嬢の自作自演だったことが判明。3人の証言者も、エリナ嬢が王子と結婚した暁には多額の金が成功報酬として支払われるという契約書が発見され、エリナ嬢は王子を謀った罪で投獄された。
その時、エリナ嬢は「原作知識を活かして金を稼ぎまくって王子を手に入れようと思ったのに、どうしてこうなったの!あの幽霊爺なんて原作に出てこなかったじゃないの!」と意味不明の供述を繰り返していたそうだ。
もちろん相方である王子はこの醜聞により失脚し王位継承権を剥奪され、一騎士として国のために働くという罰が下った。
私はというと、王子と婚約を破棄されたので迷惑料も含めて、新たな婚約者を宛てがうように王国に打診。爵位良し、見た目良し、性格良しの金と権力と中身と外見の美しさの三拍子そろった超優良物件との選定権を得ることが出来た。
バカ王子との縁が切れて、良い男と巡り会える。そこまでは良かったのだが………
「お前のような青二才にワシの可愛い孫を渡すと思うかぁぁぁぁぁぁ!!
やらせはせん!やらせはせんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!お化けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
公爵家を必死の形相で飛び出す宰相の息子を尻目に、私は乾いた笑みを浮かべた。
「フゥハハハーハァー!!あのような尻の青いガキが調子に乗りおって!ワシの大事なカレンを渡す訳がないだろうが!」
空宙で鬼火をはべらしながら鬼のような形相で宰相の息子が出て行った玄関を睨みつけている。
「………お祖父様、追い出したのはこれで5人目なのはこの際省きますが、なぜまだ還えられてないのでしょうか?」
言いたいことは山ほどあるが、要点だけ伝えることにした。
「おぉ、聞いてくれるか。ワシな。還った後もやっぱり心配になって出ていこうとしたら、閻魔とかいう小童が地獄行きだとぬかしおるから灸を据えてやったんじゃよ。そしたら二度と来なくて良いと言われての。ずっと居れるようになったのじゃよ。フゥハハハーハァー!」
「……………」
聞いた私がバカだったようだ。頭痛と目眩に襲われながら、目の前のソファに座った。
「………私って結婚出来るのだろうか」
「心配するな!ワシが良い条件の男を見つけてやるからな!やはりワシを倒せるくらいの男でないと可愛い孫は任せられん!じっくり選定してやるから楽しみに待っておれよ!」
その台詞を聞いて遠い目になった私は、美しい庭園を見つめながらこれから先のことを考えるのは止めようと思った。
人物紹介
ブラッドレイ・ハプスブルグ
実は日本という国でトラックに引かれて異世界に転生したというぶっ飛んだ過去を持つトンデモお祖父様。神様を名乗る人物に”チート”なる特殊な力を与えられて第二の人生を歩むが、どうやら貰った能力と本人の相性が良かったらしく神の誤算じゃ済まないくらいの力を持ってしまった。若いころは色々やんちゃをしたらしい。その色々の部分で行った例を上げれば、彼が何故公爵になれたのかという話が最も印象に残るエピソードだろう。
当初彼は冒険者として活動していた時に一目惚れした女性が居た。
頭より先に体が動くブラッドレイは早速求婚を行ったが「自分は貴族で平民とは結婚出来ない」と言われてあえなく振られる。それにぶち切れたブラッドレイは、当時泥沼化していた隣国との戦争をたった一人で乗り込んで終わらせ、そのままの足で自国の王城に殴りこみを掛け王を恐喝した。拒否する重鎮や反対する貴族を血祭りに上げながら「俺を貴族にするかこの国が無くなるかどちらか選べ」と鬼のような形相で判断を迫る災厄を前に、王は自らの無力を感じながら王家の血筋なんて1mmも入ってない輩を公爵にしてしまったのだ。一応、隣国を血祭りに上げたというお土産があった為に特例として認められたと正式な公文書には書かれているが、そんなものは建前である。王国の歴史から見て、後にも先にもこのような方法で公爵に成り上がった人物は一人も居ないと歴史家が語るほどの有名な御仁である。その後、貴族として文句の付け所がない爵位を強奪した破天荒野郎は一目惚れした女性と結婚し、数々のレジェンドを作り続けながら晩年に至るまでトラブルを辺り一帯に撒き散らした。
エリナ嬢
この物語のヒロイン(笑)である。彼女もまた日本という国に住んでいたが家に隕石が落下して死亡し、自称女神を名乗る人物に「間違えて殺しちゃったからアナタの好きな世界に転生させてあげるわ」という一言によりこの世界に転生したという過去がある。転生した彼女曰く、この世界は「ドキドキ☆私だけの王子様」という頭の悪すぎるタイトルの乙女ゲームの世界で、やりこみまくったゲームなのでこれから何が起こってどう動けば正解なのかという未来知識は豊富だし、何よりイケメンとイチャイチャしたいという彼女の欲求によりこの世界に行くこととなったらしい。しかし、攻略対象のおじゃまキャラクターである公爵令嬢がゲームの時のようにヒロイン(自分)を虐めてこないのでイベントがクリア出来ない状態になった。しびれを切らした彼女はイベントを消化して王子とくっつこうと自作自演の事件を起こすがイレギュラーその1(お祖父様)によってあえなくその野望は潰えた。
アルベルト・フォン・アルバーナ第3王子
この国の第3王子であるアルベルトは順風満帆な人生を歩んできたが、エリナ嬢と出会ってからその人生を大きく狂わされるハメとなった。どれだけ頑張っても第3王子という立場は、第1王子の予備の予備でしかないと落ち込んでいた所をエリナ嬢につけこまれる。ゲーム通りのシナリオ展開に内心ほくそ笑んだエリナ嬢は耳障りの良い台詞ばかりを吐き、心が弱っていたアルベルトを籠絡。心を曇らせ周りが見えないようにした。そんな中、更にエリナ嬢が起こした自作自演の事件に巻き込まれ、自業自得とはいえ一騎士という王族として考えられないような身分にまで落とされるハメになった。しかしこの事が彼の人生に転機を与え、曇っていた目が完全に晴れることになる。元々有能であった彼はメキメキと頭角を現し、10年後には王となった第一王子を立派に支えている姿が見れるようになったそうな。
カレン嬢
この物語の悪役令嬢の立場に居る人物。あくまで悪役令嬢というのはヒロイン(笑)から見た姿で、実際は第3王子の正当な婚約者であり、こんな事件さえなければ有能な第3王子とさっさと結婚してそれなりに幸せな人生を送っていたであろう人物である。今となってはそれはifの話であり、とんでもない爺に取り憑かれた可哀想な女性であり、後にその悪霊のせいで晩婚になった。
パーティー後に取り調べ室に連れて行かれたエリナ嬢は彼女が自分のゲーム知識通りに動かなかったと意味不明な供述をしたが、その原因はイレギュラーその1(ブラッドレイ)の血を引いてしまったため、定められた運命の歯車が狂ってしまったという設定がある。そもそもブラッドレイの妻は別の男性と結婚する運命にあったのだが、ブラッドレイと結婚したため彼女の運命が変わってしまった。そこから歴史が徐々に狂い始め、カレン嬢が生まれた時にはエリナ嬢の未来知識が通用しない全く新しい未来が出来上がってしまっていた………なるほど、これがシュ○イン○ゲ○トの選択か(メタ発言
エドワード王
この国の現国王。王になって数年後、先代より引き続いていた隣国との戦争に頭を悩ませながら重鎮との会議を行っていると、身の丈2m近い偉丈夫が貴族にしろと言い放ちつつ空中に浮きながら(当人曰く「あれはホバー移動だ」との事)この国で最も堅牢な「獅子の間」のドアを蹴破り侵入。抜刀した手練の騎士を一瞬で無力化し、拒否する重鎮や貴族を軒並み血祭り(半殺し)に上げ、公爵の位を授けるか国ごと吹き飛ぶかの二択を強要される。手土産として戦争を終わらせてきたという世迷い事を喋っていたので、今すぐは決められないと時間を先延ばしにして伝令を飛ばし事の真相を探ると、その世迷い事が真実であったと判明。本当にこの国を消し飛ばす力があると分かった時の王の反応は早かった。並居る反対を押しのけてブラッドレイを公爵の位を授け、更に反対した者には、直接ブラッドレイが仕置きしていいという俺はもう知らん宣言を公言して物理的に反対意見を(ブラッドレイが)黙らせた。その後、公爵家にしてくれたお礼に直々に魔法を授けてやると頼んでもいないのにスパルタ式の家庭教師を初め、王や諸侯に少なくないトラウマを植えつけた。今では額にドクロマークの呪いまで付けられ、少なくないトラウマの一つを更に増やされるというふんだり蹴ったりな目に遭い、ブラッドレイと出会ってしまった事は、自分の人生において最も回避すべき事態であったと自伝に書き記したほど後悔していたという。