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りん、
そう呼ぶと
整った顔立ちが振り向く。
『はい』
『あ、いや・・・』
俺は言葉に詰まりながら慌てて煙草に手をやる。
『昨日は本当にありがとうございました。僕はもう、出かけます。これ・・・』
と言って差し出した封筒。
俺には中身が見えた気がした。
『そういうのは、いらないから』
『じゃあ』
間髪いれず
りんが言う。
キッチンに食器を置いて
テーブルに近寄る
『ご主人様・・・』
りんの言ってる意味がわからなくてあぜんとする。
『りん?』
俺の近くにひざまずいたりんは
うるうると光る瞳で俺を見つめる。
『拾って下さったお礼・・・』
そう言って俺の足を触った。