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EP2:聞き取り

 近くにあった店はおもちゃ屋のようだ。入口にはガシャガシャの機械やプライズゲームが置いてある。中に入ると、ロボットやぬいぐるみといった、沢山のおもちゃが目に入った。

 真玄は入口から近いテーブルを見つけると、上にあった商品をどける。そして、その上にコノルーを乗せた。ちょうど簡易ベッドのようなテーブルの上で、コノルーは仰向けのままふぅふぅと息を荒立てる。


「ねえ、大丈夫なの?」


「……多分熱中症だな。ちょっと、自動販売機で飲み物を買ってくる」


 そう言うと、真玄は店内にある自動販売機に向かい、スポーツドリンクを買ってくる。それをコノルーに手渡すと、コノルーはごくごくと飲み始めた。


「ふぅ、ふぅ、た、助かった」


 なんとか体を起こそうとするコノルーだが、「無理するな」と真玄に寝かせつけられる。


「それにしても、何であんなところでふらふらしていたんだ?」


「……オイラ、マスターから捨てられた。オイラ、役に立たないって」


「役に立たない? ちゃんと案内人の仕事をしていないからか?」


「昨日から、マスターと連絡がつかない。オイラ、捨てられた」


 コノルーの話によると、普段はマスターと無線でやりとりをしていたが、昨日の爆弾魔爆発の一件以降、マスターから通信を断たれたという。それで、帰る場所も無くなってしまい、この暑い中ずっとふらふらしていたとのことだ。


「こんな暑い中歩き回らなくても、涼しいところに行けばよかったのに」


 ようやく落ち着いたのか、コノルーは体を起こしてテーブルに腰かけた。


「通信はできない、でも、監視されているかもしれない。一体どこに行けばいいのか……」


「監視……か。どうせならいろいろと教えてもらいたかったんだけど……」


「ダメ、教えられない。マスターに何されるか……」


 マスターに裏切られたのなら、仲間に出来るかもしれない。そう考えた真玄だったが、そうはうまくいかないようだ。しかし、コノルーをそのまま放っておいても、またあの暑い中で歩きまわるだけになるだろう。かといって、監視されている可能性は否定できない。


「あ、こういう時って、桜宮君だったら何か分かるんじゃないですか? ほら、盗聴器とか監視カメラとか、どこに付けられているかっていうの、すぐに分かりそうじゃないですか」


「ああ、確かに、太地なら何か分かりそうだな。なんだかかわいそうなイメージ出来てるみたいだけど」


 知美の提案を受け、すぐさま太地に連絡を取る。特に何もしていなかったのか、電話にはワンコールで出た。簡単に現状を話すと、すぐにこちらに向かうとのことだ。



 太地が来るまでの間、コノルーからいろいろ情報を聞き出そうとしたのだが、重要な部分は答えてくれなかった。どうやら監視されているというのは本当のようだ。あるいは、案内人としての役割を全うしようとしているとも思えるが、コノルーがそこまで真面目に仕事をするとは思えない。


「お待たせ」


 真玄が四苦八苦していると、太地が店に入ってきた。重そうなリュックを降ろすと、中から道具を取り出す。


「太地、これは……」


「しっ、マクロ君、ちょっと静かにしててね」


 そう言うと、太地はその道具をコノルーの全身にかざす。すると、のど元の当たりにかざした時に、何か反応があったようだ。


「……」


「ちょっと、太地……」


「しっ、静かに」


 太地は先ほどの機械を仕舞い、別の機械を取り出す。そして、電源を入れると「もう大丈夫だよ」と言った。


「一体何をやってたんだ?」


「ああ、盗聴器や発信機が無いか、調べてたんだ。やっぱり発信機っぽいものが、コノルーに仕掛けられてたね」


「発信機? やっぱり、マスターはコノルーの動きを監視してるってこと?」


「まあ、そういうことだね。多分、これでマスターとのやりとりをしてたんじゃないかな。どうせ盗聴器も仕掛けてるんでしょ」


 太地がコノルーに尋ねると、軽く頷く。しかし、「盗聴器までは知らない」とのことだ。


「しかし、もし盗聴器があるとしたら、下手なことは言いそうにないな。今までも、それで散々言われてきたはずだし」


「今は心配ないよ。これを使ったからね」


 そう言うと、太地は先ほど操作していた機械を見せた。ラジコンのコントローラーのような、手のひらより少し大きめの機械だ。


「それは?」


「電磁波発生装置。電磁波を周囲に発生させることで、電波系の通信を妨害するの。マクロ君、試しに電話掛けてみて」


 そう言うと、真玄はスマホを取り出し、太地に電話を掛けようとする。しかし、まったくつながらない。


「あれ……電波が立ってない。おかしいなぁ、さっきは出来てたのに」


「こういうこと。こっちからも電波は飛ばせないけど、周りからの通信をシャットアウトできるってわけ」


「何でこんなのを持ってるのさ?」


「いや、ほら、ゲームやってる時に電話掛かって来たら困るでしょ? だから、電波が届かないところにいるように見せかけようと思って」


「はぁ……」


 太地が変な機械を持っている理由はともかく、これでコノルーはある程度話ができるはずだ。


「さて、マスターに聞かれないなら問題ないでしょ? さて、いろいろ聞きたいことがあるんだけど、話してくれるかな?」


 太地はコノルーの肩に手を乗せて尋ねるが、コノルーは首を振る。


「……ダメだ、もしオイラがばらしたことがマスターに知られたら……」


「コノルー、別に俺たちは案内人と敵対したいわけじゃない。それに、マスターに棄てられたっていうことは、マスターはお前のことなんて何とも思っていないはずだ。もしかしたら、何もしなくても近いうちに殺されるかもしれないんだぞ」


「で、でも、オイラは……」


「頼む、お前のことは、俺たちが守ってやる。だから……」


 必死に頭を下げる真玄に、コノルーは頭を掻きむしりながら悩む。

 しばらく頭を抱えていたが、ようやく「わかった、話す」と口を開いた。


「すまない、無理をさせてしまって。ここで聞いたことはアマミヤやクロミナには言わない。何かあったら、俺らを頼ればいい」


 真玄が礼を言うと、コノルーは貰ったドリンクを一気に飲み干した。


「それで、オイラは何を話せばいいんだ?」


「うーん、そうだねぇ。まずは、この世界を誰が作った……かなぁ。後は、実験の目的と、君達案内人の正体……ってところかな。あ、どうしても話せないところは無理に話さなくてもいいよ。君達にもプライバシーがあるだろうから」


 コノルーの身体はまだ震えている。マスターに伝わる心配はないと言われても、不安は残っているのだろう。太地がそれを察して、「話せるところだけでいいから」と落ち着かせた。


「わ、わかった。この世界を作ったのは……」


 かすかにアニメソングが流れる店内で、コノルーは話を始めた。

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