EP-EX1:滲んだ夜空
今日は妙に星空が綺麗だ。雲一つない空に、無数の星が広がる。じっと見つめていれば、流れ星の一つや二つ、流れるのではないかと思うほどだ。
そんな夜空を見上げる余裕などなく、クロミナは一人街灯が照らす道を歩き続ける。長い髪が地面に触れることなど構わず、ただただ静かな道を一歩一歩進めていった。
今日もまた、一つの実験が終わった。案内人にとっては、それで済むだけのはずだった。犯罪者が犯罪を犯す。そして爆発する。それで、終わるはずだった。
しかし、アマミヤから告げられた冷酷な事実の前では、そんなことはどうでもいいように感じた。
――ついさっき、同胞が一人死んだ。
犯罪者の死などどうでもいい。死体は見慣れた。しかし、仲間の死だけは、どうしても受け入れられなかった。
アマミヤから話を聞いた時、クロミナはコノルーを責め続けた。
――あんたのせいよ! あんたのせいで……
けれど、誰を責めたところで、死んだ仲間が戻ってくるわけではない。クロミナは一人、誰もいない道を歩くことにした。
街灯の明かりが途切れたところで、ふと空を見上げた。美しい星空だというのに、目の前がにじんではっきりと見えない。瞬きをすると、目に溜まっていた涙が一筋、頬を伝うのを感じた。
「……どうしてこういう時に限って……」
滲んだ夜空は、まるで何かを祝福するかのように輝いている。そんな空気を読めない空にあきれていた時だった。
「なんだ、晴れていると思ったのに、ここだけ雨が降っているじゃないか」
不意に正面から聞こえてきた声に、クロミナは思わず驚いて倒れそうになる。
「あ、アマミヤ!? 驚かせないでくれるかしら?」
「ああ、すまない、一人でノスタルジーに浸っていたのに、邪魔しちゃったかな」
アマミヤは真顔で尋ねたが、クロミナから見るとどうも笑っているように見えた。
「変な言い回しされてもわかんないわよ。何よ、さっきの晴れているのに雨だとかなんとかって」
「あれ、その目から流れているのは何だい? あ、心の汗とでもいいわけするのかな?」
「……ふんっ!」
クロミナは目をこすってそっぽを向く。そして、そのまままっすぐ歩いてアマミヤのそばを通り抜けた。
「クロミナ」
すれ違って少し離れたところで、アマミヤがクロミナを呼び止める。クロミナも、それに応えるように立ち止まった。
「……分かっているわよ。私たちの役割」
「そう……ならいいけど」
アマミヤが振り返ると、クロミナが握る拳が震えているように見えた。アマミヤは続ける。
「分かっているなら、僕たちがやるべきことは一つ。これ以上、犠牲者を出したくなければ……」
「……ええ」
クロミナは一度も振り返らず、そのまま歩いて去っていった。
一人残されたアマミヤは、夜空を眺めながら一人呟く。
「……本当はこういうことはしたくないんだけどな……彼らを信じるしかないか……」
今日は妙に星空が綺麗だ。




